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これが僕らの異能世界《ディストピア》  作者: 多々良汰々
第二次星片争奪戦~イギリス編~
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第3話 裏切りの狐に、天使は裁きを… PartX

本編の番外編で、このお話は実際にあったかは不明(?)な内容です。本編とかなり毛色の違う話ですが、いずれ関係してくる……かも?

〈2122年 6月7日 7:45PM 第二次星片争奪戦終了まで約29時間〉―グラウ―


 玉座。それをただの椅子と同視する人間はいないであろう。それは君主の権力のシンボルでもあり、神々の座具でもあった。その背面から座面、腰掛けに縫い付けられた生地の赤色は貴族の象徴。至る所に宝石がちりばめられて豪華絢爛。しかしその座につく者は、権力者として人々を導く強き意思と共に、そこから引き摺り下ろされれば命はないのだという覚悟を併せ持たねばならない。


「こんなにも間近で見られるなんてな……」


「でしょ、でしょ!やっぱり見に来て良かったでしょ!!」


 玉座の周りでぴょんぴょん跳ねるネルケ。「もう少し落ち着け」と注意したら彼女は拗ねてしまうので止めておこう。


 俺は食後に直ぐ、西の海岸へと向かうつもりだったのだが……ネルケが「せっかくの機会なんだから、玉座を見に行かない?」と言いだし、一悶着があった。俺とソノミは「観光客でも修学旅行生でもないんだぞ!」と主張。対してネルケとルノが「こんな機会しか近くにはいけない!」と反論。勝ったのは――ネルケとルノであった。折れたのは俺。“こんな機会”と言われ心が揺らいでしまった。俺はどうも限定品や、その日その場所でしか出来ない経験というものに弱いらしい。


「ほら、見たから行くぞ。私たちは遊びに来たのでは無い」


 未だソノミは不機嫌な様子。むすっとした表情で腕を組んでいる。ソノミの言うことは正しい。しかしネルケとルノは全くその気はないようで――


「ソノミぃ~~座りたくないの?」


「はあ?ただの椅子だろ」


 まさかこんな近くに「玉座をただの椅子」だと言い出す人がいるとは思わなかったぞ、ソノミ。


「ほらほら、ソノミちゃん」


「こら、押すな、ルノ!いったいなんのつもりだ?」


 ルノに背中を押されるがままに、玉座の前まで進まされたソノミ。そして――


「えい!」


 ネルケの一押しで、半ば強引に着席。


「感想は?」


「固い」


 ソノミらしい、飾らない感想であった。


「でも、ここから見渡す景色は……本当に臣下がひれ伏し連なっていたなら壮観だろうな」


 玉座は段差の上に置かれている。そう、その座につく者と臣下たちとの身分の違いを強調するためにである。もしもこの巨大な部屋一面に臣下が跪いている光景を見たら――いくら純真に満ちた王であったとしても、傲り高ぶることを覚えるかもしれない。


「ねぇねぇソノミ、玉座にせっかく座っているんだから……あなたが王になったらどうしたいか、抱負でも言ってみない?」


「あ?なんでそんな面倒くさいことを……」


 抱負、王になって実現したいこか。話のネタとしては――悪くないかもしれない。


「いいんじゃないか、ソノミ?お前が女王になったらどうしたいかには興味がある。あと二人の女王様についてもな」


「グラウ、お前……」


「良いこというわ、流石グラウね!」


 たまにはこういう理知的な会話も互いを知る為には必要だろう。普段爆弾発言ばかりしかしない二名は、少し不安が残るが。


「ああ、わかったよ。お前たちの望み通り考えてやる。だが順番は3番目にしろ。グラウが最後な」


「なんで俺がトリなんだ?」


「そうね、グラウの後は嫌だわ」


「ワタシも嫌。アナタの後だと疲れそうだし」


 疲れそうってなんだ?俺、そんな大層な抱負なんて抱いていないんだが……まぁ女性三人に刃向かえるほど俺は強くは無い。


「じゃあトップバッターはわたしが務めるね」


 弾意気揚々とネルケが座についた。


「わたしが女王になったら――もちろんグラウを強制結婚させるわ!」


「……はぁ」


 ネルケが玉座からびしっと指をさしてきた。ネルケのことだから、どうせろくでもないような事を言い出すのではないかとは思ってはいたが――あんたは悪い意味で期待を裏切らないでくれるな。


「あらあら、まるで告白ね」


「ううん、ルノ。この程度ならもう何回もしているわ!けれど、こんな美女が精一杯勇気を出しているのに、それなのにグラウったら……」


「こいつの決まり文句は――」


「「保留っ!」」


 冷ややかでかつ憎悪さえも感じる視線が二本突き刺さってくる。ネルケとソノミに「まだ(・・)根に持っているのか?」なんて問った暁には、好き放題暴言という名の弾丸を撃ってくるだろう。よってここは一つ、悔しいが辛抱せざるをえないか。


「じゃあ、次はワタシね」


 ネルケに代わってルノが玉座についた。さて、彼女は何を言い出すのか――


「ワタシが女王なら……うふふ、ワタシの好みの子のみを側近にするわ!」


「欲望に忠実だな、ルノ」


「もちろんよソノミちゃん。でもごめんね、ネルケちゃんも……正室は埋まっていて」


「「別に選ばれたくない(わ)!!」」


 流石は頭の中に百合畑が広がっているだけのことはある。今まで理知的な抱負はひとつも無い。残すはソノミと俺。期待しているぜ、ソノミ――


「はぁ……お前ら二人が欲望に満ちた抱負を言い出すせいで、全く考えがまとまらなかったぞ」


 ソノミが気怠げに座に着いた。


「私は――グから名前が始まる人はソかポら名前が始まる人かポしか結婚できないようにする」


「それって……あらあらソノミちゃんも大胆♪それにあの子のことも考えてあげるなんて」


「うるさい!まぁ、人のことを考えられない私ではない」


 グ……もうわかっているよ。ソノミは俺のことを言っている。しかし俺はどう反応したらいいんだよ!?


「グラウ……」


 え、何この空気感?ソノミの目がとろんとして……いつにもなくしおらしい。まるで俺とソノミの世界が広がっていくようで――


「あ~~~もう、それ以上はなし!!はい、次、グラウ!!」


「ちっ、空気読めよネルケ」


「空気読んでいたらわたしが負けるかもしれないのに、黙っていられるわけないでしょ!」


 ネルケの介入がなければ、危なかった。今の空気感……今度ばかりは保留では逃れられそうにはなかった。


「それじゃあ俺だな」


 ソノミまで場の雰囲気に流されてしまったが、俺はそのつもりはない。完璧ではなくとも、これでも真剣に考えたつもりだ。


「俺は――まずこの座を破壊する。王はいらない」


「うわ、根本を否定した!平気でルール違反をしてくるなんて……流石は鬼畜グラウね!」


 ネルケにとっての俺はいったいどのように映っているのだろうか?


「それで、“まず”ということは、次はどうするつもりなんだ?」


「ああ。指導者のいない国ではまずいから、国家代表二人を任命する。そしてそいつらに異能力規制法を撤廃させる」


「異能力規制法、ね。異能力者にとっての悪法中の悪法。けれど、あれがなくなれば異能力者は好き勝手に暴れ出すかもしれないわよ?」


 先ほど俺がグレイズに投げかけた問いだ。あいつは性善説の立場から、異能力者の良心を信じ、そうはならないと言ってきたが俺は違う。箍は必要だ。


「だから代表が二人なんだよ。片方は異能力者の代表、もう一方は非異能力者の代表。その二人の意見の一致でもって、国の決定とみなす。これで異能力者の不満も非異能力者の不満も吸収、解決するはずだ」

「ずいぶんと代表に任せっきりじゃないのか?その二人の人選はどうするつもりだ?」


 ソノミが指摘した通り、俺のこの考えでは代表にかかる圧力はすさまじく、並びに権限の調整が難しい。だからこそ――それにはあいつは相応しいだろう。


「どちらの代表にも求められるのは、異能力者、非異能力者の片方意見のみに囚われず、公正中立な考えが出来る人間。例をあげるなら……俺たちとついさっきまで一緒にいたやつだ」


「グレイズ・セプラーね!」


「その通りだ。彼は既に異能力者組織の代表にもなっている。彼なら――」


「わたしは反対っ!」

「ワタシもネルケちゃんと一緒」

「右に同じだ」


 一人ぐらいはには噛み付かれると思っていたが……まさか全員に反対されるとはな。


「お前らしくないな。異能力者の代表なんだろ?その役目が聖人君子なやつに務まると思うのか?」


「非異能力者の代表と対立しないようにするには、ああいう善良なるやつが相応しいだろ?」


「う~ん……わたしは、権謀術数に長けた人じゃないとそれは務まらないと思うわ」


「自己のためにあらゆる手段……汚いことすらやってのける様なやつが相応しいだと?」


「ネルケちゃんの言う通り。グラウ、ワタシたちが言っていることは、非異能力者の代表とどうのこうのということより以前のこと。よく考えてみて、グラウ。異能力者は非異能力者よりも危険な存在でしょ?」


「否定出来ない事実だ」


「なら、お前にだってわかるだろ?優しいだけじゃ異能力者の代表は務まらない。弱ければ、簡単にクーデターを起こされ、そして殺されるのみ」


「だから聖人君子はダメ。権謀術数にも長けていて、そして絶対的な権力者――きっと王様でなければ、異能力者をまとめきることはできないわ」


 まさか、こんなにも簡単に論破されてしまうとはな。それに、結局――


「なんならお前とか良いんじゃないか?なんたってお前は――“英雄の息子”なんだろ?」


「っ!?バカを言わないでくれよ。俺の器じゃない」


 座を立ち、そして溜息をひとつこぼれてしまった。心配そうに、ネルケが寄ってきた。


「グラウ?どうかしたの?」


「いや……今一度、頭の中で考えを整理する必要があるとおもっただけだ。そろそろ行こうか、海岸へ――」


 ユスの言葉を思い出していた。「異能力者に王はいてはならない」。あんたは確かにそう言った。しかしその理由を、あんたは語らなかった。だがあんたの意思を継ぐ者として生きると決めた今、俺はあんたと同じ哲学を持たなければならない。しかしわからないんだ――あんたのあの発言の核心が。だから俺ははじめに王の存在を否定したというのに、結局王が必要だと結論づけられてしまった。


 なぁ、ユス。やはり俺は……あんたの息子を名乗るのにはまだはやいのだろうか?

小話 著者から皆様へ


グラウ:鳴かぬなら、利用できるものは全て利用し鳴かせよう、グラウ・ファルケだ


ネルケ:鳴かぬなら、無理矢理迫って鳴かせてみせるわ!ネルケ・ローテよ


ソノミ:鳴かぬなら、斬る(キル)ッッ!御都苑巳


ルノ:鳴かぬなら、そうね、まず背後から(ぴーーー)、それから正面で(ーーーーーーーーーー)……あらあら、うふふ。どうしてワタシだけ自主規制音がかけられているのかしら?


グラウ:あんたがとんでもないこと言うからだよっ!

ネルケ:あなたがとんでもないこと言うからよっ!

ソノミ:お前がとんでもないこというからだっ!


ルノ:そう?内容的にはネルケちゃんのと大して変わらないのに?


ネルケ:変わるわよ!わたしは物理的に脅すっていう意味で言ったの!対してルノのは(ぴ)的に攻めるってことでしょ!?


ルノ:ええ、もちろん女の子限定だけれどね♪


ソノミ:こっち見て言うな


グラウ:……話を進めるぞ。著者からこの作品の今後についてだそうだ。


ネルケ:ここまで毎日投稿をしてきたけれど、実のところストックを投稿していたのははじめの数日ぐらいで、それから先はその日に書いてその日に投稿をしてきたみたいね


ソノミ:計画性のないバカだな


ルノ:ええ、一章分くらいはストックしておいてから投稿しはじめれば良かったのに


ソノミ:それで、書いている内にだいぶ書き方?というか、文章のクセみたいなものが変化してきていると自覚している


ルノ:かつ、書いている内に矛盾するところが(たぶん)あったりしているみたいね


グラウ:それを踏まえ、更新頻度を下げ、その間に本筋を変えない範囲での文章の書き直しを行う予定だそうだ


ネルケ:具体的にいつそれをやるかは未定。そしてあまりにも現状と変更が多かった(Partを減らす、増やすレベルになった)ら、新たに投稿し直すかもしれないみたいね


ソノミ:それと、もしかしたら別の作品もスタートするかもしれないとのこと


ルノ:予定は未定というなんとも不甲斐ない著者ではありますが――


全員:これからも本作品をよろしくお願いします


(小話は思いつきで書き始めたのですが、書いていて楽しくなってきた(?)ので、シリアスなところやネタのないところ以外に付け加えていければと思っています。別の作品については短い連載を書ければいいなと思っています。そこまで時間をとれるかは……ですが)

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