王都デスモール
展開が凄い!(悪い意味で)
◇
「何をしてるって聞いたんだ、答えろ!!」
「何って言われても、見て分かんねえ?一方的な暴力で-す」
「お前…!!」
けろっと答えてみせる。まるで自分は悪くないとでも言う様な俺の態度が気に食わなかったのか、エンジが右腕を突き出した。
「灼熱よ。アレを穿ち、焼き払え!――コロナ!!」
初めて詠唱を聞いた。そう言えば魔法には詠唱なんて言う面倒な過程が存在していたんだったな、などと思いつつエンジから放たれた熱線を片手で受け止める。
「レーカは良くて俺は駄目、か……」
人をダルマにしておいて謝罪もなく、挙げ句にはその惨事を起こしたレーカが咎められる事はなかった。なのに、ただボコボコにしただけで俺はここまで敵意を向けられなければいけないと言う現実に何とも言えない気持ちになる。殺す気満々だったけど。
熱線を想像具現化で生み出した魔力還元の能力で魔力へと還してレーカから足を退ける。急に殺意が冷めた故の行為だった。
「あーあ。何だか冷めちまったわ」
当たり前みたいに魔法を無力化した俺だけど、本来ならこの光景はあり得ないものだ。だからか、エンジを含めて野次馬共は呆然として固まっていた。
レーカと言う殺害対象と殺意を失った今、既に俺がここにいる理由は無くなっている。さり気にレーカに俺がダルマから復活した際に使ったと思われる能力、高速再生を掛けておく。
「じゃあな、俺はお暇させてもらうぜ」
転移技、ドロンで瞬間的にギルドの外に出て来た俺は一度だけニャンニャンズギルドの看板を見上げる。色んな意味で惜しいギルドだよな、ここ。
「こう言う雰囲気は嫌いじゃないんだけどな……流石にあそこまでやってこの街に滞在出来る程勇者じゃねえよ俺」
殺意に任せてここまでやってしまった事に今更後悔しつつ、これからは自重しようと心に決める。
「同じ感じの城下町あると良いけどなぁ」
転移指定、防壁に覆われた城下町。ドロンを使用した事により俺の視界は一転する。
見た限りグレイセルの城下町と似た造りをしているが、1つ違うところと言えばそれは城だった。圧巻する程の大きさに俺は思わず言葉を失ってしまった。
どう言うところなのか取り敢えず検索に掛けてみる。
《自動検索、該当、王都デスモール:世界でトップクラスの武力を誇る国の首都。巨大な防壁と王国六騎士団と呼ばれる6つの騎士団に守られており、他国との戦争で敗北した事は一度もない。騎士団の存在があるせいか、ギルドがない》
「ギルド無いのか…」
少し残念に思う。今度は真面目に冒険者デビューしようかと思ってたんだけど。
「無いなら作ればいいんじゃない?」
「お、お前天才か!?」
普段は天災だけど。つーか今まで何してたんだよ。
「ここを拠点として王国を築き上げましょう!」
「既に王国なんですが」
「内部から支配するわよ」
「別の場所に作る発想はないのか…!」
「面白くなーい」
「自由だなお前」
「動けないけどね」
「なんかごめん」
そんなこんなで俺、突然ですがギルド作ります。
おかしいですね。普通ならもうレーカとフェスが仲間になっていてもいいんですが…。