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一日目・昼4

昼食を終えて、皆がバラバラにソファに座っていた。

必然的に仲が良い同士が固まって座っているので、倫子は要の隣に居た。だが、反対側の隣には、真司、博正、彰とまとまっていて、もはやこの5人は固定のようになっていた。

彰が、向こう隣りに居る啓太に話しかけた。

「君はどう思う?君の友達の中にも、人狼か妖狐が居る可能性があるわけだが。」

啓太は、急に話しかけられて戸惑った顔をした。その隣りに座っていた、昭弘が怒ったように言った。

「オレ達は相手を裏切ったりしない。人狼は他に居る前提で話してる。」

その昭弘の向こう隣りに居る賢治も、戸惑いながらも頷いた。

「オレも、そう思う。昨日自分の役職が決まってからも、何度も話をしたけど三人共変わった様子はなかったし、人狼なんか引いてたら落ち着いていられなかったと思うから。」

彰は、そんな三人を見て、苦笑した。嘲笑するようにも見える。

「信じてたら寝首を掻かれるぞ。人狼ったって、昨日は実感が無かっただけかもしれない。それに、人狼は襲撃されることが無いし吊りさえ回避出来たら生き残れるんだ。だから、村人より落ち着いていられるのも確かだよ。間違っても、もし自分が役職持ちだったら、お互いに教え合ったりしない方がいいぞ。これは、オレの忠告だがな。」

すると賢治が、明らかに動揺した顔をした。要は、それを見て直感した…もしかして、もう教え合ってしまったのか?

彰は、それを見て眉を寄せた。

「…だったら、私に感謝するんだな。この話をしていたから、君が明日襲撃されていたら、私は間違いなく君の仲間の中から吊りを提案して、尚且つ残った一人をその夜占う。だからこの中に人狼が居たら、君を襲撃することが出来ない。ま、それを気取られないために噛む可能性もあるがね。人狼が他に居たらそれをさせるために君を襲撃することも考えられるし。」

賢治は、怯えたように他の二人を見た。二人は、首を振った。

「違う、人狼じゃない!」と、昭弘が彰を見た。「なんだ、あんたこそオレ達を仲間割れさせようとしている人狼なんじゃないのか!」

彰は、じっと昭弘を見た。その目は、どこか好戦的でもあり、相手を射抜くようでもあった。

「…なるほど。参考になった。」と、ソファにそっくり返った。「私は忠告をしただけだ。他にもボソボソと皆に聞こえないように話している者達が居るが、そんなことをしていたら、人狼同士の会話かと間違われて吊り対象になるぞ。それが嫌なら、紛らわしいことはやめて堂々と話すんだ。村人なら、もっと情報を村に落とせ。人狼は仲間が誰か知っている。村人には、誰が仲間か分からない。それだけ不利なのだ。それを自覚して、しっかり協力しないと村は負ける。」

話をしていた者達の声が、ピタと止まった。痛いほどの静寂の中、要が賢治を見た。

「賢治さん、役職持ちなの?」

賢治は、渋々頷いた。

「霊能者だ。他の二人は村だって聞いてる。オレは二人を信頼してたから、話を聞いて欲しくて、それで役職を教えたんだ。カードは見せてない。」

要は、頷いた。

「わかった。じゃあ狩人の護衛の参考にもなるから、ここで公開しておこう。でも、もう一人は明日出て欲しい。狩人が迷うからね。」

全員が、ゆっくりと頷いた。要は、息をついて皆を見た。

「じゃあ、ここで昼の議論をしようか。夕方は夕方で行うけど、せっかくみんな揃ってるわけだし。じゃあ、オレから考えたことを話すね。意見があったら言って欲しい。まず、決まっていることは護衛は狩人に任せる。それから、思ったんだけど、オレ達には腕輪があるよね。だから、狩人はこの後一旦部屋へみんな帰ってもらうんだけど、その時にオレの腕輪に連絡が欲しいんだ。」それには、彰も真司も博正も驚いた顔をした。要は、続けた。「なぜなら、投票対象から外すから。オレは、今夜グレーから四人、みんなの意見を聞いて指定する。この中から投票してもらうって形にするんだ。オレの片割れも、もちろん外す。みんなに知られないように。」

博正が、納得したように頷いた。

「そうだな。共有者になら知られても大丈夫だろう。むしろ教えておいた方がいい。無駄な議論をする必要がないから。」

要は、頷いた。

「それから、占い師の占い先はオレが指定する。もちろん、占い師達の意見も聞くし、どうしても占いたい対象が居るならそっちでもいいけど、呪殺のことを考えて基本、占い師一人に付き投票対象外から二人を指定するから。その中から占ってほしい。誰で呪殺が起こったのか正確に知るためにも、協力して欲しい。」

圭一も、彰もすぐに頷く。雅江だけが、要の視線を受けてから、急いで頷いた。要は続けた。

「オレが噛まれたら、もう一人の共有者が出て来るから、一緒に考えて欲しい。情報は全部共有してるから、もう一人の共有者も問題なく場を動かして行けると思う。」

真司が、言った。

「確かに共有は狼にとっても噛みやすい場所だからな。だがそれだからこそ、守られやすい位置でもある。大丈夫だろう。」

要は、頷いた。

「それで、さっきから話してない人が多いから、端から順番にどんな風に思ってるのか言って行って欲しいな。ええっと、倫子から順番に。」

要は、すぐ隣の倫子に言った。倫子は、自分に話が振られると思っていなかったようで、驚いたような顔をしたが言った。

「…占い師の真贋はまだついてないわ。でも、圭一さんはなんとなく本物じゃないかと思うの。昨日だってあんなに取り乱していたし、騙りに出て来れるほど強い性格の人じゃないような気がする…他は、分からないわ。」

要は、頷いてその向こうに座っている留美子に促した。

「じゃあ…ええっと、留美子さんは?」

留美子は、硬い表情で言った。

「誰とも親しく話してないし、私は唯一ここで知り合いが居ないから、情報なんてないわ。でも、占い師は絶対騙りが出てるんだから、ローラーしてもいいんじゃないかって思った。そうでなくても、真贋を早く見極められたら安心できるのにって。今回は狐も居るし、何かと占い師頼みでしょう。本物を大事にするためにも、騙りをさっさと探し出すことに全力を挙げるべきだと思う。以上よ。」

要はその隣りの圭一と雅江を飛ばして、芽衣を見た。芽衣は、真紀と友達の子だったが、背が小さく、その上今は怯えていてさらに小さくなっているので、子供のように見えた。

「あの…私はよくわかりません。真紀と話していて、占い師の中に偽物が何人居るのかなって不安ですけど。留美子さんが言う通り、本物かどうか確かめる方法があるなら、早く分かって欲しいです。怪しい人とか、今は全くわかりません。」

要は、気の毒になって言った。

「占い師の真贋は、霊能者とのつながりとか、あと確実なのが呪殺だね。呪殺が起これば、確実に占い師だと分かる。だから、すぐには分からないんだ。」

芽衣は、微かに震えながら頷いた。隣りの真紀が、そんな芽衣を庇いながら言った。

「占い師のことは今日は吊らないので私は話しませんけど、さっきの彰さんと向こうの三人のやり取りを聞いていて、他にもし、仲間内で役職を言い合っているような人が居たら、言うべきだと思います。その人が噛まれた時の、情報になると思うから。でも、他にあるとしたら狩人ともう一人の霊能者だけですけど、それでも言ってしまっていたら、ここで出て欲しいなと思います。」

回りを見回したが、みんな他の人達のことを同じように見るだけで、誰も手を上げなかった。真紀は、ため息をついて頷いた。

「ありがとうございます。あの、以上です。」

その隣りからは、スタッフだった。田畑が言った。

「オレは信じているのは要くんだけだ。後は占い師ですら信じられない。まあ、オレの右腕だからってのもあるけど、裕則は信じてるが…狐だって、全く分からないよ。大したことを言えないですまないな。」

すると、隣りの裕則が言った。

「それは、こんな状況なら分からなくて当然だと思いますよ。オレも、本当に分からないんです。分かるのは、今居るスタッフ達はみんないい子で、変な役職を持ってないって思うぐらいかな。嘘をついてるような感じじゃないんです。」

隣りの、亜希子が目を潤ませて裕則を見た。

「私も、そう思います!昨日からバイトの研修で会ったばかりだったけど、みんな仲良くしてくれて、人狼なんか引いてたら、きっと教えてくれるような人達ばっかりだから。みんな、村人です!」

真澄が、怯えてあまり力の無い文香を気遣いながら、言った。

「私も、そう思います。でも、確かにさっき彰さんが言ったように、頭から信用しちゃいけないのは分かってるんですけど…。本当にランダムで、誰が人狼を引いててもおかしくないんですから。」

文香は、小さく頷いた。

「私もそう思って…だから、みんなが怖くて仕方がないんです。」

誰も、信用していないということだろう。

要は、頷いてその隣りを見た。

「ぐるっと回って来たので、ええっと、賢治さんは何か言いたいことはありますか?」

賢治は、首を振った。

「いいえ。占いの師の真贋も分からないし、怪しい人も居ない。オレは自分が霊能者ってこと以外は、何もわかりませんから。」

要は、その隣りを見た。

「では、昭弘さん。」

昭弘は、頷いた。言いたいことが、山ほどあるらしい。

「オレは、彰さんが怪しいと思う!」昭弘は、言い切った。「オレ達は、役職のことは誰にも言わずに隠して置こうとしていたんだ。これで、賢治が噛まれる率が高くなったじゃないか。オレ達の間の信頼も、崩れてしまう。場を混乱させるなんて、狼か人外しかしないだろう。役職者を露出させるなんて、普通の考えだったらしないからな。オレは占い師から吊ったっていいぐらいだと思ってる。」

こっち隣りの、啓太が慌てて言った。

「昭弘、言い過ぎだよ!それでも役職は確かに言わない方がいいとオレは思ったんだ。だから、お前がオレは村人だけどって聞いて来た時、オレは言わない方がいいんじゃないかって言ったじゃないか。」

昭弘が、啓太を見た言った。

「お前までオレが怪しいとかいうのかよ!」

啓太は、首を振った。

「お前が怪しいなんて言ってない!だけど、余計なことをしない方がいいってことなんだよ!村人なんだから、下手な情報を聞き出したりしない方がいいんだって。共有に任せよう!お前だって、オレがもし人狼引いてたらどうするんだよ!」

昭弘は、啓太を見た。

「お前は人狼じゃない!」

啓太は、頷いた。

「そうだよ、オレは人狼じゃないよ!だから、落ち着けって言ってるんだ!」

昭弘は、視線を感じてハッとして要を見た。要は、じっと黙って冷静にこちらを観察していた。その目は、まるで何かの実験動物でも見る研究者のようだった。

思わずぞっと背筋に冷たい物が流れた昭弘は、黙って回りを見た。回りの誰もが、怯えたような、困惑したような目で自分を見ている。彰が、言った。

「…君はお喋りだな。沈黙が時に身を守ることもあるのに。」

昭弘は、首を振って立ち上がった。

「違う!オレは人狼じゃない!なんでそんな目で見るんだよ!」

要は、首を振った。

「そんなこと言ってないじゃないですか。夜の投票まで、あなたも誰に投票するか考えておいてください。確かにあなたは今の発言で不利ですけど、5時に集まった時に自分の白要素を言えたらいいんですよ。それでみんなが納得したら、吊られずに済みますから。しっかり、考えて来てください。」と、要は立ち上がった。「じゃあ、狩人は部屋に帰ったらオレに腕輪から連絡をください。みんな、一度部屋へ帰りましょう。」

そうして、みんな一斉に部屋へ向かって歩き出した。

愕然としたまま棒立ちになっていた昭弘は、啓太と賢治に気遣われながら、部屋へと歩いて行ったのだった。

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