106 二つの方法
咲の提示する条件の一つ目は『みんなを洗脳した元凶となる人物を探す』ということ。そうすれば魔法であろうと催眠術であろうと効果は切れる。いたってシンプルで分かりやすい方法。
「でも、そいつがどこにいるか分からないんじゃ……」
「そう、攻撃のしようが無い。 そしてもう一つは……」
『洗脳にかかったみんなを殺す』
淡々と、でもその行動にためらう様子は欠片も無く咲は言う。
「でも、皆を殺すって。みんなは自分の意図とは関係なくこうして戦わさせられてるんだぞ」
「そんなことことはわたくしだって分かっておりますわ。しかし元凶が見えない以上、わたくしの知る限り他に方法はありませんのよ。前に読んだ物語ではキスをして魔法を解くというものもありましたが……」
「き、キスをするのか…………」
「その方法を選ぶ場合は女子だけでなく男子にもしっかりして下さいね」
少し想像してみたが吐き気がする。女子とキスをするだけでもかなりの勇気がいるのに男子ともだなんて。
「いいんじゃありませんか。幸いこの学校の武器を使って殺した場合ライフポイントが一つ減るだけに被害を留めることが出来るんですから」
正直いままで時間を共に過ごしてきたクラスメイトを殺すことに関して乗り気にはなれなかった。そりゃ交流がほぼ無かったような人もたくさんいるけど、それでもやっぱり知っている人間を、しかもただ操られているだけなのに殺してしまうなんて。
「でも、他に方法は無い。そろそろ腹をくくられてはいかがですの?」
咲の言う通りそれでも俺に他の打開策は思いつかなかった。俺がこうして迷っている間にも咲は一人で戦ってくれているのだ。
「分かった」
俺は剣を引き抜く。鞘から抜くだけで炎が灯るフレイムソードを。
「では任せましたわよ。わたくしは前線で戦うというよりも後方で援護射撃をする派ですので」
言葉通りすでに俺から距離を取り、悩んでいる間にも数人殺してくれてる。背中はおろかピンチになった時にはいつでも救ってくれるってくらい信頼できる仲間だ。
「任せたぞ。俺を全力で守ってくれ!」
「えぇ。圭様のためならば」
凄いよ。凄すぎる。別にハーレムとかそういう空気ではないけれど、ここまで自分に尽くしてくれる異性がいてくれるってすげぇ―幸せ。葵なんかいっつも「バカなの。バカじゃないの。圭君のバカ~」ってバカの三段活用しか言ってこないってのに。
「行くぞ咲!」
俺は魂の如く燃え上がる炎の剣を振りかざし、襲ってくるA組のみんなに応えた。
戦う戦う詐欺ですね。全然戦いが始まらない。
でも次はちゃんと始まりますから安心してください。




