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七日目・朝そして終了

彰は、6時ちょうどにドアを開いて廊下へ出た。

もはや、生きているのは数人のはずだ。昨日の時点で、残っていたのは博正、真司、要、賢治、田畑、啓太、そして彰自身だ。

昨日の襲撃が間違いなく要を狙っていると思われたので、彰が今朝知りたかったのは、博正の生死だった。

だが、8のドアは開かれて、博正は出て来た。

「生きてたのが残念か?だが、オレは狐じゃないからな。」

彰の顔を見て、博正はそう言って歪んだ笑いを浮かべた。真司も田畑も賢治も無言で立ち、今ここに居ないのは、要と、啓太だった。

やはり要か。

彰は、そうなると早めに処置をさせようとドアノブに手を掛けて勢いよく開くと、ベッドの上では要が、すやすやと眠っていた。

「まるで呪殺みたいな死体だな。」

博正が、後ろから言う。彰が、腕を軽く上げてそれを鬱陶しそうに制し、そして、要に歩み寄った。

死体を山ほど見て来た彰だが、要の顔には死の様子が無かった。

「…要?」

彰がまさかと呼びかけると、要はううん、と唸った。それを見た博正と真司、田畑と賢治は、驚いて後ろへと仰け反った。

「…あれ?寝てた?なんだろ、何だかもう終わりだと思ったら気が抜けちゃって、めっちゃ寝たような…。」

要は、起き上がて皆が引きつった顔で居るのを見て、顔をしかめた。

「ごめんなさい、だからそんな顔で責めないでよ。あの、それで襲撃は?」

彰が、ハッと我に返って言った。

「みんな無事だ。」と、顔を上げた。「啓太の部屋へ。」

皆が、ぞろぞろと要の部屋を出て啓太の18番の部屋へと向かう。要も、ジャージのまま急いで後を追った。


啓太の部屋では、啓太が力なくベッドへと突っ伏して倒れているのが発見された。

部屋のモニターには、「№18は、ルール違反により追放されました」と表示されている。それを見て、博正が言った。

「…こいつは、最後に無駄な噛みを避けたんだな。どうせ吊られるなら、襲撃せずに死のうと思ったんだ。」

真司が、愁傷な顔で頷いた。

「誰だって、人狼なんかやりたくないさ。もっというと、こいつらが毎晩誰かを殺していたからこそ、みんな死ななかったのかもしれないぞ。殺さないと、ゲームは進まない。そうなると、皆殺しっていうな。」

彰が、ため息を付いた。

「確かに、こいつが死んだ時点でゲームは終わり、他の者達にお咎めもないだろう。だから、そう判断したのか。」と、フーンと顎に手をやって考え込むような顔をした。「…確かに面白い。そんな風に考えるか。」

要が、背の高い皆に囲まれた状態で、後ろから言った。

「じゃあ、終わったんでしょう?もう、帰れるのかな。村が勝利でしょう?」

彰は、苦笑して頷いた。

「そうだな。後は、ゲームマスター次第だ。だが、確実に帰れると思うぞ。」

要は、嬉しそうな顔をしたが、一点、急に暗い顔になった。

「でも…死んじゃったみんなは…。」

すると、腕輪から声が響いた。

「お疲れ様でした。村人陣営の勝利です。それでは、この後の説明がございますので、皆さん、応接室へお越しください。」

そうして、皆は顔を見合わせてから、啓太を丁寧にベッドへと寝かせて、そして応接室へと向かって行ったのだった。



誰かが、一生懸命自分を呼んでいる。

真紀は、目を開いた。眩しい光が見える。

「おはよう、真紀さん。勝ったよ。」

聞き慣れた、声が聴こえた。真紀は、その声に絶大な信頼を寄せていたことを、瞬時に思い出した。

「…要くん?!」

真紀は、起き上がった。

そこは、大きな病院の一室だった。

たくさんのベッドがあり、冗談ぐらいの人が並んでいる。端から順に、知らない顔などなかった。

そうだ、私船で人狼ゲームをさせられて。

「勝ったの?!要くん、私、生きてる。」

要は、頷いた。

「うん。もう大丈夫、心配ないから。でも、ちょっと面倒なことになってるけどね。」

真紀は、不安になってシーツを胸元で握りしめた。

「え?あの…帰して、くれないとか?」

要は、首を振った。

「いや、帰してくれるよ。でも、条件次第なんだ。」と、更に不安そうになった真紀に笑いかけた。「オレは、その条件を飲んだから、君を生き返らせることが出来たんだけど。そうでなかったら、帰してくれないところだったんだよ。そのまま、殺されちゃってかも。」

真紀は、ゴクリと唾を飲み込んだ。

「それって、どういうこと?」

要は、ベッドの端へと座ると、頷いた。

「説明するよ。でも、取り乱さないで聞いてね。」

真紀が頷いたのを見て、要は話し始めた。


ゲームが終わり、村人陣営の勝利が確定した時、要達生き残りは応接室へと集められた。

そこで、その責任者だという男の声を聴いた。男は、このクルーズを主催した張本人で、この船でのゲームを、それは楽しませてもらったと言った。

そうして、生き残った陣営にも、そうでない陣営にも、賞金を与える旨を知らされた。但し、この船は機関室の故障で流され、漂流していただけなのだとし、一切の口外は許されないということだった。

お金では黙らないと思っていた要だったが、死んだ者達の姿を、モニター越しに見せられたそうだ。

そして、その者達が今も確実に生きていて、それをこのまま返して欲しいのなら、この条件を飲め、と言われた。

飲まなければ、また殺される。

要も、他の皆も思ったらしい。もちろん、そこに生きている自分達も、恐らく殺されて消されてしまうだろう。

そうして、その条件を飲んだ。

要や他の生き残りは、次々に部屋へと戻って来る一度は死んだ者達を介抱しながら、海上保安庁の巡視船が見つけてくれる次の日まで、そのまま船に留まった。

その後、眠ったままの13人と、生き残りの自分達7名は、こうして病院に収容された。

だが、この病院もどうやらクルーズの黒幕の息が掛かった場所らしく、皆こうして不自然に同じ部屋へと収容されたのだと要は説明した。

「そんなわけで、ごめんね、勝手な判断で。」要は、すまなさそうに言った。「でも、生きててこその未来だと思うからさ。世間では、船の漂流事故だって知れ渡ってるみたいだし、みんな職場にも、学校にも言い訳は立つから、そっちは気にしなくていいよ。オレも、両親がさっき来て大騒ぎして帰って行った。君のご両親も、もうすぐ来ると思うけど。絶対、このことは言わないで。命あっての、だから。怖いよ、後からでも殺されるかもしれない。」

真紀は、身震いして頷いた。今、自分が生きているのすら奇跡な気がする…だいたい、あっちで笑ってる要のお姉さんだって、そっちでご飯食べてる芽衣だって、死んでたのを、確かに見た。

「…きっと、想像もつかない存在なんだろうね、ああいうことをしちゃう人達の集団って。私も、馬鹿じゃないから。分かってるよ。」

要は、微笑んだ。

「じゃあ、ご両親が来たみたいだ。ゆっくり話して。」

ドアから、両親が必死の表情でこっちへ向かって来る。真紀は、それを見て苦笑した。そんなに急がなくても…。

そして、あ、と要を見た。

「要くん、後で連絡先、教えてね。」

要は、驚いたような顔をしたが、笑って頷いた。

「うん。」

そうして、真紀は両親に挟まれて要どころではなくなってしまった。

要は、それを見てそっと病室を抜け出し、廊下を歩いて階段を上って行った。

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