願わない勝利ボーナス
まだまだ始まったばかりなのに書き溜めの半分くらいの文字数とは如何に…!
◇
どうせハーレムを作るならこいつらを悪い例としよう。そう心に決めたところで俺の視界に兎もどきが飛び込んできた。
「そんなまさか、こいつは確かに俺が殺した筈…!」
別個体の可能性もあるだろうが、この溶岩地帯と成り果てた場所へわざわざ飛び込んでくる馬鹿もいない。となるとやはりこの兎もどきは俺が殺した個体…?
『恐らく私の蘇生の火に触れたのが原因でしょう』
俺が思考を巡らせながら兎もどきと睨めっこをしていると、我に戻ったのか火の鳥が聞き捨てならない事を言った。
「そせいのともしび…?」
『ずっと浴びてたじゃないですか!私から舞っていた火の粉の事ですよ?』
「ああ!あの鬱陶しいやつか!!」
『鬱陶しい!?そんな風に思ってたんですか!?』
「今もお前が鬱陶しいけどな」
『くぅ……たまりま、あっ、いえ!何でもありません!!』
今更誤魔化しても遅いぞ、火の鳥よ。お前の性癖は既に知っている。
「で?その蘇生の火とやらに触れて何でこいつが復活してんだよ」
『それはですね……』
そう言えば星実が検索がどうとか言ってた気がするな。この際だし使ってみよう。
火の鳥が説明を始めたけど一切無視して目を瞑り、検索と念じる。するとどう言うわけか、瞼の裏側に某検索エンジンみたいな枠が見え始めた。実際には瞼の裏側に見えているわけではなく、そんな錯覚をしているだけみたいだ。
《検索、蘇生の火:火の鳥から舞い落ちる火の粉の事。これに触れると命無き者は再生し、息を吹き返すと言われている》
音声ガイド付きで教えてくれた。
便利過ぎだろこの機能。もしかして俺が読んでた漫画の続きとか教えてくれるのかな?
試しに俺が異世界に来る前まで読んでいた漫画、「脅威!筋肉おじさんX!」の最新話を検索に掛けてみる。
《検索、脅威!筋肉おじさんX!:不人気の為、打ち切りとなってしまったタイトル。最終話は筋肉おじさんXの正体がいよいよ暴かれる、と言った展開で終わっている》
「うぇぇぇぇ!?筋肉おじさんX終わったの!?」
『あ、あれっ!?私そんな事言いました!?』
「こっちの話だ。忘れてくれ……」
ショック過ぎて声に出してしまった。そんな、毎月楽しみにしてたのに…。
しかし、どうやら検索の能力は俺のいた世界の情報すら検索範囲内に入っているらしい。筋肉おじさんXの事は残念だったけどこれは素晴らしい。ぜひ活用していきたいな。
「しっかし、そうかぁ…。この兎もどきはお前の蘇生の火でなぁ…もしかして不死になってたりすんのか?」
『いえ、蘇生の火で蘇った命には永久の命を与える不死の灯の効果を重複させる事は出来ないんです』
これはまた知らないともしびが出て来た。検索。
《検索、不死の火:聖獣、火の鳥が命を失う直前に周囲へ撒き散らすと言う火の粉。実際は火の鳥の核が肉体を捨てた直後に撒き散らしている。触れた者に永久の命を与え、一生死ねなくしてしまう》
一生死ねない、か。不死ってのは確かに魅力的かもしれないけど、失うモノが大き過ぎる気がする。不老じゃないから老いはするものの、寿命でも自殺でも死ねない。そうやって周囲の人が死んでいく中、自分1人だけが生き延びていく。辛くても悲しくても、自分だけ死ぬ事が許されない。それは、一種の地獄の筈だ。
こればかりは己と時の勝負になってくるな。時の流れに勝ち続けるか、負けて折れるか……どちらにせよ、俺には想像も付かない話だ。
俺が不死怖い説を脳内で展開していると不意に火の鳥が核爆弾を投下した。
『ちなみに言うと、神斗様と星実様には不死の火が直撃してますのでこれで晴れて不死身と言うわけですねー、おめでとうございます!』
「――は!?」
こいつ俺をショック死させる気かよ!今不死ってやだなーって考えてたところじゃん!?
勿論、俺がそんな事考えてたなんて知らない火の鳥は「これが目当てだったのでしょう?」と言わんばかりに祝ってくる。殺すぞテメェ!!
「そんな、馬鹿な…!」
不死になったって事はハーレムを作ったところで何時かは皆が死に逝く様を見なきゃいけないって事だろ?……ああ、でも案外悪くないかもしれない。愛した女の最後を見届けるのは。
それ程ショックでもなくなった俺は普通に立ち上がって何時の間にか手離していた星実を持ち上げた。長い話に飽きたのか星実は暢気に眠っている。取り敢えず包帯でぐるぐる巻きにしてやった。
そう言えば兎もどきもいなくなってるな。今度会ったら血祭りにあげてやる。
「……さ、行くか。目指すはギルド、ニャンニャン!!」
『にゃんにゃん!!』
今のだけは純粋に可愛いと感じたのはここだけの話。と言うか火の鳥ってメスでいいんだよな?
そんなくだらない事を考えつつ、俺はマーガレス火山を後にした。
遂に下山しましたね!次回、リベンジニャンニャン!お楽しみに!!