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これが僕らの異能世界《ディストピア》  作者: 多々良汰々
第一次星片争奪戦~日本編~
34/108

第4話 透明の狂気 Part7

〈2122年 5月7日 0:15PM 第一次星片争奪戦終了まで残り約24時間〉―グラウ―


「見えた、あれだな!」


 住宅街をひたすら走り続けた先、神聖な建物が目に入る。


 デウス・ウルトの教会。華美な教会ではなく、周囲の景観を害さないようにと白いレンガ造りの外壁。サイズは一般的な教会より少し大きいか。しかし違和感を覚えるのは正面に立つ一つの石像。一人の人間――いや、一人の異能力者が首を吊るされているというもの。こんな薄気味悪い像を設置している宗教など彼らだけだろう。だが彼らにとってこの像は自分たちの為すべき大義を指し示し、異能力者の抹殺への意欲を促進する……そんな記事をいつだか読んだことがある。


「数は……10人。あの数ならばこのまま止まることなく教会内に侵入できる。ネルケ、ソノミ。あいつらは俺が撃ち抜く」


 もう既に彼らも俺たちの存在に気が付いている。俺たちに向けられているのは、まるで汚物を見るような視線。異能力者であることがばれているのだろうか。うん――?


「グラウ。どうやらそう簡単には通してはくれないらしいな」


「そうみたいだな」


 重厚な扉が開き、20人を超える信徒たちが教会の外に溢れ出てきた。その中で、一際存在感を放つ男がいる。


「ほう、タイミングが良いな。貴様らがあのガキの仲間か」


 角刈りをした高身長の男。右手に持つはその身長すらも超える長い槍。歴戦の勘が俺に訴えかける。この男は只者ではない、と。纏うオーラが他の信徒たちとは違う。この男もまた、多くの場数を踏んできている。


「……さて、誰のことかな」


 男がゼンのことを言っていることはわかっている。だが、敢えて肯定しない。


 ゼンは見えない。その存在を認知することは出来ない。それなのに「あのガキ」と言った。気づいたというのか、ゼンがいることに?もしそのようなことが出来るとしたら、異能力以外にないと思うが……


「とぼけるな。口も行儀も悪いガキだ。このタイミングで来たんだ。貴様らの仲間だろう」


 そこまで言われると、人違いという線は消えてしまう。今更知らん顔を決め込んでも仕方ないな。


そのガキ(・・・・)は、いったいどこにいる?」


「中で枢機卿様が裁きをお与えくださっている。やつは、どうしようもないほどの罪を重ねてきたようだからな。死をもって償っていることだろう」


「チッ!!」


 ホルダーから銃を引き抜く。二人も攻撃態勢に入った。


 頬に嫌な汗が伝う。そんなことはないと信じているが……もしも本当に、ゼンの異能力が見破られているのであれば――まずい。


「あんたらに構っている余裕はないようだ。そこを退いてくれないか?あんたらの枢機卿様に話がある」


「断る。神聖なる儀式に、よそ者を通すつもりはない」


 男は俺の頼みに、憎たらしい笑みを返した。こいつらは、話が通じる連中とは思えない。力に頼ることしか、通じないだろう。


 周囲を囲まれている。3対31。俺たちが異能力者であるとは言っても、包囲された状況を簡単に脱することが出来るわけではない。最悪なのは、角刈りの男が扉の前に仁王立ちしていることだ。あの男をどうにかしない限り、教会内に侵入することは不可能。


「グラウ、ネルケ」


「ん?」


 ソノミが俺たちだけに聞こえるような小さな声で名前を呼んできた。


「作戦がある……グラウ、お前が一人で教会に入れ」


 何を言っているんだソノミは。そんなこと――


「こんな人数がいるんだぞ!入れと言っても――」


「そうね。こんな連中、わたしとソノミで十分ね」


 二人でこいつらをどうにかするということか?俺がいなくなれば、一人頭の人数が増える。それは看過出来ない重大なことだろう。


「15倍だぞ。敵の数は」


「お前の道を切り拓いてやると言っただろ?二言はない」


 数時間前、ソノミが俺に言ったセリフだ。まったく、かっこいいことを言いやがって……惚れてしまいそうだぜ。


「あら、いつのまにそんなこと言っていたの?ソノミ、グラウを守るのはわたしの役目なのだけれど?」


「ふん、お前はどうせこの戦いが終わったら私たちと縁が切れるだろ?その点私はこれからもグラウと共に戦っていく仲間だ」


「ぐぬぬっ~~!いいわ、ソノミ。競争よ。相手は31人。ちょうど奇数よ」


「争うのか、この私と?良い度胸だ。格の違いを見せてやる!」


「ならばわたしは愛の強さを示すわね、グ・ラ・ウ!」


「俺に話を振らないでくれ……」


 こんな状況なのに緊張感がない……と思うが、逆にここまで余裕を見せつけられたら、任せても問題なさそうだ。


まぁ、そもそもこの程度の敵では――二人に傷をつけることすら不可能か。


「何をこそこそと話している?最期の覚悟でも決めたのか?」


「その言葉、返すぜ。やられるのはあんたらの方だ」


 ソノミが囁くような声でカウントダウンを開始している。それと同時に、俺たちは一斉に動き出す。


「5、4、3、2、1……いけ、グラウッ!!」


 ソノミが正面に突撃。角刈りの男へと切り込み、注意を一身に引き付ける。同時にネルケの姿も消える。次から次へと信徒たちが倒れていく。それが誰の仕業かは俺たちにしかわからないだろう。


 道は拓けた…今だ――! 


「あとは頼んだぞ、ネルケ、ソノミ!」


「ああ!」


「任せておいて!」


 扉の元まで駆け抜け、勢いよく扉を開く。エントランス…もう一つ扉を超えなければ、ゼンの元へは行かせてはくれないか。


「まぁ、そう簡単に通してはくれないよな」


 待機していた信徒たちは8人。既臨戦態勢に入っている。扉の前に立ち塞がっている以上、無視してはいけないようだ。


「いいぜ、あんたら覚悟できているよな。俺の顔をその脳裏に刻み込め。地獄に行っても忘れないように……俺が、あんたらの死神だ―――!」

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