目醒め
大変!気付いたらこんなにも期間が!?
最近仕事が終わったらすぐに寝入ったりしていたので中々投稿出来ませんでした。
◇
「もう終わり?そんなんじゃ聖獣にも勝てないわよ?」
そんな声を鈍い聴覚が拾った。
ああ、確かにそうだ。この程度じゃ遠く及ばない。聖獣にも、レーカにも。
ならどうすればいい?何をすれば俺は勝てる?
「――ああ、そうか」
考えてみれば簡単な事だった。この内から溢れ出す殺意の奔流に身を任せてしまえば、生死の有無を気にしなくて済む。力の制限なんて必要無い。後の事はその時に考えればいい。
今は、全身全霊で目の前の女を殺す。殺してしまうかも、なんて甘えはもう捨ててしまえ。
「深く考える必要は、ないんだな」
思い出せ。俺は今、異世界にいるんだぞ。元いた世界とは世界観もルールも別物だ。
なら、もういいよな?縛られるのはもう懲り懲りなんだよ。
「じゃあ、もう終わりにしましょうか」
何時の間にか仰向けに倒れる俺の頭元に来ていた星実が頭部を潰さんと足を踏み降ろした。殺意たけぇなこいつ!
ギリギリでその足を受け止め、俺は口角を上げる。さあ、ここからはショータイムの始まりだ。
「へぇ、まだそんな力残ってたの」
「おいおい、勘違いしてんじゃねえよ。俺はまだ、微塵も本気なんざ出してねぇ!!」
肉が潰れ、骨が砕ける音が聞こえる。握り締めた拳が星実の足をグチャグチャにしてしまった音だ。
「あら……あらあらあら、ふふふっ」
「何笑ってんだ、よっ!!」
倒れた姿勢のまま、星実を放り投げる。投げる際に握っていた星実の足からブチブチッと音が聞こえたけどこの際どうでもいい。しかし何だ、やけに余裕そうに見えた。
俺は立ち上がって服に付いた汚れを払う。そして視線を投げた星実の方へ。
「これよ、こんなスリルを求めてたのよ…!」
「スリル、だ?」
「そう、スリル!だって、最高じゃない!?命の奪い合いって!!」
星実は笑顔だった。心の底から、嬉々としているのが見て分かった。
「否定はしねえよ。けどな、1つ間違えてんだよ…」
間違いも間違い、大間違いだ。審査員が10人いるとすればその全員が×を掲げるレベルで。
「これは命の奪い合いでも殺し合いでもねえ!」
両手を広げて狂気に酔う。湧き出すありとあらゆる感情は全て殺意へと変換されて俺の力となる。
「――俺がテメェに行う、一方的な殺しだ」
「あ、ははは……!!良いじゃない、良いじゃない!楽しくなってきたわ…!!」
潰れた足なんて気にせず興奮を露にする星実の瞳が蒼く煌めく。みるみる再生していく足を見るに、覚醒か何かか。
俺もベルゼギヌンテを手元に呼び寄せて力を解放する。出し惜しみはしない。ここで必ず仕留めてみせる。
「行くぜぇ……簡単に終わるんじゃねぇぞぉぉぉぉ!!」
ベルゼギヌンテを片手に天目掛けて咆えると、後方のただの背景と化していた火山は火を噴いた。地を揺るがす咆哮に火山が活発化したんだろう。
お互い、得物を構えてただ命を屠る為に神経を研ぎ澄ます。
「殺戮…」
「開始っ!!」
命を賭けた戦いが幕を上げた。
ゆるちてほちぃ。