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これが僕らの異能世界《ディストピア》  作者: 多々良汰々
第一次星片争奪戦~日本編~
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第2話 銃声が奏でるは開幕の調べ Part4

〈2122年 5月7日 3:05AM 第一次星片争奪戦終了まで残り約33時間〉―ネルケ―


「うふふ……」


 自分でも気味が悪いほど昂っている。別にわたしは戦って興奮するような変態じゃないけれど。でも今は、気持ちを抑えきれない。だって――


「あなたたちには悪いけど、これはとてもいい機会なの。彼にわたしの力を証明出来る」


 本当はグラウに見ていて欲しいのだけれど、そう思い通りにはいかないものね。グラウが激声を上げたあと、わたしたちは場の流れで1人あたり5人程度を相手することになった。ちらとグラウを見る。真剣なその眼差しんみ私は――


「撃つぞ、貴様ッ!」


 敵の湿った声なんかに興味はないの。ようやく彼に会えたのに、ともに時間を過ごせる貴重な時間なのに……ほんと邪魔なんだから。


「撃っていいわよ」


 振り返って兵士たちを見る。わたしの言ったことに困惑しているみたい。


「ッ!?やれッッ!!」


 そして彼らは一斉に射撃を開始した。甲高い音に続いて、無数の銃弾が私を目がけて走ってくる。


 ああ、なんて――遅いのだろうか。


「なぁぁぁぁ」


 驚きの調子がこもった声。おそらく「何ッ!?」って言おうとしているみたいね。今のわたしには、全てがスロー再生されているように聞こえる。銃弾もゆっくり、ゆっくり進んでいる。コツン、と指で弾くと、あらぬ方向へと進路を変える。


 わたしはゆっくり兵士たちの元へと歩いた。それから一人、二人…五人とヘルメットと上半身の防護服の隙間、頸にナイフを当て、すっと引く。それから元の場所に戻って、間延びした時間を終わらせる。


「ぐあっっっッッッ!」


 聞こえてくるのは苦痛に満ちた断末魔。わたしが彼らの頸に刻んだ赤い線から、勢いよく血が噴き出す。ここに戻ってから時間を戻したのは正解だったみたいね。返り血を浴びなくてすんだ。


「ごめんなさいね。でも、わたしたちに挑んだあなたたちが悪いのよ?」


―ゼン―


「ほらほら、オレはここだぁっ!!」


「ちいっ、どこだッ!」


 ああ、滑稽だ。大の大人がきょろきょろきょろと…声のした方向にナイフを放って、それでまた別な方向へと騙されて……おもちゃみたいだ。全員掌の上で踊っているんだ。


 誰もオレに気づくはずがない。オレを見つけ出せるわけがない。


「銃使わないの?数撃てば当たるかもよ?」


 挑発してみたら、まんまと一人の馬鹿がしまっていた銃を取り出した。


「おい、やめろっ!!」


「でもよ、じゃなきゃ俺たち――」


「ここにいるよ!」


 冷静な判断の男の前に立ち、優しく告げた。


「そこかッ!」


「おい止め―――ぐうっ!?」


 はい、まんまとひっかかった。


「ふふふ、はははははっっ!」


 フレンドリーファイア。味方が味方を誤射すること。よくゲームとかであるけど、実際に引き起こせるとはね。


「貴様ぁぁァァァッッ!」


 激高した馬鹿な兵士が、今度はなり振りかまわず、あっちこっちと撃ち始めた。でもどれもあたらない。オレはそんなところにいないんだから。


 でも、なんだか見飽きたな。やっぱり雑魚相手じゃつまらない。グラウ先輩はああ言ってたけど、あっちの異能力者の方に行ってみればもっと面白かったかな。


「じゃあ、お疲れ」


 馬鹿な男の背後に回り込み、そこらへんに転がっていた大きめの石ころを、思いっきり頭に叩きつける。


「うっ……」


 その場に崩れ落ちる姿は、本当に滑稽。ふっ……


「さて、次は君たちの番だよ!」


―グラウ―


「あんたら運がいいよ。気がついたら死んでいるというわけじゃないし、どこにいるかわからない相手と戦っている訳じゃないし、両断されるわけでもない」


 ネルケとゼン。あの二人は異能力の性質からして非異能力者でどうにか出来るものではないだろう。ソノミ。彼女は異能力を極力使わないが……まさに刀の鬼と言うべきか。彼女は元のパワーが桁違いだ。


「だが、貴様も異能力者なのだろ?!!」


 何の縁か、赤いヘルメットを倒すのは俺の担当になっていた。


「そうだ。だが……ショボいぜ。反吐が出るくらいに」


 自分の異能力は自分がよく知っている。


 銃弾を無限に生み出す。それが俺の異能力――それ以上でも、それ以下でもない。リロードをしなくていいとか、装填数が無限だとかは大きなメリットだ。でも奇抜さに欠ける。常識を破壊するのが異能力なら、俺のは並みの力もないことになる。


「っ……撃てッ!」


 合図は怒号。


 既視感。数日前にもこんな感じのことがあったな。背広の男たちに一斉に撃たれて。でも今回の方がより面倒だ。発射される弾の数が段違い。流石にこれだけの弾すべてに反応し、撃ち落とすことは不可能。正攻法で避けるのも無理。なら、仕方がない。


「はぁっっッッッ!」


 地面を蹴けりあげた。


 銃弾は速い。俺と彼らの間ぐらいだったら余裕で平行に飛んでくる。そうならば――彼らの胸元より高い位置まで飛べば、当たらない。


「はぁっ!?」


 何を驚く?この程度、あんたらでも出来るぜ?


 人間、ジャンプの特訓を続ければ1メートル、それ以上へと辿り着ける。ボックスジャンプというトレーニングの方法がある。膝より高い段差にジャンプして飛び乗る。もちろん今はその段差はない。ただ銃弾より高い位置へと跳べばよい。


「狙いは――」


 そのまま一回転しつつ標準をつける。敵は六人。ヘルメットを……まぁ、貫通出来るか。


「六発、それだけであんたらは十分だ」


 そして、引き金を引いた。


 銃声(バン)銃声(バンッ)銃声(バンッ)銃声(バン)銃声(バンッ)銃声(バンッ)


「よっ、と」


 そして、元の位置へと着地した。敢えて断末魔をひろうつもりはない。もう聞き飽きている。


「あっ……しまった」


 全員倒してしまったな。そもそもここには敵から情報を得るために来たというのに。まぁ、誰か(ソノミ)は覚えているかな?

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