魔除けの花
眠気に耐えながら描きました、できたてです!
◇
転移技ことドロンを使用して森に来た俺とアスラ。後は森を再生させるだけの簡単なお仕事の筈だった。
「……待っていたぞ」
しかし、そこに奴は現れた。背中を向けているから顔までは分からないが、あの赤いツンツン髪は間違いない。
「……エンジ、か?」
「覚えていてくれたか」
振り向くエンジ。相変わらず腹の立つイケメンだが片目に何故か眼帯を付けている。昨日の今日で何があったんだよ。
「お前が去った後、レーカとフェスが行方を眩ましてニャンニャンズギルドは実質崩壊したよ」
「そうか」
「今は俺が代理のギルドマスターとして何とか解散しないように留めてはいるが……それも時間の問題だろうな」
「そうだろうな」
「こうなったのも、全てお前のせいだ」
「そうかな?」
「お前さえ来なければ俺達のニャンニャンズギルドは崩壊しなかった筈だ」
強ち間違いでもない。実際にニャンニャンズギルドは崩壊したのだから。
でもそうさせたのはレーカだ。アイツがギルドメンバー厳選なんてしていなければこうはならなかったと思う。
「で、結局何が言いたいんですか?」
痺れを切らしたアスラが問い質す。アスラとしてはさっさと森を再生させて育てたい花を探したいんだろう。
「ああ、つまりは復讐だ。俺はシント――お前に決闘を申しこ」
「断る」
「ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーー―――――」
いい加減うざったらしいから取り敢えず殴り飛ばした。
空の彼方へと見事な回転を見せつけながら消えていったエンジに敬礼。
「とんだ噛ませ犬でしたね」
「全くだ」
エンジに何があったのかは知らないが特に気になるわけでもないし無視だ無視。
「ここがグレイセルが誇る魔物無き森、跡ですか…」
「魔物無き森?」
「はい。丁度、ここの森全体の土に魔除けの加護が宿っていて魔物が一切寄り付かない事からそう呼ばれるようになったそうです」
「へぇ、そうなのか」
そんな森を吹き飛ばしてしまったとは申し訳ない。心で心から詫びよう、ごめんなさい。
「取り敢えず、とっとと元に戻すか!」
「お願いします」
「……はい!おしまい!」
高速再生で森跡地から魔物無き森へと再生させた俺は隣で特に驚いた様子を見せないアスラを横目で見た。
「勇者の力はやはり偉大ですね。改めて、凄い…」
表情には出ていないが、どうやら感心しているみたいだ。
立っている位置が森のど真ん中だった影響か、俺とアスラがいる場所だけ広場のようになっている。ふと、アスラが歩き出し近くに咲いていた白い花の前で屈みだした。
「魔除けの加護が宿る土で育った花には、同じく魔除けの加護が宿ると言います」
優しく、そっと摘まれた花はほんのりと光を灯していて、思わず魅入ってしまう。そこに容姿端麗なアスラも加わるのだからそれはもう幻想的だ。
アスラは片手の平に向かって花を軽く振るう。すると花からコロンと幾つかの種が落ちた。これがアスラの欲しかった物なんだろう。
「そして、その花は種を落とし、また新たな花を咲かしていく…シント、ありがとうございます。あなたがいなければ多分、この花を得る事が出来ませんでした」
初めてアスラが笑顔を見せる。その姿が俺の胸に突き刺さる。
ごめんな、森を消し飛ばしたのは俺なんだ。俺がいなかったら多分、何時でも花を取りに来れたと思うよ。
「……ああ、喜んでもらえて光栄だよ」
なんて真実なんて告げられる筈もなく、俺は冷や汗を滝のように流しながらこのクエストの笑顔を受け取るのだった。
ふぁい…る………たじー……戦友。




