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ある日、不思議な指輪を拾った

初投稿作品です。拙い文章ですが一読頂けたらと思います。

それは誰が作ったのであろうか。いや、そもそもいつから存在したのだろうか。


一見金でできた指輪に見えるが、実のところ何の変哲もない真鍮製の指輪である。

装飾も無く、宝石も付いていない。誰もが見ても、指輪というもの以上の価値を見出せないものである。


また、その指輪は…本来の役割、指に付けるという目的から見れば必要以上に大きかった。


だからであろうか、今まで誰もその指輪に興味を抱かなかった。幾多の時が流れる中で、幾多の人がそれに目を留めるもののそれを付けようとは思わなかった。他にもっと値打ちのある、付けるべき指輪がたくさんあるから。


その指輪の最後の持ち主は引っ越しの際に、それを見つけた。それが買ったものなのか、誰かからもらったものなのかもわからず、しばしその指輪を見つめた後にゴミ箱に捨てた。

引っ越しの際に出たゴミを纏めてゴミ捨て場に出す。そして、それが指輪の最後になるはずであった。


朝方、ゴミが収集される前に食事を得ようと、ゴミ捨て場を漁るカラスが光る物を見つける。光り物を集めるその習性から、カラスは巣に持ち帰ろうとする。


しかしながら、飛んでいる最中に誤って落としてしまう。拾いに戻ろうとするも、落としてしまったのは街中の道上。人通りもまばらにあり、しばし逡巡するもそのままゴミ捨て場に引き返す。

無くしたのは惜しいがそこまで必要なものでもない。ならばまだ間に合うであろうゴミ漁りを再開し、食事を得よう。


そんなカラスすらも興味を無くす指輪であり、そして今までの運命の通りにまた記憶に残ることなく消えていく。


これは、そんな指輪を偶然拾った、一人の男の話。





点野 丈(しめの じょう) はすこぶる機嫌が悪かった。


「くそったれが」


朝から踏んだり蹴ったりだ。朝っぱらから(ながる)に鬱陶しいくらいに絡まれてイライラし、授業でも何の嫌がらせかいきなりの抜き打ち小テストだ。

昼飯を食べようとしたら財布を忘れていることに気づくし、友人から金を借りて購買に行ったら既に売り切れ。

腹が立って帰りに借りた金でゲーセンでウさ晴らししようとしたら格ゲーで返り討ち。


やってられるかと毒づきながら、ポケットに手を突っ込んでイライラと家へと向かっていたら、地面にこすり付けるように歩いていた靴先がチャリっと何かを踏む。


「ん、…指輪?」


拾い上げると、それは指輪と呼ぶには一回り大きすぎる、リング状の金属だった。所々汚れてはいるが、金色の光沢を放っている。


道に落ちているということは、誰かの落とし物であろうか。周りを見渡すがそれらしき人物、というより自分以外に視界には人っ子一人いなかった。誰も、見ていなかった。


「…質屋にでも入れたら多少の金にはなるだろ」


警察に届けても、返ってくるのは確か3ヵ月後だっけか。万年金欠の高校生にとって3ヵ月待つのは些か長すぎる。なら質屋のほうがよっぽど早い。

というより警察に行くのが面倒だ。窃盗罪?知らんね。


ポケットに拾った指輪をねじ込み、再び家路に俺は着いた。




「ただいまーっと」


誰も居ないと分かっていながらも習慣でつい口から出てしまう。靴を脱いでそのまま自分の部屋に

向かう。鞄を隅にぶん投げ、机の上に置こうとポケットから携帯やらを出そうとして、指先に冷たい感触があたる。取り出してみると先ほど拾った指輪であった。


「拾ったは良いものの、これ指輪か?」


手のひらに乗せて改めて見てみるが、指輪にしてはどうみても大きすぎるものだった。どちらかというとキーホルダーについているリングくらいの大きさである。

しかしながら、一直線に繋がっている構造を見るとやはり指輪なのであろうか。


「持ち主どんだけデブだったんだよ、俺の親指よりも大きいじゃねーか」


何の気なしに、右の親指に指輪を嵌めてみる。すると一瞬指輪が震えたかと思うと、いきなり指輪が縮んで俺の指にぴったりとフィットした。


「は?え、ちょっ、なんだこれ!?」


慌てて外そうとするも、まるで特注品の如く、ぴったりと指に嵌った指輪は引っ張っても全く動かない。


「くっ、何だよこれ、回りもしねぇ。どうなってやがる」


回そうも動かず、力任せに引っ張るとそのまま指がもげそうな勢いである。どんだけぴったりとくっついてやがんだ、これ。


2,3分であろうか、指輪を外そうと躍起になっていたら今度は部屋の一角に置いてある本棚が白く光っているのに気付く。立て続けに起こる超常現象にさすがに俺も不安とイライラが募っていく。


「さっきから何なんだよ、ちくしょうが!オカルトに興味はねーぞ、俺は!」


指輪を外そうと左手で引っ張りながら、不恰好ながらも本棚に近づく。よくよく見ると本棚が光っているのではなく、光っているのは最下段の隅にある1冊の本であった。


「なんだぁ、何が光ってやがる?」


光っている本を取ろうと、指が触れた瞬間、本に指がめり込む。というより指から本に吸い込まれる

手を放そうとするも離れず、そのまま体が引っ張られる。何がなんやら訳が分からずも、これはまずいと咄嗟にどこか掴もうと反対の手を伸ばすが、生憎近くに掴めるものがなく、そのまま吸い込まれていく。


吸い込まれる瞬間、未だどうなってるのかわからなかったが、これだけはわかった。

今日は厄日だ、くそったれ。


そうして、俺は本の世界に吸い込まれた。

感想・誤字脱字報告などありましたら宜しくお願い致します。

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