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これが僕らの異能世界《ディストピア》  作者: 多々良汰々
第二次星片争奪戦~イギリス編~
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第4話 そして灰色の鷹は漆黒の空に飛んだ Part20

〈2122年 6月7日 4:27AM 第二次星片争奪戦終了まで約23時間〉―ポーラ―


 ルノたちP&Lと別れてからもう随分と時間が経った。今頃、彼女は何をしているだろうか?あの組織のリーダー格であるグラウ・ファルケは鬼謀の人。星片を手に入れるための準備を欠かすことはないだろう……そう考えるとあの四人は、現時点で星片を所持しているとされるロイヤル・ナイツに何かしらアクションを起こしていると推測されるだろうか。


 ルノのことが心配?どうだろう……もちろん彼女の強さを疑うつもりはない。ルノはアタシが知る異能力者の中で最も卓越した技術を持つ異能力者。二つ持ち(デュアル)になった今でも、結局アタシじゃ彼女には敵わなかった。でも、だからと言って彼女に勝つことを諦めたというわけではない。いつか必ず、彼女を越えて見せる。そしてグレイズ様に示すの、アタシが彼女より優れた秘書であるということを!

 しかしこの星片争奪戦という争い、結界という名の戦場において、何の憂いもなしにいるなんて無理な話だ。ここはこれまでの戦争の常識は通用しない。その理由は――この空間には、数多の異能力者がひしめきあっているからだ。こんな高密度に異能力者を一つの空間に押し込めたら、異能力者同士の邂逅が起きないという方が珍しい。そして対立関係にある者同士が出くわせば、当然のことながら激しい戦いとなるだろう。それは遊びの一切ない、周りの人間さえを巻き込んだ血みどろの死合。故に一瞬の油断が命取りになる。故にほんの僅かな危険に足をすくわれることになる。その点でルノに憂慮することはない。彼女は飄々としている所はあるけれど、あれでいて用心深い。

 でも、これは彼女の長所であり短所でもあるのだけれど――彼女は優しすぎる。敵になったアタシのことを、ほんの少しでも傷つけることすら躊躇ったのが何よりの証拠。彼女はテラ・ノヴァにいた時だって、グレイズ様の秘書のくせして前線で戦い、仲間たちを敵から遠ざけようとしてきた。だから、アタシは――本当は、彼女の近くにもいたいのだ。ルノのことを一番良く理解しているのはアタシ。P&Lの連中なんかより、アタシの方がルノのことを!――でも、ソノミ・ミト。アンタにルノのことは任せた。アンタは、正真正銘の鬼だ。剣圧でもってアタシを吹き飛ばすとか…あの時はムカついたけれど、アンタの実力は他の異能力者たちと頭ひとつ抜けている。だから、アタシはアンタを信じる。きっとルノのことを守ってくれるって――


「ポーラ。どうかしたのかい?何処か遠い目をしているように見えたけれど……?」


 鼓膜を蕩かすような麗しき美声。それはどんな楽器だって再現出来ない音色――グレイズ様!色素の薄いブロンドの髪を耳にかけながら、アタシを気にかけてくださっている!

 ああ、いけないわ、アタシ!ついものおもいにふけって、隣を歩くグレイズ様の身辺警護を疎かにしてしまった。後で猛省しないといけないわね――


「いっ、いえ、なんでもありません!ほんの少し、ルノのことが気になってしまって……」


「ルノのこと……うん。ボクはキミではないから、キミの気持ちを全て推し測ることなんて出来やしないけれど――キミとルノが親密な関係にあることは十分に理解しているつもりだよ。だから、キミが親友たるルノのことを思うのは当然のことだろうね」


 上の空だったアタシのことを咎めることなく、むしろ当然だなんて――あぁ、なんと慈愛に満ちたお方なのでしょうかグレイズ様は!一生アナタ様に着いていくと心の中で誓います、グレイズ様!


「グレイズ様、一つ質問をしても?」


「何かな、レイシェ?」


 いけない、いけない。また人目を憚ることなく恍惚としてしまったわ……エメラルドグリーンの髪を揺らしながら、レイシェがグレイズ様の右隣を歩いていることに気がついていなかった。まったく……少しグレイズ様に近すぎやしないかしら、レイシェ?と、睨んだら少し距離を取ったわね。流石気が利く少女ね。


「グラウ様、彼を…グラウ・ファルケ様をどうしてヘッドハンティングなされようとお考えになったのか、お聞かせ願えますか?」


 確かに、グレイズ様はグラウをテラ・ノヴァに招き入れようとした理由についてまだ教えてくださってはいなかった。アタシもそのこと、気になるかもしれない。


「大将、俺の勘に誤りがなければ……グラウ・ファルケはたいしたことはないと思いますがね。よっぽど、ネルケ・ローテの方がヤバかったと思いますよ?」


 いつの間にかルッジェーロも大剣グルグル振り回しながら、背後に陣取っているし……もう!万が一手を滑らしてグレイズ様に傷一つでもつけたらただじゃおかないからっ!


 でも…そうねネルケ……彼女には前回の争奪戦で少しだけ言葉を交わしたけれど、彼女が戦っている姿を見たことはまだなかったわね。でも、レイシェとルッジェーロ相手に拮抗した戦いをしたというのだから、彼女の実力もまた恐ろしいものなのかもしれない。三人の戦いの結末は、なんとも呆気なかったようだけれど。


「……そうだね。現状の評価では、ルッジェーロ、キミの勘に誤りはない。でも――それは表面を見ているだけにすぎない、とでも言えるかな」


「表面上、ですか?」


 レイシェが相槌を打った。


「そう。彼の異能力は、数多の異能力に劣位するかもしれない。でも、それは……彼は賢い、狡猾と言った方が適切だろうか。それはたぶん、ポーラが一番詳しいよね?」


 グレイズ様にと目が合って、アタシ――!ではなくて、グレイズ様がアタシの話を振ってくださったのは、きっとそういう事なのだろう――


「はい。彼はアタシを嵌めました。敢えて攻撃を受けながら、アタシを看板の真下へと巧妙に誘導し叩き落とした……奇策士という言葉は彼のためにあるかと」


「うん。その通りだ。彼の真価は異能力だかではない。能ある鷹は爪隠すという言葉があるけれど、彼はまさにその通りなんだよ。でもここから先の話は――後にしようか」


 アタシたちがたどり着いた目的地――マクレガー宮殿。赤いレンガを基調として作られた壁、そしてスケールが大きい数多くの装飾たちが目に入る。普段この場所は観光名所として人々に親しまれているのだが、此度の争奪戦においてはWG(ダブリュジー)の本陣とされてしまった。きっとこの場所にも、空しくも戦火が近づいて跡形も……とか、城を破壊してきたアタシが言えたことではないけれど。


「これまたすごい数でお迎えしてくれていますねぇ、大将」


 ルッジェーロは相変わらず暢気な調子だけれど……手はず通りならあの人が出迎え照れているはずなのに、アタシたちの前にいるのは無数の兵士たち。しかも銃口まで向けてきて…いったい何のつもりかしら?


「テラ・ノヴァとお見受けする。前回の争奪戦においての雪辱、晴らさせてもらいます!」


 隊長格らしきライムグリーンの髪の女性が兵士たちから一歩前に出て姿を見せてきた――まさか、ねぇ?


「いいえ、私たちは戦いに来たのではありません」


「では何故全軍でもって宮殿に押し寄せた?説明してもらおうか?」


 レイシェが説得を試みているけれどまるで話がかみ合ってない。これは、そう結論づけてもいいのかもしれない――


(グレイズ様。かの“英雄”とは言え、今は所詮WG(ダブリュジー)の一兵士でしかありません。“英雄”としてのプライドなどより、組織の利益を優先した――アタシたちを裏切ったに違いありません!)


 こそこそとグレイズ様に耳打ちをする。

 緊張状態。レイシェ、ルッジェーロを含めた異能力者のみんなはグレイズ様の指示があればすぐに異能力を発動出来る姿勢を取っている。対してWG(ダブリュジー)の兵士たち、特にあのライムグリーンの女性はいつ異能力を発動してくるかはわからないぐらいに剣呑としている。

 でもグレイズ様は――首を横に振られて、ふふふと息を漏らされた。


「ようやく来てくださいましたね――」


 突如、WG(ダブリュジー)の兵士たちが左右に避け始めた。そして現れたのは――ただならぬ雰囲気を放つ白髪混じりの金髪をオールバックにしたダンディという言葉がよく似合う男――


「久しいね、グレイズ・セプラー?」


「ええ。“英雄”、マドラス・ジャッカルさん――!」

小話 ご報告


グラウ:本作品を読んでくださり誠にありがとうございます。長い長い第4話がようやく終わり、次からは第5話というところなのですが……


ネルケ:話の区切りとしては丁度良いところであり、そろそろリメイクの作業に入るか、それとも第二次星片争奪戦の終わりまで書いてしまうか、その二択に作者は悩んでいるそうよ


ソノミ:前にも何処かでお伝えした通り、その日書いてその日投稿を書いているやつ(作者)は繰り返してきている。その結果、第一次の回顧パート(ネルケ、ソノミ、ゼン)は短く、第二次の回顧パート(グラウ、ルノ、アナベル)がとても長いというバランスの悪いことが起きている


ルノ:その日投稿の最たる弊害はワタシね。どういう設定でいくかろくに考えず、でも気がついたら今のワタシになったそうね


グラウ:そこで、進むか戻るかの何れにせよ、ほんの少し時間を起きたいと作者は考えているようです


ネルケ:ぶっちゃけ作者はゲーマー(ゲームオタク)なので……その間に13-4を周回したり、アトリエで錬金術をしたり、はたまた新段くるので新しいデッキタイプを模索したりしたいというのもあるそうね


ソノミ:クズだな


ルノ:そもそもアトリエ買うつもり無かったのに体験版をプレイして"やるっきゃない!ヾ(≧∀≦*)ノ〃"と決断してしまったそうよ。まぁ、仕方ないわね……作者あのシリーズ○ルルから入ったから、今作はその続編だもの


グラウ:はい、と言うわけで…結論としては一週間程度お休みさせて頂いて、活動を再開したいと考えています。そこから先もノンストップで投稿するかはわかりませんがーー


全員:末長く本作品をよろしくお願いいたします!

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