人殺し勇者
失便回避の為に何度も体勢を変えながら描いてました。
◇
「お前勇者召喚されてたんじゃないのか!?まさかお前も巻き込まれた口じゃねえだろうな!」
「それは深読みし過ぎよ。確かに私は勇者召喚されたわ」
「なのに何で……ってまあその話をする前に上がって来いよ!」
見下ろしながら話すのは結構苦手なタイプなんだよ。物理的にしんどい。
「じゃあお構いなく」
身軽に飛び上がった星実がスタッと俺の背後で着地する。ちょっと軽く飛んだにしては飛び過ぎてない?
「……さて、何処から話せばいいかしら?」
「召喚されてから現在に至るまでの経緯をなるべく簡潔にお願い」
「勇者辞めさせられたから暇潰しにここに来た」
「ごめんやっぱなるべく詳しく」
思った以上に簡潔過ぎて逆に詳しく聞きたくなる様な言い方をしてくるとは中々の策士。俺は理解を受け付けない脳を叱咤して耳を傾けた。
「そうね、まず勇者として召喚された私は最初に王道も良いところの姫様に世界を救うように頼まれたわ」
「やっぱ出てくんのか、ビッチ姫!」
面白いくらいに王道通りでテンションが上がった俺は目を光らせた。実物を見れば嫌悪感を抱くんだろうけど話で聞くと寧ろ見てみたくもなる。異世界とは本当に不思議だ。
異世界に限った話じゃないけどな。
「取り敢えず面白そうだったからオーケー出したんだけどその後の謁見の間って言うの?あそこでガチムチ男が認められないだの女に出来る筈がないだの好き放題抜かしてくれやがったのよ」
「ちょっと斜め上行き始めたなー?」
そんな大事な事面白い基準で判断するなよ!ガチムチ男に見透かされてんじゃねえか!
「それで姫様と王様の判断で私が勇者に相応しいかはガチムチ男との決闘で見極める事になったんだけど…」
「どうした?」
「……思った以上に私の力が強大過ぎてガチムチ男、死んじゃったのよね」
「それは……ごしゅ…っ!?」
異世界勇者デビューですぐ人を殺めてしまった星実に同情し、ご愁傷様と声を掛けようとして、俺は息を呑んだ。
笑っていた。顔を俯かせているものだから悔やみや哀しみに苛まれているのかと思いきや、口角を吊り上げて星実は笑っていた。
それは純粋な笑顔ではなく、間違いなく狂気そのものだった。
「お前……!」
「おかしいのは分かってる。でも、殺ってみて、凄く興奮したのは、間違いなく私の本性なのよ」
掛ける言葉は出てこなかった。いや、見つからなかったに等しい。俺はこう言う時、どう言う言葉を掛けるべきなのかを知らない。
「そこも見透かされちゃったんでしょうね。人殺し-、悪魔ー、似非勇者ー、だなんて言ってそこにいた人達の総意で私は追放されたってわけ」
「追放されて、暇になったからここまで来た、と?」
「そうなるわね。だってここ聖獣がいるんでしょ?」
「らしいけど……よく分かったな?俺はお前が情報収集しそうに見えないんだけど」
「世界の意思ってやつ?あれとリンクしてたら検索って言う検索エンジン紛いな能力使えるらしいわよ」
「世界の意思とリンク?……ああ、何か身に覚えあるぞ」
思い出した。フェスと戦う時に世界と繋がった感じがしたのを。あれがもし世界の意思なら、俺にもその能力が使える筈ですよ。
「って言うか何でそんな事知ってんだよ?」
「召喚される直前に世界の意思と会ったから?」
「俺に疑問ぶつけられても…」
機会があれば検索とやらを試してみよう。使えるなら結構便利に違いない。
「それより、アナタはここで何をしてるの?」
「俺も聖獣目当てで来たんだけど……多分今のままじゃ勝てないからここで修行してたんだ」
「へー」
「露骨にどうでもよさそうにするなよ!」
「んー、決めたわ。面白そうだしアナタと手合わせさせてもらうわ」
「しかも勝手に話進めるなし!!」
「そうと決まれば早速ファイトね!シュッ!シュッ!」
「聞いてねえ!!」
こうして、ほぼ強制的に俺と星実は戦う事になったのだった……まる。
汚くてすみません。描く事がないんです。それなら描くなって話ですけど描かないと落ち着かないんです。すみません。謝って済む問題でもありませんがそれでも謝罪したかったんです。ああっ!(失便)