フェス、再び
ふぇぇ……。
◇
別に待っていなかったニャンニャンズギルドの諸君は突然入って訳の分からない事を言い出す俺に戸惑いを隠せずにいた。
それでも実力のある奴らは戸惑いつつも警戒態勢に入っている。どうやら俺の絶妙な笑顔にだだ漏れの殺気が相まって危ない奴だと察知したらしい。賢明な判断だ。
「レーカって言うギルドマスターがいるだろ。出せ」
「な、何よアンタ!急に来たかと思えばギルドマスターを出せだなんて!」
近くにいた強気そうなモブ女が最初に声を上げた。うるさい奴だな、ギルドマスターに用があるわけで別にお前みたいなモブには用はないんだよ。
スッと真顔になる俺にモブ女は小さく悲鳴を溢す。第一声に振り絞った勇気は認めてやろう。だが、大人しくレーカを出さなかった事が残念過ぎる。落第点。
「聞こえなかったか?レーカを、出せ」
「明らかに危ないアンタなんかにレーカを会わせるわけにはいかないってのよ」
誰かが何処かで言う。冒険者もとい人混みに紛れて姿が見えないが、言う事はご尤もである。
「だったらどうする気なんだ?」
「ここで退いてもらうのよ。アンタみたいな殺意剥き出しの奴にはいどうぞって会わさせられると思う?」
よく聞いてみれば聞き覚えのある声だった。冒険者の群れが分かち、そこを通って声の主が姿を現す。
「それもそうだな……フェス」
「思わない再会だわ。えっと、シントだっけ?」
「ああ」
「随分変わったわね?この数日で何かあったわけ?」
「色々とな」
「そう」
そこから先は言葉なんて要らない。静かに、剣を抜き取ったフェスが腰を落とした。本来ならここで熱いバトルを、と行きたいんだが今回の目的はフェスではなくレーカだ。速攻で終わらせたい。
直立不動のまま想像具現化を発動し、槍を具現化させる。これに掛かった時間は2秒にも満たない。修行を経て想像するのに要する時間が短縮されたと言ったところか。
これを想像短縮と名付けよう。そのままとか言うな。
「穿て」
照準はフェスの腹部へ。行動に出られるより速く、具現化した槍を射出させる。その槍は最早俺にしか捉えられない速度でフェスの腹部を貫き、ギルドからさよならバイバイした。
どうか巻き込まれる人がいない事を祈って俺はフェスから視線を外す。想像具現化で生み出した存在探知の能力を使い、この建物の2階にレーカがいる事を把握した俺はフェスが倒れて騒ぎ立てるモブ共の光景を背に、2階へ続く階段を目指して歩み始めた。
レーカって言う目的がなければもっと堪能したんだけどな?機会があればまた今度楽しむとするか。
次回、レーカとの再戦!お楽しみに!!