VSフェス
眠たくて何描いてるのか分からなくなります。
◇
「そうそう、こっちだった~」
今度こそ試験場に案内される。そこは普通ではあり得ないくらい広い部屋だった。おかしい、外から見た時はここまで大きくなかったぞ!
「どうなってんだ…?」
「不思議でしょ~?転移結界って言って触れると別の空間に飛ばされる様になってるんだよ~」
「ほえー……」
と言う事は既に此処はニャンニャンズギルドではないわけか。
「じゃあ早速試験始めよっか~!フェスとぉ……」
「シントだ」
「……うん、フェスと君はお互いに距離を取って対峙してね~」
名前を教えたって言うのに君呼ばわりされて軽くショックを受けている間にフェスはやる気満々で配置に就いていた。ちょっと気合い入り過ぎじゃありません?
慌てて俺も配置に就く。
「2人とも用意は~?」
「万全よ」
「オーケー」
俺とフェスの返事に頷いたレーカは離れた場所で手を頭上へ伸ばした。
「それでは~、第1回戦、始め~!」
「武器も出さないなんて随分と余裕ね?」
開始の合図と共にフェスの先制――なんて事はなく、俺が武器を持ってないのは余裕噛ましているからだと勘違いしてか、腰に提げた剣の柄を握ったまま眉を顰めてきた。顰め顔も可愛い。
でも勘違いしないでほしい。俺は武器を出さないんではなく、ただ単に持ってないだけなんだ。ナメプじゃないよ!
「生憎、武器なんて持ち合わせていなくてね、それに」
取り敢えず格好付けておく事にした俺は指をフェスへ突き付け、不敵に笑んだ。ちゃんと笑えてる?
「お前相手に武器なんて要らない」
明らかな強がりだけど、相手は俺の実力を知らないので当然なめられていると思ってしまう。フェスは俯いたまま、鞘から紅い刀身の両刃剣を抜き、顔を上げると共にそれを構えた。
「後悔させてあげる。完膚無きまでに!」
怒り爆発。フェスはその場から一切動く事なく剣を振り上げると、ブレなく斬撃を放ってきた。この速度ならかわせる!
そう思ったのも束の間、斬撃は放たれてすぐして姿を消した。
「ありゃ?不発?」
「なわけないでしょうが!」
気を抜いた瞬間を見計らった様に目の前に消えた筈の斬撃が出現した。俺は驚きつつも体を思い切り捻って回避を試みる。
しかし完全には避けきれなかったみたいで、頬に軽い痛みを感じた。
「っ……マジやべえ」
痛みの感じる頬を触れると指先には俺ので間違いない血液が付着していた。
「正直、甘く見てた……凄い力手に入れたからって調子乗り過ぎてたわ。悪い、ここからは本気を出させてもらうぜ」
自分の全力が何処まで通用するかは分からない。だけど、本気も出さないまま終わるのだけは俺の本能が許さなかった。
イメージするんだ。フェスと対等に戦う自分の姿を。その為に必要な力を。
すると体の深くから力が溢れ出るのが感じられた。不思議と気持ちも昂ぶり、刺激された脳がこの状況に対する不安や焦り、恐怖を消去し、世界と接続される。全てが白くなった世界で、俺は初めて目の前のフェスを敵として認識した。
「――行くぞ」
俺にとっての試合が今、始まった。
にくみそきゃべつ