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授かったチートが強力すぎる  作者: 長月真砂
異世界転移編
7/97

獣人の少女

 早朝ながら、私は外に出て空鳥を狩っている。

 寒くはない。今は初夏みたいだし、この前に作った魔法付加のある服を着てるから温度調節されてる。

 さて、普通は高級なこの空鳥。

 逆にこれしか、荒野に鳥はいない。一体なぜ。

 気付かれないように、飛んでいる空鳥を魔法で打ち落とす。使う魔法は、見えないようにウィンドカッター。

 イメージ補正と刃系魔法補正でカッターシリーズは複数を作れるようになったからね。群れをそれで落としてる。

 打ち落とした空鳥は、ちゃちゃっと捌いてアイテムポーチに入れていく。

 十数匹くらい打ち落としたところで帰る。

 丁度、コクたちも起きてきたところだった。


「おはよー」

『あ、おはようございます。早いですね』

「うん、空鳥捕ってきた」

『普通は捕るのが難しいはずだが?』

「あー、ウィンドカッター使った」


 パッとウィンドカッターを出現させて、即座に消す。


「こういう刃を撃つ魔法。他にも炎から闇まで、色々種類はあるよ」


 え、何で呆れるの? これも常識外れてる?


「……この世界の常識って一体……」


 今度教えてもらわないとだな……でないと町に行ったとき何か非常識な事をしそう。

 まずは朝ご飯を作らないと。

 空鳥は焼き鳥に、果物は凍らせてシャーベットみたいにしてみた。

 そろそろ野菜ほしい。

 で、いつも通り朝食後は何かの練習。

 今日は使い魔関連をやろう。まずは使い魔召喚か。

 獣人化を使ってる二人に声をかける。


「二人とも、部屋で待機しててくれない? 使い魔召喚やってみたいの」

「分かりました」

「分かった」


 私は地上へ。地下ハウスの入り口から結構離れてから使い魔召喚をする。


「使い魔召喚」


 するとハクとコクの名前が浮かんだ。


「あ、選択型なのね。じゃあ……まずはコク!」


 近くに魔法陣が作られて、そこにコクが現れる。


「成功してる?」

「はい! 召喚される感覚は初めてですが、上手くいっているようです」

「よかったーっ。じゃあ、次ね。使い魔召喚、ハク!」


 同じように魔法陣が現れ、今度はハクが召喚される。

 ハクも五体満足で現れてるし、問題はなさそう。


「便利ね。いつでも二人を呼べるもの」


 私が二人を見つけられなくなっても呼べるのは心強い。

 しかしコクは、そうでもないですと続けた。


「基本的には確かにいつでも呼ぶことが出来るのですが、特殊な魔法では、防がれてしまうそうですから」

「特殊な魔法って?」


 今度はハクが答えてくれる。


「確か『大獄』と呼ばれる魔法だ。何十年も前に失われた魔法らしいがな」

「なるほど」


 大獄……召喚系の魔法を無効化するのかな。なんて物騒な名前。


「じゃあ、次はスキルリンクを試そう。これはどういうもの?」

「その名の通り、スキルの共有ですよ。主と使い魔、それぞれが互いの持つスキルを使用する事が出来るようになります」

「じゃあ、私の魔法創造やスキル創造を、二人も使えるようになるってこと?」

「はい」


 おお、凄いわね。

 もしかしたら、私も二人のスキルを使えるようになるかも!


「じゃあやってみよう……スキルリンク!」


 キラキラとした光が私達の周りを回ったかと思うと、スッと消える。


「いった?」

「いきましたよ!」

「鑑定眼はAか。やっとましなものが出てきたな」

「あ、ランクが下がるのは普通なのね」


 やっと普通か。よかった、ほんとによかっ……


「ワンランクしか下がってないがな、ランクは下がった」

「これだけしか下がらないなんて、随分強力な力ですね。Sはそういうものなんでしょうか?」


 普通じゃないじゃん!


「鑑定眼S自体が珍しいしな」

「元々でBあればいいほうですしね」


 ……元から普通じゃなかった!


「ねえ、スキルリンク出来たってことは、創造のスキル使えるようになってるよね? ちょっと試しに何かやってみて」

「そうですね……『ダークネスカッター』」


 コクの手に闇の刃が生まれて、丁度上空を飛んでいた空鳥を打ち落とした。


「ああ、それってコクには使えないんだ?」

「いえ、この魔法自体が存在していませんから」

「え」

「ウィンドカッターやウォーターカッターはあります。光もですね。炎や闇はありません」


 ああ、カッターシリーズで呆れられたのってそういうことか。

 人前では風か水か光しか使えないな、カッターシリーズ。便利だけど。


「ハクはどう?」

「イメージと魔力次第で何でも、だな。『ダークネスカッター』」


 ハクの手にもコクと同じような刃が生まれて……空鳥の方に飛ばしたみたいなんだけど、届く前に消える。


「あれ? 同じ魔法でしょ?」

「俺は魔力が低い上にスキルに『光属性』を持っているからだ」

「あ、そういえばそうだった」


 ハクのスキル、『光属性』は闇系の魔法が苦手になるんだっけ。

 だったら魔力で補えればいいのかな?


「ステータスリンク」


 スキルリンクと同じようなキラキラがまた私達の周りを回って、消える。


「いったわよね?」

「……ステータスが上がってるな。全部が大体一億くらい」

「え?」

「主と使い魔、高い方のステータスの一パーセントが足されるかどうかですからね……単純にサクヤ様のステータスの一パーセントがこれなのでしょうか?」


 幾つよ、私のステータスの最大値。百億超えてるの?


「ま、まあこれで魔法の威力とか上がるよね? 二人とも」

「そうだな」

「そうですね」


 結果オーライよ、結果オーライ。それで終わり!

 森行ってまた何か見つけに……


「きゃああああっ!」


 突如として、森から聞こえてきた悲鳴に、私はびっくりして思わず走りかけたのを止める。

 い、一体全体何!?


「森に……誰かいるのでしょうか」

「え!?」

「この辺りは魔物が強い。襲われているのかもしれないが」

「ええっ!? じゃあ助けに行かないと!」


 私は走って悲鳴の聞こえる方に向かう。

 地面が陥没しない程度にパワー抑えて。

 とはいえかなり速いはずなのに、後ろからハクとコクの二人が追いついてきていた。


「ふ、二人とも早いわね?」

「まだリンクがかかってますから」


 あ、そういうことか。


「だ、誰か助けてっ!」


 だんだん声が近くなっていく。


「この気配……魔物の方は恐らくアースグリズリーだぞ」

「それって何!?」

「凶暴な魔物です!」

「だったら……氷造形、『ソード』!」


 氷でできた剣を作り出す。

 前回のは消しちゃったからね。

 茂みを思い切り飛び越え、ようやく見えてきた少女を襲っている熊に斬りかかった。


「はあっ!」


 ってしまったーっ! 思い切り振っちゃった!

 アースグリズリーは瞬殺。剣を振るった余波で前方の木は消滅。

 切り株だらけになっちゃったわね……

 いや、先に少女!


「大丈夫!?」

「は、はい……ありがとうございますっ」


 少女は、土や少しの血で汚れてしまっているけど鑑定を使ってない私でも分かる上質なドレスを着ていた。

 それに、猫のケモ耳。獣人だ。髪や耳、尻尾の色は緋色。というか、宝石みたいな深く鮮やかな赤。


「ねえ、どうしてこんな森の中にいるの?」

「わ、わたし……逃げてきたんです」

「え?」

「助けてください! このままではまた捕まってしまうんです!」


 スキルリンクはまだ解いていない。

 コクの持っているスキル、『覚り』で少女の心を読ませてもらったけど、嘘ではなさそうだった。


「分かったわ。じゃあ、私の家に来て。そこなら追っ手は来ないと思うから」

「あ、ありがとうごさいます!」


 コクとハクにも目配せを。

 二人とも私の意図を読んでくれたらしく、近くに来る。


「行くよ。『瞬間移動』」


 パッと景色は変わる。

 私の家のリビングに瞬間移動したのだ。


「え?」

「ここ、私の家」

「えええ? 幻覚でも見ているのでしょうか……」

「ううん、事実。ここ、地下なのよ」

「ええええええーっ!?」


 驚くよね。だって、コクとハクにも驚かれたもの。

 少女は目を瞬かせ、ポカンとした表情で家を見ている。


「あ、急いであなたの部屋を作るわね」

「え、作る?」

「……できれば驚かないで」


 部屋作りにも慣れた。最初の時より、かかった時間は少ない。


「オッケー、出来上がり」


 フローリングの部屋に、ベッドも置いてみた。

 少女は……声をあげこそしなかったが、あんぐりと口を開けていた。


「あ、あなたは一体……?」

「ん? 私は咲耶。あなたは?」

「わ、わたしは………あの、わたしのことも驚かないでください」

「驚かないって」


 驚く要素も、きっと私には気付けないもの。

 この世界における常識知らずだから。

 少女はほっとした表情を見せ、次に柔らかな笑顔を浮かべた。


「わたしは、クリスティーネ・エストレイラルです。助けていただきありがとうございますサクヤ様」

「クリスティーネちゃんね。よろしく」


 そしたら、クリスティーネちゃんは驚いたような表情のまま固まった。


「まさか、そんなに驚かれないなんて。逆にわたしが驚くことになりました」

「え、何? また私非常識なことやっちゃった!?」

「サクヤ、その子は恐らくエストレイラル王国の王女だ」

「え、あ、ええっ!?」


 あ、叫んじゃった。

 いやでも王女だからねえ……。不敬になってないかな……っ!


「クリスティーネ王女、サクヤ様は知らなかっただけです」

「あ……そうだったのですか。それはよかったです!」


 クリスティーネちゃんは嬉しそうに言った。何故?

 私達は訳が分からず首を傾げているけど。


「わたしの国、エストレイラル王国は大国ですから、わたしの事は他国の人間も知っているのです。ですから、どうしても敬われたり、付け入ろうとする人ばかりで……そういう身分なんて気にせず対等な存在でいられるお友達に憧れていたんです!」

「ああ、確かに私はどこの国所属でもないわね。……所属できないし」


 主にあのステータスのせいで。どこかの国に所属なんてした日には、ちょっと面倒な事になりそう。


「あ、そうだ。この二人も紹介しておくわね。黒髪の方がコク、白髪の方がハクよ」

「よ、よろしくお願いします! コク様、ハク様! ……それで、失礼ですがお二人はどうしてサクヤ様と一緒にいるのですか?」

「そうですね……」


 コクが私に視線を向けた。

 心を読むと、使い魔であることを伝えていいかを訊かれていた。

 教えていいんじゃないかと念じる。コクは読んでくれるはず。


「……私とハクは、サクヤ様の使い魔ですよ」

「え? でも獣人でしょう?」

「いえ」


 コクとハクはパッと獣人化を解いた。

 ダークウルフとホワイトウルフを見たクリスティーネちゃんは、また驚いていた。


『この通り、魔物なので』

「ダ、ダークウルフとホワイトウルフ!?」

『……そういえば、俺たちも十分この辺りでは異常だったな』


 あー、私が異常すぎて忘れてた。

 コクもハクも上位種の魔物だったわね。


「こんな上位種の魔物を使い魔にしているサクヤ様……一体何者なのですか?」

「えーと、魔法使い?」


 ステータスの事は言わない。


「でも、あの熊の魔物は剣で倒してましたよね?」

「…………」


 ……しまった。

 おまけに余波であれだと、攻撃力がどうこうも言われちゃうかも……


「……身体強化?」

「あんなに強力に掛けられるのですか!? 魔力がどうなっているのか知りたいです!」


 この子……コクに似てる節がある。

 好奇心旺盛なところとか。話題を変えよう。


「……とりあえず、どうして逃げてたのか教えて。でないと、クリスティーネちゃんの国が混乱したままにならない?」

「あ……分かりました。でも魔力の事、教えてください」

「う」


 逃げられないーっ! 急いで記憶消去の魔法覚えようかな…………! さっぱり仕組み思いつかないけど!


「わたしの国、エストレイラル王国は、今セントリア王国と戦争をしているのです。わたしは、そのセントリア王国に捕まってしまって……」


 何となくイメージしてみる。

 スキルの『覚り』と『イメージ補正』の効果があってか、回想みたいに情景が浮かぶ。


「いわゆる、人質です。セントリアは、わたしを人質にして戦争に勝つ気なのです」

「うわあ……」


 結構ベタな展開。普通は騎士が王女様を助ける展開だったな。

 今回、同性な上に騎士でもない異世界初心者の私が助けちゃってるけど。


「なんとか逃げられて、この森なら兵士たちは来ないと思って……それで、あの魔物に襲われて、サクヤ様たちにであったのです」


 なるほど。

 でも逃げ切れたってことは、この森の近くにあるのかな、セントリアは。

 今頃セントリアは大パニックね。人質がいなくなったんだから。


「あ、どうやって逃げ出したの?」

「わたしは幻影魔法を使えるので、それを使ったんです」


 なるほど、幻影魔法。


「こんな感じ?」


 光の屈折を歪ませて、私がいるところの隣に私を映してみた。

 クリスティーネちゃんはその幻影を触って、驚いて私を探していた。

 ああ、見えないのかこれ。解くか。


「ここにいるわ。で、幻影魔法ってこんな感じなの?」

「こんなにハッキリと使える術者は初めて見ました! それに、自分の姿は見えなくなる……いつか教えてください!」


 あ、ハクにジト目で見られてる。

 これも常識外れだったか。

 魔法創造のスキルを教えるわけにはいかないし……断るだけにしておくか。


「ごめんね、教えられない」

「そうですか……残念です」


 ごめんね。まず原理が違うと思う!


「さて……どうしようかな。クリスティーネちゃんを王国に返さないとだし」


 私だけ王国に行こうかしら。コクとハクにはクリスティーネちゃんを守ってもらうために残ってもらって。


「ねえ、クリスティーネちゃん。セントリア王国って、ここから近いところにある?」

「はい。この森はどの国の領地でもありませんが、セントリアの首都が近くにあるんです」


 もしかしなくても、あの時の町かしら……確かにあそこなら近いけど。


「うーん……まあ仕方ない! 私、エストレイラル王国に行ってくるわ。コクとハクは、クリスティーネちゃんを守ってて。必要になったら呼ぶから」

『分かりました』

『……サクヤ、お前王国の場所は分かるのか?』

「あ」


 知らない…………

 電話作ろうかな。そうすれば、コクかハクを連れて行っても連絡取れるし。


「うん、それがいいわね。じゃあハクが道案内してくれる?」

『分かった』


 早速、形だけ電話機を木造形で作る。

 それに電話の機能を付加して、完成。

 私とハクとコクと、三つ作った。


「これ、離れていても会話ができる物。家に一個置いておくから、敵襲があったら連絡して」

『……サクヤは常識を本当にぶち壊していくな』

『これは流通させられませんね』


 それは同意する。でも緊急連絡用だし、私達しか使わない。


「……もしかしてサクヤ様、魔法創造のスキルを持っていますか?」


 ぎく。

 しまった、クリスティーネちゃんの目の前で魔法付加やった!


「……そんなことありませんか! 魔法創造はスキル創造と並んで伝説のスキルですしね!」


 ホッと出来そうで出来ない発言しないでーっ!

 今は気付かれなかったけど、気付かれた時が……!


「でも魔力は気になります! 教えてください!」


 わーっ、終わってなかったーっ!


「えっと、教えたくないのよ。個人情報だから!」


 そう言いながらも鑑定のスキルでクリスティーネちゃんのステータスをのぞかせてもらう。

 うーん、バレた暁には不敬罪決定……

 ステータスは……うーん、低いのか高いのか……? 私とコクやハクのステータスは基準にならないみたいだし。

 スキルは……幻影魔法と治癒魔法が入ってる。この子も魔法使いなのかな。

 あと、王族の加護。何かしらこれ。


「クリスティーネちゃん、王族の加護ってなに?」

「え?」


 あ、しまった。何度目だっ!


「もしかして、鑑定のスキル持っていますか? ランクSで」

「うううう………」


 頭抱えて困ってしまう今日のこの頃。

 イザヤ、鑑定のスキルと魔力だけは言わせてもらうわよ!


「……鑑定は持ってるわ、Sで」

「わあ! 宰相も持ってたました、Sの鑑定スキル。……ずるいです、魔力の事教えてくれないのに、わたしのステータスは分かるなんて!」

「分かったから! 魔力だけは言う!」


 魔力『だけ』を言った。

 盛大に驚かれた。


「え、九が九個に+ですか? 何かの冗談では……」

「そのまま信じないでいてくれれば楽よ」

「じゃあ本当なんですか……」


 神様のせいだとは言えない。そんなことになったら、何が起こるか分からない。


「クリスティーネちゃん、絶対にこの事は言わないでね」

「分かりました。……言っても信じてくれなそうですし。宰相はサクヤ様に会えば鑑定眼で見抜きそうですけどね」

「宰相様って、エストレイラル王国の宰相?」

「はい、エストレイラルの宰相です。国では一番強いですよ」


 宰相様じゃなくて騎士団長じゃない? と思ったのは秘密だ。

 宰相様って執政官だよね?


「宰相は執政官としての腕もいいから、一部ではエストレイラル最強の剣と呼ばれているらしいのです!」


 ………鑑定眼以前に会話するだけで私のステータスとかバレそう。

 これは宰相様に会えないな。


「さあて、今日はもう夕飯にしましょう。今日はお魚よ!」


 そしてまた、クリスティーネちゃんには驚かれる。

 これが普通なのだろうか。

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