イメージの力
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◇
「何、してるの…?」
腕を掴まれて嫌がる素振りを見せる俺こと幼女とそれを捕まえるエンジ。この光景を見て不審に思わないわけがない。
計画通り。フェスと言うらしい女の子に表情のない顔で見られてエンジが狼狽えている。
「え、いや!これは違うんだ!」
「へえ、違うって、何が?私何も責めたりしてないよ?」
「で、でも目が…笑ってなぃ……」
「そうだよね、知り合いが小さな女の子捕まえてるところ見て笑えるわけないよね」
「違うんだよ、これは…!こいつに嵌められて!!」
とうとうフェスの視線に耐えられなくなったエンジが泣き真似をする俺を指差した。へし折りたい衝動に駆られたけど我慢我慢だ。
指を差された俺の下に来て少し前屈みになるフェスと初めて視線が合う。間近で改めて見ると造形もしっかり整ったまさに可憐が似合う容姿をしていた。長く伸びた金髪は腰の辺りで束ねられ、身に纏った革鎧が実に引き締まったスタイルを強調させていた。
……胸についてはノーコメントで。
「本当なの?」
「ふぇぇ…私何もしてないもん……急にお兄ちゃんがお尻撫でてきて、それで…!ふぇええええ!!」
流石に自分でもどうかと思うレベルのクソ演技で内心冷や汗を掻きつつ泣き喚く。通じろ、俺の嘘!
しかし馬鹿なのかお人好しなのか、フェスはそっと俺の頭に触れて優しく撫でるとゆっくり立ち上がった。
「エンジ」
「な、何だ?」
「言い訳は後で聞くから。まずはお仕置きからするね」
「ちょ、ちょっとまっ」
スタスタスタっとエンジに歩み寄って問答無用で肩を掴んだフェスは流れる様に転移を使いエンジと共にこの場を去って行った。結構周りが見えなくなるタイプの子らしい。
普通ならここで小さな女の子置いていくなんて事はしない筈だからな。
「取り敢えず厄介事は去ったな」
何時までもここで時間潰すのも勿体ない。まずは東に見える街へ行く事にしよう。
俺は変身を解いて元の姿へ戻り、再びステルスを使った。今度は簡単に解けない様にちゃんとしたイメージをしておいた。
「空ってやっぱ飛べたりすんのかな?」
試してみる価値はある。これまで全てイメージで具現出来たんだから飛行だって出来ない事もない筈だ。初めての事でイメージが足りなかったから最初の翼は失敗したと俺は見ている。
そうと決まれば早速イメージだ。翼は無くてもいい、ただ感覚で空を飛ぶ。
「お、おおっ?おおおおおお!飛んでる!!俺飛んでるぞ!!」
ふわっと風に巻き上げられた落ち葉の様に体が浮いた。まだ何となく落ち着かない感じだけどこのまま飛んでも問題無いって確信出来る。
飛ぶぜ!俺は鳥だ!
頼りない動きで空中を飛びつつ、俺は街の上空を目指して飛び立った。
次回、「俺と財布の世界管理」に繋がる要素、フェスが本格的に登場します。