治癒魔法と魔物
今日は異世界用装備作りと森の散策。時間があれば魔法を作ろう。
朝ご飯は空鳥とレッドフィッシュとローゼンピーチ。
野菜ほしい。パンも作ろうかな。
食べ終わったら服作り。私の服、パーカーとシャツとジーンズだもんね。魔法使いまくってる上に走ったりしたのに、よく耐えてきた。これも強化されちゃってあるのかってくらいには。
とりあえずよさそうな服を作ってみるか。
魔力を服の形にして、イメージ。
補正が働くから明確に想像できる。
「錬金、『布』」
布って一括りにしてるけど、いろんな種類の布になるんだよね。
出来上がったのは緑の軍服っぽい服とズボン、膝まであるブーツ、マント。
よし、魔法付加しよう。
今まで炎の魔法や風の魔法の付加もして来たから、防御結界も付与出来るはず。
あと体温調節の機能も付与しよう。暑くもなく寒くもなくっていうのはよさそう。
服にそれらを組み込む。
よし着よう。
……うん、快適!
即席で洗濯機を作って来ていた服は洗うことにする。
準備完了。森に行くか。
森の入り口までは瞬間移動を使ってみた。
少し歩く。
「……あれ? これってもしかして血の匂い?」
匂いのする方に急いで駈ける。
そして見つけたのは、血だらけになっている白と黒の狼たちだった。
「わっ、何これ!」
即座に鑑定で調べる。
「え……魔物?」
鑑定結果は、白い方がホワイトウルフ、黒い方がダークウルフだった。
で、鑑定ってステータスも見られるらしくて、HPが残り5であることに気付いた。
「し、死にかけてるじゃん! 魔物だけど、助けてあげないと!」
あ、でも治癒回復の魔法を作ってない! まずい!
か、回復の魔法……回復、回復……ヒール?
「いい、物は試し! 『ヒール』!」
失われた部分を補って、自己治癒力を高めるように。
慌ててたから制御が曖昧だった『ヒール』は、凄まじい光で森全体を包んだ。
光がおさまると、私は急いで鑑定で狼たちのことを調べる。
……うん、よかった。上限は分からないけど二匹とも回復してる。
黒い方が目を覚ました。
『う………あれ? 怪我が治ってますね……』
遅れて白い方も目を覚ます。
『っつう……痛みは若干、残ってるようだが……』
私を最初に見つけたのは黒い方だった。
『魔力の残滓からして、助けてくれたのはあなたですね。ありがとうございます』
私はというと、目が点になっていた。
魔物とはいえ、動物が喋ったんだし。
っていうか二匹とも綺麗な声ね。私と同じくらいの年齢の男性って感じ?
「あー、えっと、うん。魔法を使ったのは私だよ」
白い方もやっと私に気付いたらしい。
『人間!? こんな森の奥にどうして』
「諸事情アリ。詮索しないで」
なるほど、ここって森の奥って扱いなのね。
そういえばあの荒野、人が全然来ないわね。
「えっと、まだ痛いみたいだし、私の家に来る? 私の魔法、失われた部分は補うけど治癒力高めるやつだから。体力使ってるかもしれないし」
そう言うと、黒い方の目がきらりと金色に光った気がした。
『………そうしましょう。でも、私達は動けませんよ?』
『お、おい! だが……お前がそう判断したのなら』
「分かったわ。運ぶのは簡単だから」
二匹に手を当てて、瞬間移動を使う。
着いたのはリビングの所。
『『!?』』
「お、上手くいった」
二匹は驚いているらしかった。
私も驚いた。複数での瞬間移動が出来たから。
『これは……!?』
「あ、瞬間移動。ここは私の家」
新しい部屋を一部屋作って、浮遊魔法で二匹を部屋に運んだ。
『凄いですね……こんな魔法を使う人間、今まで見たことがありません!』
『お前は何者だ』
「うーん、魔法使い?」
分かってたまるか、あの壊れてるかのようなステータス。
さて、空鳥を焼いてこよう。
狼二匹、どっちも私より大きいからね。鳥は二羽ずつ焼いとくか。
後で狩りに行かないとな……
「お待たせ。鳥焼いてきた」
『!? 空鳥じゃないか!』
「お気に召さなかった?」
『そうではありません……こんなに貴重なものをどうやって手に入れたのか、ですよ』
あー、貴重なのかこの鳥。
「えっと……この荒野を通るから打ち落としてる」
『荒野、ですか?』
「うん、丁度真上。ここ、地下」
『えええええっ!?』
驚くってことは、地下に家があるのがおかしいのかな? それとも別のこと?
にしても元気になったねー、二匹とも。驚かせてるの私なんだけどさ。
……そうだ、治癒魔法を制御できるようにしないと。
「二匹とも、ここで待っててくれる?」
『何をしに行くんですか?』
「魔法の練習」
『わ、私も連れていってください! 見たいんです!』
黒い方が立ち上がろうとして、ふらつく。
「や、休んでないとダメじゃない!?」
『ご安心ください。……魔物ですからね、体力はあるんです』
そして黒い方の狼は私の近くに寄ってきた。
『おい! 何されるか分からないだろう!』
『煩いですよ。私のスキル、知っているでしょう? 第一彼女が私達に危害を加えるつもりなら、先ほどの時点でやっているはずです』
『ぐ………』
「え、スキル?」
『はい。私のスキル、【覚り】は、相手の心を読むスキルなんですよ』
「へえーっ」
私には真似できないかもね。
仕組みが分からないし、結果も想像できない。
「じゃ、ついてくるでいいの?」
『はい! あなたの魔力は非常に高いようですからね、気になるのです!』
黒い方は好奇心旺盛なのだろうか?
「白い方はどうするの?」
『俺は行かない。何されるか分からないからな』
『でもここは彼女の家ですよ?』
『う………』
「別に行かないならいいけど……どうする?」
白い方はしばらく迷っていた。
『分かった、行く!』
「じゃ、行こっか」
もう一度瞬間移動を使って、今度は荒野に出る。
「氷造形、『ナイフ』」
切れ味鋭い氷のナイフを作る。
で、服の袖をまくる。
そっと腕に刃を当てて切ってみたんだけど……切れない。
そっとじゃ無理みたいね。全力で攻撃するか。
魔法でも良いんだけど、今回は狼二匹がいるから危ない。
「よし、はっ!」
思い切り腕を切りつける。
それだけだったんだけど……生まれた風圧が凄い。
『ナイフを使っただけですよね!?』
『どれだけ攻撃力があるんだよ!』
二匹とも、ごめん! こういう風にナイフを扱うのは初めてなんだ!
でも、服の防御結界が働いちゃって、ナイフは届いていなかった。
「えーっ」
『だ、大丈夫ですか!?』
『今のだと普通は腕がとれる!』
「無茶言わないで。腕が取れるまで何回切ればいいのよ」
今切りつけた腕を見せる。
『……今のでこれだと?』
「うん。服の結界が作動しちゃったみたい」
『結界ですか?』
「うん。魔法付加でね。あ、ちょっと待ってて。着替えてくる」
自室に戻って、とりあえず魔法付加無しのただの服を作る。さらに念のために、半袖。
もう一度荒野に行って、狼二匹に防御結界を張った上でナイフで腕を切りつける。
もう一度凄い風圧が生まれて……何とか、切ることは出来たのだった。但し、細い切り傷が三センチ。どうやら防御力はとても高いようね。うっ、でもちゃんと痛い。
次、ヒール。
でも……こんな傷で意味があるのかしら?
「眩しくないようにくらいの魔力は、と……」
さっきと同じイメージでヒールにしよう。
『ヒール』と唱えると、手のひらくらいの大きさの光が傷を癒したのだった。
上手くいった、のかな? 参考にもならなそうだけど。
でも、自分に傷がつけられないんじゃ仕方ない。実戦で使うか。
「うー、どうしよう。攻撃魔法でも作るかなー?」
あ、そうだ。剣を作って、剣のスキルを作ればいいんだ。
「氷造形、『ソード』」
魔力を剣の形にして、氷に変える。
はい、氷の剣の出来上がり。
「二匹とも、私以外の人が使ってる剣のスキル知ってる?」
『その氷の剣を使うのですか? 解けてしまいますよ?』
『普通は金属で作るものだろう』
「ああ、大丈夫。この氷、生中なことでは解けない」
証明のために炎の魔法を手に纏って持つ。
これが解けないんだ、全然。
「この氷の剣の方が、錆びないから寧ろ便利!」
『本当に……あなたのステータスがどうなっているか知りたいです』
『こんな人間がいたことの方が驚きだ』
「あー、えっと……ねえイザヤ、この二匹に教えて平気?」
小声で言ってみた。
すると、どこかで「いいよ。むやみに教えないなら」というイザヤの声が聞こえた。
「えーと、約束して。私のステータスは教えてあげるけど、誰にも言わない事」
『分かりました』
『俺も知りたいからな。分かった』
「じゃ、読み上げるね」
名字を伏せて全部言った。
全部言い終わった後の二匹は呆然と言った感じだった。
『全部十億越えですか?』
『スキルも、魔法創造とスキル創造だと?』
「なんか、色々ごめん」
何となく謝っておく。
イザヤの作ったステータス、これって数字がぶっ飛んでるけど暮らすのには便利なのよね……
『凄いです! 驚きました、こういう方がいたなんて!』
先に我に返ったらしい黒い方の狼がなんか興奮してる。ええと?
『私を、あなたの使い魔にしてください』
「………はい?」