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悪魔の囁き

作者: 冰通

ある所に一人の男のパイ職人がいました。


男は貧しいながらも30を手前にして数々のパイを作り上げ、細々とそれを売って生活していました。

これまでに独創的で美味しいパイを作る職人で、近所からはては遠い国の人も食べに来るほど美味しいパイを作る職人でした。


その男はとても研究熱心でパイ作りにこだわりを持っている人でした。


自ら新しいパイを作り美味しさを追求するそれは熱心なパイ職人でした。


ある日、新しいパイを作ろうと思い近所の市場へ向かいました。その男は何か新しいパイを作ろうと思ったときはいつも市場に行き、新しいパイの材料を考えていました。並んでいる食材を眺めてこれがいいか?あれと合わせてみようか?など男の頭の中では組み合わせを考えますがなかなか思いつきません。


その日は新しいパイを思いつかなかったので、家に帰って普通のパイを焼き、食べました。


次の日も男は市場へ向かい、新しいパイを考えますがアイデアが浮かびませんでした。その次の日も。また次の日も。


男は焦りました。

ここまで浮かばないことは初めてで、自分のパイ作りに対する自信にまだ何か足りないのか、という疑問を持つほどでした。


男は1日中新しいパイについて考えるようになりました。部屋に篭り、朝から晩まで考えていました。


ある日の夜、男は夢を見ました。

パイを作る夢です。

男には不思議とこれが夢であることが理解できました。


男は夢の中で、誰も食べたことのない美味しいパイを作り上げました。


これは美味しい。これが私の求めていたパイだ。


ふと、誰かの気配を自分の後ろに感じ振り返りました。


そこには知らない少年が立っていました。


黒髪の痩せ気味で自分より背の低い少年がこちらを見ていました。


するとその少年が話してきました。


「私は悪魔です。」


男は笑いました。


悪魔?そんなものいるはずがない。ああきっと私は疲れているんだ。


すると悪魔は


「あなたに一つだけ願い事を叶えて差し上げましょう。」


すると男は


そんな都合の良いことは無い。ああきっと私は新しいパイを作ることに急かされているんだ。なら早く夢から覚めてまた市場へ行って考えよう。


そう言うと、自分の視界がぼやけてきました。


ああ夢から覚めるんだ。



悪魔は言いました


「願うだけならタダですよ?」


と。



すると男は


なら世界で誰も食べたことのない美味しいパイを作りたい。1度食べたら他の料理や他のパイが不味いと感じるくらい美味いパイを。


と、心の中で呟きました。


悪魔は


「それが貴方の願いですね。分かりました。」


と言い、消えました。







目が覚めて、身仕度をして市場へ向かい並ぶ食材を眺めると男の頭に新しいパイが思いつきました。


こうしてはいられないと男は一目散に店に返り、新しいパイを作り始めました。


こうし新しく作ったパイを食べてみると確かに美味しい。そして露店で並べて売ってみると、飛ぶようにパイが売れていきました。




数ヵ月後


男はそれまでの間、新しいパイをどんどん作り出しては販売していました。

今までに無いくらいアイデアが思いつきます。


繁盛して彼はますます美味しいパイを作ろうと意気込みました。



ある日、お店にパタッと客が来なくなりました。


男は大いに悩みました。


なぜ来なくなったのか


そこで評判を聞いてみると驚くべきものでした。


皆、口をそろえてこういうのです。


パイが美味しくなくなった。


と。


そんなことはない!と男は憤慨して自分でパイを丹精込めて作りました。

男は今までで最高に美味いパイを作れたと満足げでした。

試食をしてもとても美味しかった。


それを切り分け、近所の人に試食してもらいました。


けれどやはり誰も美味いとは言いませんでした。



男は家に帰り、改めて余ったパイを食べました。
















味がありませんでした。

そして他のすべてのパイを食べても一切味が無くなってしまいました。


評判には続きがありました。


パイを食べた後、他の料理が全て不味くなってしまった。と。

悪魔は男の願いに対して


1度食べたらそのパイと同等それ以下の料理が不味くなる極上に美味いパイを作れるようにしました。

つまり、一番美味いを突き詰めてしまったので全てが不味くなってしまった。


最後の方で男が試食して美味かったのは、その美味さのパイを初めて試食したから。

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