103 揺れる心、ぶれる性格
またまた完全に続きからです(最初の一文は前回の最後の一文と一致しています)
如月は不気味な笑顔を浮かべながら己の右手を使い葵の顎あごを上げさせ、自分に無理やり視線を合わさせた。
「簡単なことです。あなたにも力を与えてあげますよ。それも先ほどのよりもっと特別なものを」
「特別なもの?」
「えぇ、これさえあればあなたは確実にクラスで一番の力が手に入る」
葵は少しためらった。『クラスで一番の力』そんな言葉が誘惑してくる。
「そ、そんなものはいらない!」
「素直じゃありませんね。でもあなたに選択権なんて無いんですよ」
「ど、どういう…………」
「状況を考えてみなさい。あなたはどうやってここから脱するというのですか」
相変わらず葵の両腕は小雪と朱里によってがっちりと押さえつけられていた。彼女たちの力が弱まる隙なんて寸分たりとも無い。
「分かったでしょ。あなたが私から逃げるのは不可能なのです。なーに怖がることはありませんよ。このチップをあなたに埋め込めるだけでいいのですから」
如月は胸ポケットから小さな正方形の緑色に輝くチップを取り出し、それを持った左手を少しずつ葵へと近づけていく。
「や、やめ…………て」
「ふふふふふふ」
*
時計の針は二時を少し過ぎたあたりを指していた。
「いろんなところを回りましたし、今日はそろそろ帰りましょうか」
回るというよりは振り回されているだけだったが…………。それでも咲はずっと楽しそうにしていたし、俺自身もそれなりに楽しかったのだから無意味なデートと言うわけでは無かった。
そんな余韻をかみしめながら俺と咲はリムジンに乗り込み、遊園地を後にする。
その帰り道、咲は疲れ切っていたらしくリムジンが動き出すとほぼ同時、夢の世界へと入り込んでいた。
「アレだけ飛んで回って跳ねていりゃまぁ……」
寝ている彼女を見るのは初めてだったが、やはりお嬢様というだけあって寝方も上品で可愛らしい。
「ん? 何しているのですか圭様」
その時、咲の瞳が静かに開く。
「悪りー起こしちまったか」
起きたばかりで初めは朦朧としていた彼女だが次第に意識を取り戻し。
「な、何見てんのよ!」
「み。見てなんか……」
「嘘だね」
実際にはガッツリ見てしまっている故、それ以上言い返せない。
「お、お前少し話し方変わったか? 話し方はおろか性格とかも」
「ん」
咲は今まで見せたことないくらいに顔を真っ赤にして驚いていた。キョロキョロと周りを見渡し、やがてここが車の中で俺と一緒に居るという事を思い出したのか、
「つ、つい寝起きだったせいで家での姿をさらけ出す羽目になってしまいましたわ。こんな姿、学校で知っていると言えば亜紀くらいですのに」
全力の弁解が始まった。多分これを貴重な映像なんだろうな。
「家での話し方の方がまさに女の子って感じでいいと思うけどな」
「そ、そんなこと無いですわ」
「まぁいつものお嬢様としての先を見ているからこそ、普通の女の子のような先が可愛く見えるのかもしれないけどな。ほら、ギャップ萌えみたいな」
「な、何てこというんですか!」
それからしばらくはこんな感じで二人楽しく車内で話しながら学校へと向かっていった。
なかなかキリのいい場所が無いですね。




