一日目・昼2
圭一が、要を見て驚愕の表情をした。失望にも見えなくはない。博正が、頷いた。
「要が共有者か。相方は生きてるんだな。」
要は、頷いた。
「生きてます。もし対抗したい人が居るなら、今出てください。この後出ても、誰も信じませんから。」
円になって座っているのだが、皆が皆他の人の顔色をうかがうだけで、誰も手を上げなかった。それを見た真司が、満足げに頷いた。
「よし、じゃあ要が共有者だ。じゃあ、進行は要に任せようか。」
圭一が、焦ったような身を乗り出した。
「待ってくれ!この子は、まだ高校生ぐらいじゃないか。よりによって一番年下の子が共有者だなんて、相方はなぜこの子の方を出したんだ。自分が生き残るためか?」
真司が、首を振った。
「共有者同士が話し合って決めたんだろう。オレは、妥当な判断だと思う。要は、ちょっとの間しか一緒に居ないが話すと驚くほど頭が切れるのが分かる。こいつが共有なら、狼にとっては結構やりにくいと思うけどな。」
彰も、頷いた。
「結構細かいところまで見ているし、気が付いている。私は自分の頭には自信があるが、この子は同じように考えているように見える。もしかしたら、君より切れる子かもしれないぞ、圭一。」
圭一は、彰を睨んだ。
「君に圭一と呼ばれる筋合いはない。」
彰は、フッと笑った。
「そうか。私なりに親しみを込めたつもりだったが、なら君のことは三村と呼ぼうか。奥さんと被るかと思ってね。」
圭一は、ハッと隣りの雅江を見た。雅江は、不安げに圭一を見上げている。圭一は、居心地悪そうに椅子に座り直した。
「ああ…そういうことなら、それでいい。話をややこしくするつもりはないからな。」
彰は、頷いて要を見た。
「それで、君はどうやって進行するつもりだ、要?」
要は、頷いて皆を見た。
「まず、今情報を持っているのは占い師なんです。占い師の方々は、出て来てくれませんか。」
それには、啓太が言った。
「だが、狩人は一人だろう。占い師と共有者が出たら、どちらかが噛まれる。それに、占い師は二人居るし、守り切れないかもしれない。」
要は、首を振った。
「普通村ならそうかもしれない。でも、今回は妖狐が二人も居るんです。人狼にとっては、村人よりそっちの方が厄介でしょう。だから、すぐには噛みません。呪殺される方が、人狼にとってはまだ狐が居るかもと博打を打つより簡単なんだ。噛みを無駄にすることもなくなるし、妖狐を先に始末したいと考えるでしょう。だから、占い師は出ても大丈夫です。」
しばらく、皆が沈黙する。今の話を考えているのだろう。だが、すぐに彰が言った。
「その通りだ。だから私は始めから出て来るつもりだった。オレは、占い師だ。」
すると、圭一が驚いたような顔をした。
「え、私も占い師なんだが。」
要は、他の人達を見回した。
「他には?占い師だという人は居ませんか。」
雅江が、驚いたように圭一を見ている。そして、小声で圭一に言った。
「どうして、言ってくれなかったの?占い師だって。」
圭一は、チラと雅江を見た。
「誰も信用出来ないと言ったじゃないか。お前だって、人狼ではないとは言えない。」
雅江は、ショックを受けた顔をしたが、表情を引き締めて、要の方を見た。
「私が、占い師です。他の二人のうち、どちらが仲間の占い師なのかわかりませんけど、どちらかは嘘をついています。」
皆が、息を飲んだ。圭一は、驚愕の表情で雅江を見ている。彰が、面白そうにそれを見て言った。
「ほう。夫婦で占い師とは。そんな偶然が有り得るのかな?ま、私は自分の真を知っているから、どっちかが嘘をついているのは分かっているがね。」
要は、それでも動じる様子もなく、頷いた。
「他には?居ませんね。」と、皆に念を押してから、宣言した。「では、占い師候補はこの三人で締め切ります。博正さん、すみませんが、それぞれの占い結果をメモしてもらっていいですか。」
博正は、頷いてペンを手に取った。
「いつでもやってくれ。」
要は、彰を見た。
「彰さんは、誰を占って結果はどうでしたか。」
彰は、頷いて圭一を指した。
「昨日やたら突っかかって来た圭一を占って白、つまり人狼ではないと出た。からかったりしたが、私なりの愛情表現だったのだよ。人だと知っているからな。つまり私視点、圭一は狂信者か真占い師のどちらかだ。」
要は、博正を見た。博正は、せっせとそれをメモしている。次に、要は圭一を見た。
「では圭一さんはどうでしょうか。」
圭一は、まだためらったまま言った。
「オレは、そっちの恰幅のいい19番の田畑さんを。皆の食事を作る人だし、昨日我々はみんな食事の最中に気を失ったから、てっきり何か食事に盛られたんだと思ったんだ。だが、人狼ではなかった。」
要は、また博正を確認し、しっかりメモっているのを確認してから、雅江を見た。
「あなたは?雅江さん。」
雅江は、おずおずと言った。
「私は、そこの4番の人を。昨日、そちらの彰さんと一緒に結構冷静に物事を見ていたから、始めからこれを知っていた人狼なのかもと思って。彰さんと迷ったんですけど、そちらにしました。人狼ではありませんでした。」
みんなが、うんうんと頷いている。出された白が、皆の納得の行く者だったのだろう。要は、その結果を見ながら、考え込むような顔をした。
「…そうですね。見る限り、予想出来た占い先で、それぞれの理由も納得が行くものでした。今のところ、誰が偽物だとは断定できません。なので、ローラー…順番に占い師を吊るのは、避けたいと思っていますが、どうでしょうか。」
賢治が、口を挟んだ。
「占い師は残していいと思う。霊能者は潜伏させて様子を見るか。」
しかし、要はまだ占い結果を見ながら、首を振った。
「霊能者は二人居ます。もし夜のうちに襲撃を受けたとしても、一人残る。ここで出して、もし真が二人出て守り切れなかったとしても、もう一人が残るんです。潜伏させてしまったら、最悪吊りで一人、襲撃で一人失う可能性も無いわけじゃない。出してもいいかと思いますが、どうでしょうか。」
博正が、首を振った。
「言いたいことは分かるが、そうなると狩人が迷うことになるぞ。お前の噛まれる率が上がる。いいのか。」
要は、しっかりとした顔で、すぐに頷いた。
「共有者はもう一人居ます。オレが噛まれても、残る。だから、霊能者を一人でも残せる方へ賭けた方がいいんじゃないかと思ったんです。」
彰が、首を振った。
「霊能者を吊ってしまう可能性も、その上たまたま潜伏していた霊能者を人狼が噛む可能性も低い。二人居る、君が言った通り。潜伏してても一人ぐらい明日まで残るさ。君を失うリスクの方が、村にとっては脅威だと思うがね。ここは霊能者を明日まで潜伏させて、明日結果を聞くことにしよう。一斉に結果を言わせれば、偽が騙るのも難しいだろう。明日にしよう。危ない橋を渡ることはない。」
要は、じっと眉を寄せて考えている。真司は、息をついた。
「で、どうするんだ。それならグレラン(グレーランダム=グレーをランダムに処刑)になるな。しかしこの人数だ、グレーは限りなく多いぞ。共有者の片割れが出てないしグレーは村目線今、11人居る。指定するか、要?」
要は、首を振った。
「今、この人だと決められないよ。何しろ、何も話してない人が多すぎるから。夜6時の投票までまだたっぷり時間がある。みんなで各々観察し合って、5時にもう一度話し合いましょう。ええっと、遅れたら大変だし、応接室で。そこで最終的に話し合って、今日の吊りを決めたいと思います。」
博正が息をついた。
「もっと情報が欲しいな。これだと村人に当たる確率の方が高いじゃないか。占い指定はするのか?」
要は、それには頷いた。
「する。でないと呪殺が起こった時、真占い師が特定出来ないから。役欠けのことも考えておかないといけない。今吊縄は8本。人外は7人。狂信者は放って置いても6人は確実に吊らなきゃならない。狼探しに専念したいから、狐は、出来たら呪殺して欲しいしね。偶数進行だから、狩人が一回でも護衛成功してくれたら、一本増えるんだけどな。無駄に村人を吊ることはしたくないな…。」
要は、考え込んだ。ここまでで、何かおかしいことは無かっただろうか。不自然なこととか、誰が誰に疑いを向けてるとか…。
そう思うと、昨日の真紀の言葉を思い出した。
『雅江さんが左方向を見てた。』
要は、顔を上げた。そして、雅江を見る。雅江は、驚いたように要を見返した。
「な、なに?」
要は、そのままじっと考えながら、首を振った。
「いえ、何でも。ただ顔を上げただけです。」
要は、思った。真紀がいろいろ見ていたはずだ。今の話し合いで、誰がどんな風だったかとか。一度聞いてみよう。占い師の真贋も気になるところだ。それも考え合わせて、今日の吊り先を決めよう!




