レーカ、再び
神斗がだんだんただのクズに……。
◇
しかしこんな騒ぎの時にエンジとか言うイケメンは何処で何をしているのやら。
仮にもイケメンなエンジに軽く失望しつつ、階段を上がって2階に着いた俺は存在探知でレーカの居場所を割り当てる。どうやら執務室にいるらしい。
「ここか」
ノックもせずに部屋に入る。やはり此処は執務室のようだ。
そして、俺の視線の先には執務机に座るレーカの姿がある。なんでそこに座ってんだよ。
「あれ~?随分下が騒がしいから強い人でも来たのかなって思ったんだけど~、なんだ君か~!」
「俺で悪かったな」
「何の用~?既に試験に落ちてる君はもう此処には入れないよ~?」
「は?誰がこんなクソギルド入るっつったよ?」
「……クソギルド?君、随分調子こくね」
「調子こいてんのはテメェじゃねえのか?何時まで強者のつもりでいんだよ」
「実際、君より強いからね~?」
力量が分からないのか、それとも単に見下し過ぎて気付いていないのか、レーカは冷たい視線を俺に向けて私強いアピールをしてきた。強者の余裕もここまで来ると滑稽だな。
「ああ、何か急に小物臭してきたわ。そろそろうざってえ」
「さっきから雑魚のくせに何生意気な口利いてるの?殺すよ?」
「やってみな。これを機にテメェをその強者の椅子から引き摺り落としてやるぜ」
しかし、ここで戦うにはあまりに狭すぎる。と言う事で俺は1つ提案した。
「どうせなら試験で使った場所でやろう。ここじゃ狭くてまともに動けねぇ」
「……そうだね。そうしようか」
殺気立っているレーカの口調は先程までの間延びしたものではなくなっていた。これが素と言ったところか。猫被りは今まで色々見てきたけどこのタイプは初めてだな。
試験場に到着した俺とレーカは途中で着いて来た野次馬の観戦に見守られながらも対峙する。集まった冒険者達はこれから始まる殺し合いに対して不安を抱いていた。
もし、ギルドマスターであるレーカが殺されてしまったらこのニャンニャンズギルドはどうなるのか、だとかそんな声が微かに聞こえてくる。けどまあ俺には関係のない話だ。
ただ、レーカを殺す。それだけだからな。
「さっさと始めようぜ、殺し合いを」
「数日前に負けておいてよく言うよ。君は此処で為す術もなく、殺されるんだよ」
既に殺し合いは始まっている。レーカの拳が俺の眼前へと迫り来る。不意打ちにも等しい一撃を片手で受け止めた俺はその場から一切動く事なく拳を握り潰した。
爽快な音が耳に響いて俺の神経を刺激してくる。アドレナリン大爆発だ。
「ひ、ひひは…!ヒヒヒャハハハハハハハッ!!」
「あぐっ…!!」
楽しくなってきた俺は高らかに笑いながら力任せにレーカを殴り抜く。さながら弾丸の如く壁にぶち当たったレーカから悲痛な喘ぎが聞こえる。
「おいおい!!何だよそれ!!弱ぇ!!雑魚過ぎんだろテメェ!?」
「この、力…!?この前までの、君とはまるで別人……!」
「何ゴチャゴチャ言ってやがる?テメェにはまだまだ楽しまさせてもらわねえといけねえんだ。とっとと立ちやがれ!」
壁に衝突した反動で動けなくなっていたレーカの髪を雑に掴み上げ、無理に立たせる。憎々しそうに俺を見上げるその表情に興奮を覚え、今度は腹部に拳を叩き込んだ。
なんだかんだ腹部ばかり狙う俺って実は腹パン好きだったりするんだろうか。
「ぐぇっ」
「カエルみてぇな声出しやがってよ!!ほんっと情けねぇぜ!!」
次第に俺の暴力はエスカレートしていき、殴りだけでは収まらず蹴りまで使ってレーカを傷付けていく。最早実力差があり過ぎて一方的にやられるレーカのプライドは既にズタズタに引き裂かれ、ほぼ戦意喪失までに陥っていた。
それでも止めない俺に誰もが停止の声を上げようとしたが、その誰もが恐怖して未だに止められずにいる。
身に付けていた衣服は最早ボロ雑巾の様になり、レーカ自身の肌にも痣やら出血やらが多く見られて目も背けたくなる様な酷さだ。顔に限ってはボクサー顔負けの腫れ具合で元が美少女とは思えない造形と成り果てている。
「テメェが頑丈で良かった!!こんだけ殴ってもぶっ壊れねえんだからよ!!」
「もぅ、やべで…」
「ああ?何言ってんのか聞こえねえよ」
まともに呂律も回らないレーカを蹴り倒し、胴体を踏み付ける。何ともまあ無様な姿だ。こんな奴に一度とは言え負けたとは情けないにも程があるな。
そろそろトドメを、と俺が星実に手を掛けた時だった。
「――お前、何…してる?」
「おっと、ここで正義のヒーロー見参ってか?ヒュー、格好良いねえ!」
そこには、怒りに燃えた正義の男が立ち尽くしていた。
話随分改変してるんですけど実はフェス、本当ならここで神斗格好良い素敵!ってなってるんですよ。