魔法陣
童心を思い出しながら描きます、なろう初の俺TUEEEE系です。
この作品は現在執筆中の「俺と財布の世界管理」に登場するキャラ、設定などの元ネタに近いものですので気になった方は読んでみてもらえれば嬉しい所存です。
◇
皆さんこんにちは!俺は我咲神斗です!
18歳、彼女無し。モテない黒髪男で右赤左黒のオッドアイで生まれた時から痛い奴です!
何故オッドアイなのかと言うと、詳しくは知らない。父は普通の日本人男性だけど母がアルビノって言うやつらしいからそれが関係しているのかもしれない的な事は聞いた事がある。
母は俺が物心ついた頃には既に亡くなっていたから写真でしか見た事がなかったけど、とても美人だったのは今でも鮮明に思い出せる。父からどれだけ自慢話を受けた事か。
俺を生んでくれた両親は美男美女だし良くしてくれたから誇りに思ってるけど、そんな両親から受け継いだこのオッドアイが原因で友達が出来ないのも事実だ。
気味が悪いのか、俺の周りに誰も近寄って来なかった。それでも物好きな奴らはいるようで、俺は何度か漫画の中に出て来そうな不良に絡まれたりしたけど右目を押さえて「くっ、離れろ…!右目の封印が…!」とか適当な事言うとビビって逃げてた。わりと強気で絡んでくる柄の悪い奴らって最後尻尾巻くよね。
かれこれしてる間に父も去年、とうとう亡くなってしまい、本格的にぼっちになってしまった俺だけども、現在そのオッドアイが原因で硬直してしまった女の子と対面していた。
黒髪ツインテールとは珍しい。この地域じゃ絶滅危惧種かと思っていたぜ。
「おーい!大丈夫ー?」
取り敢えず目の前で手を振ってみる。反応無し。
仕方がない、こんなところで放置しておくのも悪い。負ぶって家まで送ってやるか。
背負っても我に戻る様子もない女の子の家を探すべく、その辺を彷徨き始めた俺だけど、数分程して重大な事に気付く。
「って名前も知らないから家もわっかんねぇ!誰この子!?どちら様ー!?」
これだけ騒いでもビクともしないとはまさか石化の呪いでも掛けられているのではなかろうか?
そうだとしたらまさしく石化の呪いを掛けたのは俺って事になるんだけどね!もしかしてとうとうおふざけじゃないモノホンの能力開花しちゃった?しちゃったの?
さて、馬鹿な事考えてないで本格的にどうしようものか。名前が分からないのは家を探すのにも致命的だ。
近くの公園のベンチまで移動して女の子を座らせた俺は少しの間顎に手を当ててその辺ウロチョロしてみる。動いた方が何かを考えるのに適している気がする!予感!
「あ、そうだ!この子の持ち物に名前とか書いてあるかもしれない!」
女の子、ましてや知らない人の持ち物を漁るのには抵抗があるけどこの際どうにでもなれ!
俺はまず、女の子が来ているYシャツの胸ポケットに手を伸ばした。端から見ればこれ完全にセクハラだろうなーなどと考えているとそこに!
「マイシスターに何晒してるのアナタ!!」
突然左側面から飛来してきた謎の女の子!死角で全く気付いていなかった俺は為す術もなく横腹の弱いところにクリーンヒット、炸裂したドロップキックにより飛ぶ!イタイ!
「いってて…お前!何するんだよ!?」
「それはこっちの台詞!私の妹に手を出しておいてその態度は何?もっと蹴って欲しいの?」
「俺はドMじゃねえ!それにまだ手出してないし!」
「まだって事はやっぱり手出そうとしてたんじゃない」
「それは誤解だ!この子が急に動かなくなったから家まで送ってやろうって思って、それで何か名前が書かれた物を探してたんだよ!」
だからって胸から行った俺も悪かったけど。だって胸ポケットに紙入ってるんだもん。一応確認してみないとね?
醜い言い訳にしか聞こえないなこれ。そう思ってたら不意に女の子の姉が警戒を解いた。
「なーんだ。そんな事か。それじゃあ仕方ないか。でも紛らわしい事した罰として特大ミックスパフェ奢ってね」
「奢らねぇよ」
その後、結局奢る事になった俺はやっと我に戻った女の子、神城月奈とその姉、神城星実と共にパフェを完食し、せっかくだからと神城家まで来ていた。
2400とか特大ミックスパフェ高すぎる!美味しかったけど。
「で、でけえ…!」
神城家は豪邸だった。もう1つ1つの装飾が高価な物だって叫んでる。感想、すごい、でかい。
「では私、さきにお茶の用意してきますので!お姉ちゃん、案内よろしくね?」
「分かったわ」
月奈は颯爽と豪邸の中に姿を消してしまった。
へ、へへ!足が竦んでここから動けねえや!何か壊したらどうしよう…貯金で足りるかな?
「どう?大きいでしょ」
「あ、ああ!」
凄すぎて単純な感想しか出せそうにないから適当に返事をしておく。そうして改めて豪邸を見渡した時、俺は不意に視界の端で不可解な物を発見した。
「あ、あれ…?さっきあんなのあったか…?」
「何が―――って魔法陣!?」
もしかして近所の子供の悪戯か?俺の近所にもいるぞ。チョークか何かで地面に落描きしてる奴。ここに生息する名付けて楽餓鬼は瞬時に魔法陣すら描いてしまう程のやり手なんだろう!
そんな筈ない。分かってるけど頭が混乱してアホみたいな事を考えてしまう。何時もだけど。
「あ、あー!あーっ!!もうこんな時間だー!帰らなきゃー!」
取り敢えず言い訳を作ってその場から逃げようとするけど失敗する。星実の絶対に逃がさないと言う眼差しと、襟を掴まれた事が原因で逃げる事が出来なかった。
離せ!僕おうちかえる!!
「逃がさない」
「逃がして!!」
そうしているうちに魔法陣は俺達の足下へと到達してしまい、光った。眩しいから光るの止めろ!
「もう駄目だ……こんなの逃げられっこない……!」
「死なば諸共よ!ちょっと面白くなってきたしちょっとだけ、ちょっとだけ体験」
「消えた!?ちょっとま」
お互いに最後まで台詞を言える事なく、魔法陣に吸い込まれた。落下にも近い感じだ。暗い暗い空間をただただ落ちていく。
幾ら何でも暗すぎでしょ!僕がもし暗所恐怖症だったらどうするつもりだったんですか!
心の中で文句を垂れつつも、既に俺の本能がこの先に待ってるであろう王道展開に心躍らせている。あの場では嫌がる素振りを見せたけど案外満更でもなかったんだ。
今でも戻りたい願望なんて微塵もありゃしない。そこで初めて気付いた。
「……ああ、そっか」
――知り合いのいない、退屈な世界に未練とか無かったんだわ。
まだ軽い…私はまだ痛く描ける筈!!