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これが僕らの異能世界《ディストピア》  作者: 多々良汰々
第一次星片争奪戦~日本編~
27/108

第3話 泣いた青鬼 Part11

-ソノミ-


「兄様・・・・・・」


「苑巳・・・僕、は・・・・・・」


 あぁ、元の兄様だ。帰ってきて、下さったんだ。


「苑巳、ふふ、また泣き虫苑巳に戻ったのかい?」


「えっ・・・・・・いや、そんなことは……ありません・・・」


 全くその通りだった。涙が止まらなかった。こんなに泣いたのは、あの日以来だ。


「グラウ君が上手いこと外してくれたようだけど・・・・・・時間はそう、長くはない。鬼化で消耗しすぎた」


 異能力は精神力も体力も消費する。鬼化はその中でも燃費が悪い。鬼化が解除されないままこれほど長い時間行使し続けたがために、身体が限界を迎えた、ということなのだろう。


「だから、お願いだ、苑巳。笑ってくれ。君には笑顔の方が似合う」


「笑顔……こう、ですか?」


「なんだかぎこちないけど……ほら、もっと自然に。うん。それで良い」


 笑うなんて、得意じゃない。でも、昔は得意不得意なんて感じなかった。たぶん、この数年間が私を変えたのだろう。笑えないようなことが、あまりにも起こりすぎた。


「さて・・・・・・グラウ君。君に頼みたいことがある。聞いてくれるかな?」



-グラウ-


「なんだ?ソノミに時間を使ってやれば良いものを」


「ははは……でも、苑巳の将来を考えるならば、君と話す必要がありそうだ」


 これは真剣な離しになりそうだ。覚悟をしよう。


「君に、苑巳をもらって頂きたい」


「・・・・・・・・・は?」


「にっ、兄様っ!?」


「おぼろげな記憶だけれど、君は確か苑巳をもらい受けると言ったよね?その責任を果たしてもらいたい」


「いや、流石に冗談で言ったんだぜ?本気にされても――」


「贔屓目に見なくても、苑巳は美人だ。それに家事全般をそつなくこなせる。いいお嫁さんになるだろう。少し内向的で人付き合いが悪いけれど・・・・・・君とは非常に打ち解けているようにみえる。それに君は賢くて強いようだ。君になら、任せられると確信したんだ」


 そんなことを言われても・・・・・・買い被りすぎだと思うが。


「俺はあんたが思うような強い人間じゃない。第一、ソノミの将来はソノミのものだ。俺なんかよりソノミに相応しい人間はごまんといるだろう。俺だって決め打つ必要はないと思うぜ?」


「・・・・・・確かにそうだけど。まぁ、嘘偽りなく、君が苑巳に相応しいと思っているよ。それじゃあ、この願いだけは受け手はくれないだろうか?どうか、苑巳を守ってはくれないか?僕の代わり、と言っては悪いんだけれど」


「ああ。それはもちろん引き受けてやる。ソノミのことは任せろ。約束する。それと、もう俺とではなくソノミと話しれやれ」


「そうか、それはよかった……っ!げほっ、げほっ」


「兄様っ!」


 残りの時間を悟りながらも笑みを浮かべる流魂は俺に目配せをしてから、それからソノミへと向き直った。


「どうやら・・・・・・もう、時間のようだ」


「兄様・・・・・・」


 流魂が伸ばした手をソノミが両手で優しく包んだ。


「苑巳。僕は、君が幸せになってくれればそれで良い。あの日のことを、多くを語れなかったけれど・・・・・・許してほしいとは決して言わない。だが、深く探ることはやめて欲しい。君に彼らに至って欲しくはない」


「兄様・・・・・・はい。わかりました」


「うん。苑巳。君が僕の妹であること・・・・・・誇りに思う。ありがとう・・・大切な、いもう…と……」

「兄様ぁぁぁっっっっ!」


 ソノミの悲痛な叫びが、ビルに木霊した。



 どれくらいの時間が経ったのだろうか。ソノミが泣き止むまで、俺は呆然と突っ立っていることしか出来なかった。


「グラウ・・・・・・」


「なんだ?」


 ソノミの涙は乾いていた。しかし、未だに悲しげな表情のまま。


「すまない、な。見苦しかっただろ?」


「そんなことはない。辛いなら、もっと泣けば良い。気が落ちつくまで俺はここにいてやる」


「グラウ・・・・・・優しいな、お前は。でも、もう泣くことはやめる。流石にこれほどまでに時間が経っていると、毘沙門の連中も変に思うだろう。彼らが来る前に立ち去るとしよう」


 そう自分に言い聞かせるように呟くと、ソノミは流魂の頭をそっと地面においた。それから手を組ませ、近くの花を引き抜き、それをそっと持たせた。


「兄様・・・・・・どうか遠い国より私を見守りください。あなたの妹として、恥じぬように生きて見せます。ご冥福を」


 ソノミが黙祷を捧げた。


「Rest in peace.流魂。あんたとの約束、必ず果たす」



「ちょっと待て、グラウ」


「ん?なんだ?」


 祈りを終え立ち去ろうとした瞬間、ソノミが俺の腕を掴んできた。


「お前にいろいろと言わなきゃいけないことがある。だから……恥ずかしいからこっちを見るなよ」


「おっ、おう」


 改まって、いったい何のつもりなんだか。


「グラウ・・・・・・すまなかった。お前を騙して、非道な真似をして・・・・・・兄様はああ言われたが・・・私を見捨ててくれて構わない。私は仲間失格だ」


「・・・・・・ふん、いつまでそんなことを言っているんだ?この程度のこと、笑って済ませてやるよ」


「何故だ?どうしてそこまでしてくれる?」


「俺にとってソノミは大切な人だからな。失いたくない。流魂と約束したからというわけじゃないが、俺が死ぬまでは面倒みてやるよ」


「っ!?だから、紛らわしいことを言うな・・・・・・本気にするぞ・・・・・・」


 大切な人。あいつ(・・・)を喪って以来、それを作るのが怖かった。


 でもソノミがいなくなってようやく思い出した。大切な人は作るものじゃない。出来るものなんだって。俺にとってソノミは、かけがえのない存在。それは間違いない。


「で、だな・・・・・・もう1つ、私からお前に頼みたいことがある」


「なんだ?」


「・・・・・・・・・私に、お前を守らせろ」


「はあっ?流魂は、俺にソノミを守ってくれと頼んだ。その逆は何も言っていないだろ」


「だから、私からの頼と言っただろ。お前はたぶん、私にとって大切な存在。もちろん、ネルケも・・・いちおうゼンも、仲間として大切だと思っているが・・・・・・お前は、私にとって一番大切な存在なんだ。お前は私に、一生かけても返しきれないような恩をくれた。だから・・・その・・・・・・・・・」


 俺が何かを言うべきだな。


「まぁ、女性に守ってもらうのはどうかと思うが、ソノミに守ってもらえれば、どんな敵も怖くはないな」


「グラウ・・・!ふっ、ああ。お前の敵は私の敵だ。お前の道を切り拓いてやる。だから――」


 どちらかと言うと、男らしいセリフだが、頼もしい限りだ・・・・・・


 っ!腕を引かれて、無理やり振り向かされて――


「ちゅっ」


「――――!?」


 ???なっ、なんだ?柔らかい感触が・・・・・・でもネルケとまた違って、って!!


「おっ、おい!」


「なんだ。年端もいかぬ少女からのキスは不満か?まったく、歳なんて2しかかわらないというのに、人を子供扱いして」


 そっぽを向いているが、ソノミの顔がほんのり赤みを帯びて・・・いや、俺も顔が熱い。あのソノミが、俺に?


「ソノミ・・・・・・」


「なんだ、うがいでもしたくなったか?酷いものだな。お前は違うが、私は初めてだったんだぞ」


「いや、それならむしろ光栄に思うが・・・・・・ふっ、はははっ」


「何を笑っている?無礼な」


 むすっとした顔をソノミが浮かべてきた。


「何でだろうな。でも、嬉しかったら笑う。自然なことだろ?」


「そうか?うれしいのか・・・これは・・・チャンスなのか」


 また小声で何か言ったようだが、聞き取れなかった。


「帰ろう、ソノミ。二人が待っている」


「そうだな。あいつらに謝らないとな」


 柔らかい表情を浮かべたソノミに心が揺さぶられる。二人に会うまでには、心を落ち着かせないとな。


「グラウ」


「ん?」


 歩き始めた俺を、ソノミが呼び止めた。


「ありがとう。私はお前のことを・・・・・・いや、なんでもない」


「そうか。なら行こう」


 何か言いたげだったようだが、無理に問い質す必要はないだろう。二人が待っている。早く帰らないといけないな。


〈2122年 5月7日 9:53AM 第一次星片争奪戦終了まで残り約27時間〉―?―


 灰色の髪の青年と黒髪の少女が去ってからまもなくして、安らかに眠る男性の前に一つの影が現れた。

「まさかあの流魂がやられるとはね・・・・・・つ・ま・ん・な・いッ!!」


 ピンク色の髪を揺らしながら――ピオンは流魂を蹴り飛ばした。それから思いっきり踏みつけ、また踏みつけ・・・白のドレスが赤く染まっていくことを楽しんでいる。


「流魂・・・・・・キミが悪いんだよ。ボクだってさ、キミに死んでは欲しくなかった。でもね――失敗したらもうだめなんだよッ!もうっっっ!!」


 声を荒げ、ぐしゃぐしゃと音を響かせる。草が赤く染まる。ピオンは指先に付いた血を、ぺろりと舌で舐めた。


「動くなッ!!」


 そこでようやくピオンは気がついた。辺りを包囲する青服の兵士たちの存在に。


「きゃははっ!なに、キミたち?ああ、毘沙門の連中ね。何か用事?」


 隊長が隊員に目配せし、ピオンとの距離を詰めていく。


「貴様、そこから離れろ。流魂様に何をしたッ!」


「うん?オモチャで遊んでいただけだよ。キミたちには何の関係もない」


「関係ないわけがないだろ?」


 ピオンは小首をかしげ、頭の上に疑問符を浮かべた。


 兵士たちにとって、目の前の少女は不気味に映った。かつ、激しい憤りを感じていた。流魂は人柄が良かった。彼の真実を兵士たちは知らないが・・・彼は尊敬され、憧れの対象でもあった。その人物が目の前で踏みにじられている。それを、何の感想も抱かずに見ていられるはずもなく――


「その愚行、許してはおかない!!」


 今や銃撃が始まろうとしていた。それなのにピオンは手を叩いて笑っている。


「きゃはははっっッッッッ!おもしろいね、キミたち!ボクに挑もうって言うのかい!?いいよ、すごく良い!やっぱり戦いは参加しなくちゃ面白くないもんね。だからさ――」


 一息ついて、ピオンは悪魔のように目を見開いた。


「ボクが満足するまで付き合ってねっ!!!」

小話 死体蹴り、ヨクナイ!


グラウ:はい、まったく本編に関係ない話ーーだそうで


ソノミ:もう少し感情込めろよ


グラウ:いや、今回の内容本当に関係ないぞ。作者の愚痴だぞ


ソノミ:いいから話せ


グラウ:わかった……作者、なんちゃらストーンってカードゲームやっているそうだが……


ソノミ:隠すつもりないよな、それ


グラウ:いわゆるリーサル状態にあるのに関わらず煽られるのが三回続いて堪えられなくなったそうだ。作者いわく「はよトドメさせや!」だそうだ


ソノミ:落ちはないのか?


グラウ:だから愚痴なんだよ。作者DCG好きだから、もしかしたらまたどこかでDCGネタぶちこむかもしれないそうだ


ソノミ:ここでする話じゃないだろ


グラウ:ちなみにDCGはなんちゃはデュエルから始まり、なんちゃらバース、なんちゃらジョーカー、なんちゃらブレイン、なんちゃらリア、なんちゃらマキナ(あとは忘れた)とかやっていたそうだ

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