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プラスへ向かう・三

 右腕が勝手に動いた。それは白銀の右手首の下側に動き、振り払うように上げる。弾が発射されたのはその時だった。銃口は上に向けられたので、誰にも当たらない。そして同時に、黒瀬が左手に持っていたナイフの刃が白銀の心臓に刺さる。

 白銀の表情から余裕が消えて、後ろへ倒れた。その後、彼は左手をゆっくりと左ポケットに近づけて、中に入れる。取り出したのは白色の携帯電話だった。

 携帯電話を見た瞬間、黒瀬の左手が携帯電話を奪おうと動く。白銀は奪われないように携帯電話を両手で持ったが、その手に入っている力が弱かったので、簡単に奪うことができた。心臓を刺されたダメージが大きかったのだろう。

 白銀は「くっ」と苦しそうな声を漏らす。白銀の着ている服が少しずつ赤く染まっていく。

「これで、仲間は呼べない」

 黒瀬が追い討ちをかけるように言った。携帯電話は黒瀬の左手の中にある。聞いた白銀は苦しそうな表情を見せている。

 白銀の表情から苦しさが消えていく。そして、死んだような表情に変わった。呼吸はしているようだが、それもできなくなるだろう。その数秒後、彼は目を閉じた。呼吸が止まる。彼の全てが終わる瞬間だった。


 白銀が死ぬと同時に、黒瀬は力を失った。立つことが難しくなり、足が後退する。そして、床に倒れるように座った。携帯電話が左手から離れる。

 左横には水落がいた。苦しそうな表情をしながら、右肩を左手で押さえている。だが、その目は輝いているように見える。嘘ではない。

 彼女の右手が助けを求めるかのように黒瀬の左肩に触れる。その感触は黒瀬の心にあるマイナスの感情を消していった。よくわからないが、温かくなってきたような気がする。

 彼女は小声で言った。

「見捨てられたかと思った」

「違うよ」

 黒瀬は否定する。水落の誤解を解きたいという思いが心の中にあった。

「安心した」

 彼女がそう言うと、黒瀬も安心した。何かに解放されたような気分になった。

 すると、彼女は突然、少し真剣な表情をして言い始める。

「なんか、死にたくないような、そんな気がする」

 黒瀬は驚いた。だが、そうなることが当たり前かもしれない。死ねる身体に治したということは、死への欲求や生きることの無関心も消えることになる。

 依頼は成功ではないが、これで良いかもしれない。というより、この終わり方が一番かもしれない。

 俺はこれからは左腕が使えるようにしようか。黒瀬はそう考えていた。だが、その前にしないといけないことがある。黒瀬は水落に向かって言った。

「まあ、良かったね。君は帰ったほうがいい。白銀の遺体は俺が何とかする」

 だが、言い終えた時に不思議な感情が黒瀬の心の中で生まれ始める。これは何だろうか。

 黒瀬の左肩に触れる水落の右手が強くなる。黒瀬は水落を見る。心臓が過剰に反応する。……命は狙われていないのに。

「ここに、また来てもいい?」

 彼女が訊いた。その言葉が黒瀬の脳裏を乱す。だが、それは苦痛ではなく、快感だった。黒瀬は戸惑いを見せずに頷いた。

 すると、彼女の顔に笑みが浮かんだ。

 黒瀬の脳裏が再び乱れる。

終わりました。何か、寂しい気がします。

皆様は楽しめたでしょうか。僕は書いていて楽しかったです。途中で頭の中に疑問符が浮かぶようなことも多かったですが、僕の中では良かったと思います。

感想や意見があれば、書いてくれると、僕も助かります。この小説を読んでくれた方には感謝しています。次回作も考えていて、もう少しで書けると思っています。

これからもよろしくお願いします。

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