魔界と白竜
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◇
「おい、ここは何処だ?」
山を越えればそこには地獄のような光景が待ち受けていた。天気が悪いとかそう言うレベルじゃないくらいに空は黒で覆い尽くされていて木々も背後の山が嘘かと思う程に枯れ散らかしている。
おかしいな、山を越えるまでは空も晴天だった筈なのに。
「あ、あー…ここは、魔界ぃ…」
「魔界?魔界って、魔王とかよく潜んでる?」
「それであってるよ。見るのは初めてだけど…そっかぁ、こんなところに隠れてたんだ」
「一応神なのに知らなかったのかよ」
「一応は余計だよ!…魔界はね、不可視の結界のせいで直接行かないことには存在を目にすることが出来ないんだ」
「神でも?」
「この世界の生物が施したものなら看破は容易いんだけどね。魔界を覆うこの不可視の結界は多分、魔神が張ったものだったと思う」
「魔神!」
魔神。その名を聞いて俄然この魔界に興味が湧いてきた。面白そうな事には好んで頭を突っ込んでいく。それが俺のスタイルだからだ。
俺が目を輝かせているのに気が付いたのか、アストリエが頬を引き攣らせ始める。
「ま、まさか魔神のところに行くつもりじゃないよね…?止めといた方がいいよー…?」
「馬鹿言うな。魔神に会いに行くんじゃねえ」
ホッと息を吐くアストリエ。女神ですら関わりたくない存在みたいだ。となると、強いんだろうな。
俺はドン・ウルフ、命名フェンリルに走るよう促す。何故フェンリルかと問われれば何となく、と答えよう。
「魔神をぶっ倒しに行くんだよぉぉ!駆けろ、フェンリル!!」
遠吠えと共に駆け出す。突然の事で振り落とされそうになったアストリエが必死に俺にしがみついて後ろで喚き散らしてるけど聞こえない聞こえない。風に乗ってますよ。
「ちょちょちょ、待ってぇぇぇぇ!!魔神と戦うなんて自殺行為だよぉぅぅぅぅぅ!!」
枯れ果てた大地を駆け抜け、通り過ぎる魔物と思わしき生き物に追い掛けられながら取り敢えずまだ遠くに見える城のような場所を目指す。
最早軍勢を引き連れた将軍の図が完成してしまっているが知った事じゃない。このまま突っ込んでやる。
――しかし、事はそう簡単には進まない。
『待たれよ』
吹き荒れる暴風。感じないけど感じれば凄まじかったであろう圧倒的威圧感。周囲にいた魔物が遠巻きに離れる程の力を持つそれは、まさしくファンタジーではお馴染みのドラゴンだった。
神々しくも感じる純白な鱗を持つ白いドラゴンは翼を雄々しく広げ、俺達の前に舞い降りた。
「こいつも魔物?」
「一応魔物の部類。しかもこれは数多のドラゴン種の中でも最も優れてる白竜だね」
「強いのか?」
「強いよー?多分鍛えに鍛えた戦士でも勝てるかどうかってレベル」
「よし、やるか」
丁度強敵に俺の力が何処まで通用するのか試したかったところだ。その相手にこいつは相応しいだろうか。
『何をさっきからゴチャゴチャとほざいておる。貴様如きが我に敵うとでも?』
「聞こえてんなら早い。悪いが俺の相手になってもらうぜ」
『本気か、死ぬぞ』
「死んだらその時だ。生憎俺は飢えててな。生死を賭けるくらいが面白い」
『言ったな?今更後悔しても――遅いぞ!!』
背筋がビリビリくるような気迫にフェンリルが地に伏せてしまう。このままだと巻き込んでしまうな。
「おい、アストリエ。フェンリルと後ろに下がってろ」
「本当に大丈夫…?君は強いけど、正直敵うかどうか分からないよ?」
「まあ見ててくれ。負けるつもりは更々ねえ」
『これに耐え切れるか、人間!』
白竜が吐き出すほぼ光線に近い炎のブレスを紙一重でかわして今まで俺が立っていた場所を確認する。
『ほう…今のをかわすとはな』
「マジ、かよ…!」
そこには、底が見えない程に深い穴がポッカリと空いていた。もし2人を下がらせていなければアスタリエはともかくフェンリルは跡形もなく消し飛んでいただろう。
圧倒的なそのブレスに、俺は冷や汗を流しつつも手汗握る戦いに心を躍らせていた。
変な終わり方したような気がする。




