剣姫爆誕・再!
トイレットペーパー高速巻きおじさん。(特に意味は)ないです
◇
結果的に言えば、彼女の力は圧倒的だった。
「他の騎士達を倒した程ですから少々期待してはいましたが……所詮、この程度ですか」
目の前に床がある。身体が思う様に動いてくれない。見上げると、そこには蔑んだ目で俺を見下ろすアスラの姿があった。桃色の布生地が眼福過ぎるけど今はそんな事言ってる場合じゃない。
一撃だ。アスラがその場から動いた時点で、俺と星実は床に倒れ伏せていた。別にアスラの動きも剣筋も見えていなかったわけではなかったのに、回避行動すら取れないまま。
しかも剣の腹に当たる部位での攻撃だ。手加減されたのだと理解するのに時間は掛からなかった。
「そこの異形な者もそこそこの腕かと思えばそうでもない様ですし」
「腕が多いだけで悪かったわね?」
「おや、まだ話せるだけの意識が残っていましたか」
「残念だけど今の攻撃じゃ私を倒すのは難しい」
てっきり俺と同じでやられたと思っていた星実が何ともない顔で立ち上がってしまう。マジでか。俺もさっきから何度か立とうとしてるけど力が抜けるばかりで一向に立てる気しないぞ!
「手応えがないとは思ってましたが、まさか私の剣を受けて立てる者がいたとは驚きです」
「あんまりナメてもらっちゃ困るわ。私はまだ、剣を抜いていないわよ」
ここに来て密かに俺が星実を見て感じていた疑問。それが星実が剣姫だのソードウーマンだのと名乗る割には一度も剣を手にしていなかった事だと理解する。
「その形で剣士でしたか」
「アナタ、私を馬鹿にしてるのかしら?」
「いえいえ、そんな事はないですよ。てっきりその風貌からして狂戦士辺りかと思っていた、それだけの話です」
「やっぱ馬鹿にしてるわ」
珍しくマイペースな星実が青筋を浮かべて怒りを露にする。正直俺も星実は剣士より狂戦士寄りだと思うけど今口に出すと殺されてしまいそうだから黙っておこう。
どうやら星実とアスラの相性は最高に悪いらしい。2人の間に火花が散っているのが見えるようだ。……あれ?本当に散ってる?
「いいわ。どうしても信じられないのなら見せてあげる。私の真の剣姫形態を」
「ばるきりー…?」
この世界には地球に存在する神話が無いのか、ヴァルキリーと言う名に首を傾げるアスラ。本来なら戦乙女なんだけどこの世界ではそれを指摘する人がいないから適当に言っても十分通じる。
しかし、まだ変身を残していたとはたまげたな。これはまたもう一回り大きくなるか?
「さあ、刮目しなさい。これが私の、真の姿よ!」
総数6本の腕を大袈裟に広げた星実が炎に包まれてその身を眩ませる。これから起きる出来事が想定出来ないアスラは静かに、息を呑んだ。勿論俺もね。
「剣姫、爆誕!!」
一度縮小した炎の渦が爆発的に膨れ上がり、周囲へ撒き散らされる。それの被害を受ける事こそなかったが、不思議な事に火の粉を浴びた俺に身体の自由が戻ってきた。これはフレニクスの炎の影響だろうか?
体を起こして真の剣姫形態とやらになった星実を見ると、そこには大きくなるどころか縮んだ剣姫がいた。背の高さは最初に会った星実と同じ170センチ程で、容姿も服装も剣姫と同じ。違うところと言えば腕が2本になって背後に量産されたベルゼギヌンテが円を描いて回っている事くらいだろうか。
いい加減俺のベルギヌンテ返せよ。
「――準備はいい?私はアナタみたいに甘くないわよ」
そう言って剣姫は、狂いに狂った笑みを溢した。
またもや剣姫爆誕!?次回、燃え盛る赤と紅の軌跡!お楽しみに!!




