王国六騎士団そのご!
やっとここまで来ました!
◇
相手はやる気満々だ。今にも飛び掛かって来そうな2人から視線を外さないまま、俺は星実に一度やってみたかった念話を送ってみる。
『聞こえる?』
『聞こえます』
『なんで火の鳥が返事するんだよ!!』
『火の鳥ではありません!ちゃんとフレニクスと呼んで下さい!』
『どうでもいい』
『ひ、酷いです!…で、でもちょっと気持ち』
『はいはい。それで何でフレニクスが念話に応えてるんだ?』
『星実様は聞こえても返事をする事が出来ないからです』
『へぇ、そうなんだ』
となると星実には俺みたいな想像具現化能力が無いのか。もしかすると身体能力にチートが全振りされてるのかもしれない。知らないけど。
『それで何か用?と星実様が言ってます』
『ああ、この戦闘を一瞬で終わらせる方法を思い付いた』
『とは?』
『それは――』
念話に使用した時間、僅か1秒。念話してる時だけ時間の流れが超スローになる現実を具現化させておいた結果だ。
星実が俺に視線を向けてきたから頷いてみせる。こう言うアイコンタクトニズム的な事やってみたかったんだよな。
「先制はもらった!」
最早、呼称破棄で発動出来る様になった想像具現化で俺と星実に認識阻害の能力を付与して、片手に持っていた鉄の剣を手放す。ちなみにこの鉄の剣には自動追尾と遠隔操作の能力を付与してある。
「消えた…?」
「いえ、まだ何処かにいる筈ですわ…!」
不意に視界から消え失せた俺と星実を探して辺りを確認する2人に、俺が手放した鉄の剣が襲い掛かる。主な標的はラタニアだ。
鉄の剣を遠隔操作でまず、ラタニアとマータスを引き離す様に突撃させる。狙い通りに2人が飛び退いた瞬間、自動追尾に切り替えて標的をラタニアに。
「剣が勝手に…!?」
「ラタニア!ファイアーボール!!」
マータスが不規則な動きで襲い掛かる鉄の剣に苦戦しているラタニアを援護すべく剣の切っ先を向けて火球を放つ。見た目からして初級魔法だろうな。
でもそれすら俺は戦力に変える。自分で言うのもなんだが小癪な事に火球に鉄の剣と同じく自動追尾と遠隔操作の能力を付与させた。
「ファイアーボールが、帰って……くっ!」
今度は火球がマータスを追い掛け始める。それも鉄の剣と同じで不規則な動きをするもんだから剣を振るっても当たらずにいた。
そんな防戦一方な戦いが続き、ラタニアとマータスが疲れ始め、同時に後方へ下がった時。
「ん…!?」
「これは…!」
目の前に迫る鉄の剣と火球の対処に必死で周りが見えていなかったのか、何時の間にか広間のど真ん中まで追い詰められていた2人がお互いに背中を合わせる形になった。計算通りだ、これでようやく次に進める。
鉄の剣と火球のコントロールを遠隔操作に切り替え、ラタニアとマータスの目と鼻の先スレスレで頭上へと飛ばす。そのまま頭上へ飛ばした鉄の剣と火球は遠隔操作のまま、多分王子様へと突撃させた。
先に火球が王子様の腹部へ激突し、ほんの小規模な爆発を起こして吹き飛ばす。そして追撃と言わんばかりに鉄の剣を追わせて王子様の服を壁に縫い合わせた。上手くいってよかった。ちょっとしたズレで王子様の頭部がーってなっちゃったら大騒ぎなんてレベルじゃなくなってしまう。
「しまった…!」
「マックエンス王子!」
「余所見」
「してんじゃないわよ!」
ここぞとばかりに認識阻害を解除してマックエンス王子とやらに気を取られてしまったラタニアとマータスの腹へと強烈な拳を叩き込む。俺の腹パンはその場でラタニアの意識を奪う事に成功したけど巨体な星実の腹パンはそうはいかず、運の悪い事に対象だったマータスは一度天井に叩き付けられてから気絶した。凄い勢いで飛んでったけど大丈夫かマータス!
「作戦成功、だな」
「もっと楽な方法あったんじゃない?」
「山程あった」
「馬鹿ね」
「馬鹿とか言うな!」
何事もなかったかの様に振る舞い、俺と星実は次のステージへ進む。次が恐らく最後の騎士様だ。扉の上で張り付けにされた王子様がワイワイと五月蠅かったけどまあいいか。
扉を抜けるとやっと謁見の間が視界に広がった。ここまでの構造に変な感じを覚えるが、それでも初めて見るってのもあるし、それにここまでの道程を考えると感動に値する光景だった。
やっと辿り着いた。騎士様との連戦のせいか時間の感覚が麻痺して何時間も掛かったみたいに思える。これで王様に会える筈。
だが、見てみると謁見の間の玉座に王はいない。
いたのは光差す謁見の間にただ1人。静かに佇む赤髪の騎士様だけだった。
「――花に水をやって帰って来てみれば、こうもあっさり全滅、ですか……」
明らかに今までの騎士様とは次元が違う。そこに存在しているだけで、圧倒的な力を叩き付けられるようだ。
「問います。あなた方が侵入者で間違いないですね?」
「……そうなるんだろうな」
「分かりました。……近年、こう言った騒ぎが一切無かったものですっかり浮かれていましたよ」
一瞬、ほんの1秒にも満たない刹那。視界どころか意識までノイズが走った様な感覚に襲われる。
「私は王国六騎士団、第1部隊隊長兼――初代勇者の血族」
赤髪の騎士様の手が腰に提げた剣の柄を握る。一層、ノイズが激しさを増す。
「名を、アスラ・アリステラ」
何の変哲もない鞘から、青みがかった刀身の剣が引き抜かれた。ノイズが静まっていく。
「我が純聖剣の輝きに誓い、侵入者を排除しましょう」
顔の前で構えた純聖剣が、騎士アスラに応える様に輝く。彼女を中心に黄金の輝きが謁見の間を埋め尽くした。
気が付くとそこにいたのは白銀の鎧を着込んだ騎士ではなく、白を基調とした衣装を纏った勇者だった。マントが靡き、これ以上ない強者感を醸し出している。
さしずめ勇者形態と言ったところか。俺は冷や汗を掻きつつ、何とか逃げ出しそうになる足に内心叱咤を入れた。
「いざ、尋常に」
勇者の血族、アスラが純聖剣の切っ先を俺と星実へ向けてそう宣言した。
次回、勇者の血族との激闘!お楽しみに!!




