入学式(1話と2話の間のサブエピソード)
世界観や設定を思い出したいときに見直してくれるのもありです。
一回目を通すと分かりやすかったりするかも……
「諸君! ようこそ我が雲雀学園へ。入学おめでとう」
定刻通り、舞台に上がるはまだ二十代から三十代くらいであろうか、とても校長とは思えない見目をした一人の女性。
彼女はまるで演劇の舞台に立っているかのように手を振り上げ、体を使い、マイクの置かれた公演台なんてまるで無視して一人舞う。
「私はこの雲雀学園の校長、神崎星羅だ。そして君たちにはこの学園を選んで入ったのかここに入らざるを得なかったのかは関係なしに『頭脳がダメなら力で存在意義を示せ』の校訓に従ってもらう! つまり勉強はほどほどにするものの定期テストといった類は一切ない! その代わり、常日頃から武術の鍛錬に励んでもらう」
それでどれだけの人間がどよめいただろうか。だが、どよめきが起こる当たり、一定数は本当に入る高校が無くてこの学校に入ったのかもしれない。
県内偏差値最下位の雲雀学園は学校説明会の頃からその校訓を掲げ、知性は求めず武力だけを上げることを売りにしていた。ゆえに誰一人として進学実績なんて気にせず、ただ強くなりたいという想いをもってこの学校に入学する人間は少なくない。
そんな志の高い人たちもいる中、本当に学力が無く、行く高校を失った挙句に滑り止め要因でこの学校を受験して入ってきた人間もいなくはない。
何せ、0点でも名前さえ書いてあれば入学できるような学校だ。そんなカモ学校を偏差値の悪い奴らが受けないわけない。
「さて、ではその日頃から武術に励んでもらう方法だが、それはいわゆるバトルロワイヤルだ。これからクラスに分かれたのち、お前たちにはそれぞれ剣を与える。その剣を使って生き残りをかけた本気の戦いをしてもらう事で生徒同士高め合い強くなって欲しい」
その言葉にざわめきが起こった。当然と言えば当然の反応だ。一部の生徒は頭が悪かったがゆえに入れられたというのに蓋を開けてみれば殺し合いをしてくれと言われているのだから。だが、そんな反対と不安の声を校長はたった一言で一蹴する。
「黙れ馬鹿ども! お前らはそうやってピーチクパーチクしか言ってられないからこんな学校に来てるんだろうが! ろくに知能の無いお前らは本当にこの世から要らない存在になりかねないんだぞ。まぁそれでも安心するがいい。この学園に入った以上そうはさせない。なにせ私が鍛えてやるんだからな。きっとボディーガードや自衛隊、警察官に殺し屋、いくらでもお前たちが活躍できる場を用意してやれるだろう」
怒涛の言葉攻めに一瞬は多くの生徒がたじろいだが、サクラとも思えないような生徒の「じゃあ、こんな俺たちでも世間から認められる希望があるって考えていいんだな」という言葉に全員のボルテージが高まった。
「フハハ。実にその通りだ。だからこそお前らにはこの学園で本気の殺し合いに興じてほしい。そして学園からはお前たちが一人人間を殺したのならばバトルチップというコインを一枚進呈しよう。これはお前たちが強くなったという証でもある。そして私が世に送り出しても平気だと感じたレベル――――このバトルチップ50枚を集めたものには卒業試験を受ける権利を与える! 見事合格すれば晴れてお前たちも立派な社会人だ。その進路は私が約束しよう」
拍手喝采大団円。本当に単純でバカな集団だ。
「それに一度やられて死んでしまったとあればそれはそれであっけなさすぎるからな、この雲雀学園で配布される、もしくは手に入れることのできる武器・魔法の類には特殊な力を施している。この力の宿った武器では仮にやられたとしてもこの学園にある保健室に行けば5回まで致死の状態からでも蘇生が出来るようになる。この制度を我々はライフポイント制度と呼んでいる。もちろん勘違いするなよ。今言った通り5回までだ。それ以上やられるような人間は知能だけでなく武力も無いと考え本当に死んでもらう。上手く卒業すれば将来を約束しているのだからそれくらいの代償はあっても構わないよな!」
どこからともなく拍手が起こった。
「あぁそれでこそ我が学園の生徒として相応しい反応だ! さぁぜひとも強者を目指して他の人間たちを殺し、殺し、殺しまくって高みに立つがいい。そしてこの学園から羽ばたいていくのだ」
そんな言葉を残し、校長は段から下った。彼女にブーイングや文句を言う生徒はもはや一人もおらず会場はに包まれる。
声援を受けながら校長はふと漏らした。
「ったくキャラを演じるってどうしてこうも疲れるんだか」
そう言いながら彼女は「にっ」と笑みを浮かべた。




