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プロローグ

 夜十一時三十分。空は暗く、住宅街はとても静かだった。その住宅街の中にある一つのアパートの一室……そこに黒瀬くろせは一人で住んでいる。

 黒瀬はパソコンの前でメールを見ていた。テレビなどの音を発する機械を一つも使っていないので、パソコンから発される音だけが部屋に響いていた。

 高校へ行っていない黒瀬は今年で十八歳になる。今はまだ十七だ。

 今は、仕事の内容を見ている。


『お願いします』

 こんなメールがたまに来る。その内容は『○○を殺してください』とかそういうものだ。つまり、黒瀬の職業は殺し屋だ。しかし、そういう団体に入っているわけではない。個人経営だ。一匹狼だ。

 黒瀬は小学生のときから、誰にも言っていなかったが、殺人に興味を持ち始めていた。年齢が増えていくと、その興味は増大していった。そして、中学二年生のときに人を故意ではないが、重傷にさせてしまったのだ。少しだけだったが、快楽のような気分になってしまったことは否定できない。

 そのときから、黒瀬の人生は時計の長針と短針の動きが逆転したように狂ってしまった。今は人から逃げるように暮らしている。


 今回はメールが二件来ている。一つめのメールが先程の『お願いします』で、殺人依頼のメールとしてはどこにでもあるような普通のメールだった。

 しかし、二つめが自分の目を疑いたくなるようなメールだった。題名は『殺してください』。ここまでは普通。問題は内容だ。


『あなたは誰でも即死させることができる人のようですね。ある掲示板でそういうことが少しだけ書かれていたのでわかりました。

 殺人依頼をお願いしたいのですが、よろしいでしょうか? 神奈川県横浜市○○区の――

 十月十日の朝十時でよろしいでしょうか?

 その日、会ったときに殺しても良いです。あなたの目の前に標的がいますから』


 悪戯か、と思った。

 意味不明な依頼だ。最後の文が理解できない。

 しかし、行かないというのは自分の心が許してくれないので、行ってみることにする。嫌な予感が脳裏に渦巻いていた。

 そして、黒瀬はマウスを動かした。

「あ、あれ?」

 しかし、矢印が動いてくれない。キーボードを適当に押してみたが、時間が止まってしまったかのように反応しない。最近、パソコンの調子がおかしいな。何とかしないと。

 このときから、今でも狂っている俺の人生が時計の針が逆向きに動くように加速して狂っていくなんて、黒瀬は想像できなかった。

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