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再開は急展開・四

 黒瀬の言葉を聞いた白銀は、呪文を唱えられたように不気味な笑みを浮かべて、ついに説得できたと安心しているような表情に変わる。裏がある確率は百パーセントに近いだろう。

「じゃあ、ついて来てくれるかな? 会いたい人を連れて来て良かったよ」

 と白銀は言った。そして続ける。

「水落さんは少し待っててくれるかな?」

 その言葉に水落は小声で言う。

「ええ、わかった。でも、三十分くらいしか待てないと思うから……寒いし」

「わかってるよ。三十分以内に終わらせる」

 白銀がそう言うと、黒瀬を連れて、喫茶店から離れるように早足で進み始める。歩いている途中、白銀は携帯電話を使って、誰かに電話していた。声が小さかったし、通話時間は短かったので何を言っているのかわからなかったが、興味が無いので、特に思うことも無い。


 連れて行かれたのは、誰もいない空き地。喫茶店から一分くらいで着いた。携帯電話で時刻を確認すると、今は午後十時を過ぎていることがわかった。周りはとても静かで、家の窓から光が少し漏れている。

 空は真っ黒。空き地にも、特に変わったものは無い。

 白銀は訊く。

「ようこそ……、と言っても嘘だろ? 恋人のために頑張る、ってことかい?」

「恋人じゃない。依頼人だ」

「依頼人の依頼は絶対に失敗させないということか? 正義感というか、まあ、殺し屋に正義なんて正反対の言葉だけど」

 白銀は軽々しい口調で話した。何を言いたいのかわからなかった。それとも、本題に入る前の単なる世間話のようなものだろうか。

 白銀は続ける。

「じゃあ、会いたい人を君に見せよう」

 すると、三人の男性と一人の女性が空き地に入ってきた。女性は車いすに乗っていて、口を閉じたまま俯いている。黒髪は背中まで伸びていて、顔はよく見えないが、健康には見えない。

「顔を上げてみようか」

 白銀がそう言うと、女性はゆっくりと申し訳無さそうに顔を上げる。それを見て、黒瀬は少し目を細めた。少し細い目、小さい鼻、青色に近い唇の女性――まさか、あのときの……

「お、わかっているようだね」

 白銀が不敵な笑みを浮かべて言った。

「中二のときに、自転車で……」

「そう、そして彼女――僕の姉は当たって、階段から転げ落ちた。それから、姉の人生も転げ落ちてしまったよ」

 白銀の表情から笑みが消える。その数秒後、黒瀬を悪魔だと思っているような目でにらみつけた。

 このときに、黒瀬は自分自身の心配をした。復讐というわけか。白銀は姉に俺が殺される姿を見せて、安心させようとしているのだろう。黒瀬の脳裏に不安と恐怖が溜まっていった。


 ――さて、どうするか?

「無理だよ。あの三人は僕の仲間さ」

 勝利を確信したような口調で白銀が言った。そして、右ポケットから小さい何かを放り捨てる。

「それが、水落の不死身の能力を消す薬だ。まあ、あれは不死身じゃなくて、身体の再生能力とか抵抗力を人間離れしているかのように強化させているだけだが……」

 白銀はそこまで言ってから、黒瀬を狙うように見つめる。そして、

「殺すか」

 と冷たく言い放った。心の奥にある強い思いが、その言葉から感じられる。多分、悲しみだろう。

 しかし、同情するわけにはいかない。何とかして逃げないと……。何か方法を考えているときも、三人の男性は突進するように黒瀬に迫ってくる。そして、白銀もナイフの刃を黒瀬に見せる。四対一という圧倒的不利な状況で勝利を手にすることは不可能に近い。

 まず、黒瀬は白銀が放り捨てた『薬』を拾う。すると、周りには四人が黒瀬を囲むようにして立っていた。白銀以外の男性が凶器を持っていないということは、白銀が俺を殺すつもりだろう。それを姉に見せて、復讐ができたと喜ぶことが白銀の目的ではないかと黒瀬は予想した。

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