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最弱の賢者  作者: 心響 紲
3/3

第3話ー死の狭間

今回は長めになっております。

相変わらずの自己満になっておりますが、表現や文書がわかりにくいなど注意点があればコメントでお申し付けください。

森は恐ろしいほど静まり返り勇里の走る音とそれを追う熊の足音しか存在しなかった。

勇里は肩で息し、走り出した初速からかなり速度が落ち始めている。


(このままじゃすぐ追いつかれるっ!!)


今だ麻痺も抜けず、後ろから迫る恐怖に震えているが勇里は『生きたい』『子ドラゴンを助けたい』二つの意思だけで体を突き動かしていた。

ーーーが、しかし勇里が体を無理に突き動かしても相手は熊。脚力、体力、腕力などすべて上待っている相手。頭は人間の方が良いがそれを生かす道具、地形、自身の力その3つ全てが無いとなれば今の現状で何の役にも立つはずがなく。


熊は既にすぐ後ろまで来ている。

それでも何か生きる方法は?と走りながら考えてはいたがかなりの時間走っている勇里の脳へ酸素が送られなくなりまともに頭が回らなくなっていた。

もう策なくただただ走って振り切ろうとしている状態。

それを感じたのか。熊は走っていた足を止め右手を横に広げた。


勇里は巨大な手足が地面をかける音が止み少し余裕が生まれた。

手足が止まったという事はもう追いかけて来ないのでは無いかとてつもなく淡い期待を抱き走りながら後ろを振り向く。

そこに見えたのは熊が巨大な右手を中へ振り抜く瞬間。

第六感とも言える感覚が警告を鳴らした。

なぜ?あそこには何も無い。何がしたいのか理解でき無い。そんな言葉が頭に浮かんだ。


バギィ


勇里は後ろを見ながら走っていたため足元にある木の根に足を取られ転倒した。


「っ………」


早く立ち上がり走り直そうと勇里は体を起こす。だが左足を転んだときに挫いたのかひどく痛んだ。


(痛かろうが死ぬよりはマシだ!我慢して走り続けなきゃ。)


挫いた足に鞭を打ち踏ん張ろうと体に力を入れ立ち上がる。すると体に一切の力が入らなかった。

自分の体じゃ無いかのように。

それと同時に勇里はあることに"気づいた"。

『地面が赤い』


(血?どこか………ら?………)


その時初めて勇里は自分の脇腹が切り裂かれたのを知った。

知ってしまったからには体が痛みに反応してしまう。勇里は脇腹を抑え倒れた。



◼︎◼︎◼︎



クソが………なんで脇腹が切り裂かれてるんだよ……

あの熊が近づいてきてる逃げなきゃ。

体が動か無い

あぁ死にそうなほど痛い。

けど死にたく無い。そうは思っても血が抜けていってるのを感じる。

頭がボーッとし始めて意識がとう………の……く………



◼︎◼︎◼︎



勇里の意識が落ちそうになった頃。


グシャ


静かな森に足音以外の音がなった。

勇里の足を噛む音が。


足を噛まれたせいで勇里の意識が強制的に戻された。


「ぐっ……ア"ア"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ッ!!!!」



勇里の悲鳴を聞き更に熊は首を振り、肉を引きちぎろうとする。


「ア"ッッッッッッッッッ」


声になら無い悲鳴を上げる。

激痛で意識すら飛ばさせてもらえない事に絶望した。

それと同時にかなり頭が回るようになっていた。

今まで忘れていた脇に抱えている子ドラゴンの事も思い出していた。


勇里はそれを思い出した事も踏まえて今の最善の方法を考え始めた。


(多分俺が死ぬのは確実…………このちっこいのは逃すとして……………クソッまた意識が………)


自分が意識を手放す前に勇里は腕の力を抜いた。


「い"け"ぇ………お…え……た"……け…も………!!!」


子ドラゴンは勇里の声にならない声を聞いきき腕の中から抜けると勇里の方へ悲しみに満ちた視線を向けてきた。


「い"け"ぇぇぇぇぇ!!」


そういい子ドラゴンが飛び去ると勇里は笑顔を浮かべながら意識を手放した。



◼︎◼︎◼︎



勇里は闇のように真っ黒な世界で目を覚ました。


「ここは?」


地獄を連想させるには何もなくかといって天国にしては似つかわしくない真っ黒。

周囲を見渡しても誰もいない。


「やぁ!」


いや、いた。優男風の顔をしていて目は光を帯びてない。なんとも胡散臭い笑顔を浮かべながら興味深そうな顔をしている。

顔に似合った細い体に何処と無くほんわかした感じの雰囲気を持っている爽やかイケメンってやつだ。


「お前誰だよ。」


「お、お前!?人からそんな言い方されたの初めてだ!!とっ失礼。僕は死の管理をするものさぁ。名前はネルって言います。よろしくね。」


なんとも律儀に頭を下げていた。


「あー悪い、初対面のやつにお前っていい方は失礼か」


「いやいやいや!!そんな事はないよ!!お前でいい!!むしろお前で読んでくださいっ!!」


「ネルお前………Mなのか……?」


完全にドン引き、可哀想なものを見るような目をネルに向ける勇里に対して。


「ネルって呼ばれるのもいい!!これはまた失礼したね。僕は友達が居ないからね。親しみを持って名前を呼んでくれたりお前と呼ばれた事がないんだよねぇ。だからつい興奮しちゃってね!」


ネルに対する可哀想な目を更につよくなった。


「死を管理するものって事は死神か?」


「死神とは違うねぇ。僕は人を死に(いざな)う事は出来ないし、その死に関与することも出来ない」


「じゃあ管理ってなにすんだよ。」


「そうだねぇ。簡単に言えば君みたいな人が来たらそのまま死の世界へ迷い込まないようにあちらの世界へ送り返すことが僕の仕事。死んでない人間が死後の世界へ行くと大変なことになってしまうからね。あ、ちなみにここは死後の世界じゃないからね。」


ネルによるとまだ勇里は死んでいないという。


「しかし良くもまぁあんな事されて死ななかったもんだねぇ。生まれつき体が丈夫なのかな?いや、そもそもあんな事されて死なないってもう化け物だね。丈夫とかそんな領域じゃないよねぇ。」


それは勇里本人も不思議に感じていた。普通あそこまで体が損傷して血を流していたらまず間違いなく出血多量で死亡。

だが勇里は死ななかった。


「まぁそれはそれでいいや。君の体の秘密はここから君を見ていればいつかわかるだろう!」


ネルは勇里の肩を掴み先ほどまで死んでいた目を爛々(らんらん)とさせていた。

勇里はネルの手を肩から外すとさっきから気になっていた事を聞いてみた。


「あのさ。ネルは俺が死んでないとか言ってたけど。じゃあここはどこなんだ?死んでないならなんであの森じゃなくここで目を覚ましたんだ?」


勇里が真剣な顔をし始めたのを見てネルも胡散臭い笑みを消し質問に答えた。


「ここはね、世界の狭間。上手く説明出来ないけど。次元と次元の間とでも言えばわかりやすいかな。それからなぜ君がここで目を覚ましたのかって質問だけど。体は今もあの森の中にあるよ。ここにいる君は精神体。」


「精神体?あまり良くわからないんだけど。」


「人っていうものは死んだら身体から精神体。つまり魂が抜ける。そして通説では天国または地獄へと行くと言われているね。

その状態が今君自身に起こっているのさ。けど君の身体はまだ死んでいない。限りなく死に近い状態ではあるんだけどね。

君は生きているから魂をあの世に行かせるわけには行かないのさ。だからここに来てもらった。

それに君は『賢者』だよね?だから僕が話してみたかったっていうのもあるけどね。


『賢者』勇里はその言葉を前に一度聞いた事があった。

あの幼女が勇里の頭に流した声が言っていたーーー『Congratulations!貴方は7人目の賢者に選ばれました。』

この時に。


「その言葉に聞き覚えはあっても何かまでは知らないっていう顔をしているね。もしかして白い女の子に何も説明されていないかい?」


「自称神様幼女か?」


「そう。その神様に」


勇里が頷くとネルがおもむろにため息を吐き。


「仕方ない僕が分かる範囲で色々と教えてあげるよ。あそこで話そう。」


そう言いネルは左を指差した。そこには先ほどまではなかった高そうな装飾をされた椅子と机が置いてありその上には茶菓子と思われる物とティーセットが置いてあった。

ネルと勇里は向かい合って座ると「早速始めようか」と話を切り出した。


「この世界がエンリルで魔獣や魔族、魔法が存在する世界って事は知ってるかな?おっと。飲み物を出そう。

紅茶でいいかな?ミルクや砂糖はそこにあるからご自由に。」


(こんなとこに紅茶なんであるのか。)

変な事に感心しつつネルの問いかけにうなずき返す。ここまで自称神様に勇里が教えてもらっていたところと同じところだった。


「じゃあまず魔獣や魔族だね。魔獣はざっくり言えば君を食べようとしたあのおっきな熊あれ魔獣。正式名称『エアベアー』風の魔法が使える熊だ。体内に魔石を有しておりそれを売るとお金になる。それと魔獣の部位は魔獣それぞれ魔法に強かったり物理に強かったり様々な効果があるから向こうに戻ったらしらべてみるといい。

そして魔族。魔族は二種類いる。悪魔と契約を結び身体に悪魔を宿す者と悪魔。この二つの総称が魔族。それとエンリルでは魔族が魔法の開祖とも言われている。

人より魔族の方が魔法に対する適正値が高く、人と魔族が同じ魔法を使うと威力などが約10倍は違うと言われている。

それとエンリルには魔獣や魔族以外も存在するんだ。ドラゴニュートとかエルフとかフェアリーとか。まだ種族はいるけど全部言っていたらきりがないからね。ここまではついてこれているかい?」


やはり、自称神様と話していて勇里が思った『ファンタジー小説によくある設定』とおなじだった。


(むしろよくあり過ぎていっそ『実は小説の中に迷い込んだ』と言われた方が納得できるな)


「あぁ大体内容は理解出来てる」


「では次に魔法。魔法とは体内の魔力を消費して発動するんだ。体内には魔力を通す道、魔力管(まりょくかん)が存在する。これは血管と同じように身体のいたるところにのびているんだ。

魔力管は心臓へと繋がっていて心臓に溜められる。溜められた魔力が魔力管へ送られる。このサイクルを繰り返す。魔力が無くなると身体がショックを起こし死亡してしまう。

魔力管を鍛えて魔力管を強くすることで魔法へつぎ込める魔力の上限があがり威力も上がる。そして魔力量を増やす事もできる。一石二鳥だね!

魔法を魔力限界近くまで使い続ければ心臓が危機を感じて貯蔵できる魔力量を増やそうとする。それによって魔力量の底上げができる。それに魔法に込められる魔力を最大限にして放ち続ければ魔力管も強くできる。これまた一石二鳥!

ただしこれは自分の持ってる最大魔力量を計算し間違えると死ぬ危険性があるから人間や他の種族はあまりしないかな。ただこれを正確に出来れば莫大な魔力を得る事ができる。

普通の人間や他の種族は魔力を半分くらい毎日使い続け長い年月かけて魔力量を底上げする。これが普通のやり方。

魔族はまた別者でね。もともとの貯蔵量が多いし魔力管が強い。そして魔法の適正値が高いから10倍近くの差がでてしまうんだ。このくらいかな。後はエンリルで見たり聞いたりした方がわかりやすいだろう。僕は魔法を使えないから使える人に教わるといい。」


(説明の仕方、説明書を読んだみたいだな。まぁ下手な説明されるよりましだけど。)

勇里がネルの説明を受けて一番初めに思った事だった。


「そりゃ本に書いてあった事を丸暗記して話しているからね。」


「ここでも思考読まれるのかよ………」


ここで自称神様の事が頭に浮かび始めた。

勇里にとってはあまり好かないタイプなのですぐに頭から強制退場してもらった。


「じゃあ、そろそろ君を身体に戻そうか。長く居過ぎて身体に戻れなくなったらシャレにならないからね。」


その言葉に一瞬固まりネルの言葉に耳を疑ってしまった。


「戻れなくなる?………」


「あれ?いわな「言ってないわ!なんでそんな大切な事を先に言わないんだよ!」


勇里が顔を蒼白とさせて叫ぶ。

それに対しネルは舌を出しながら「テヘペロ」と返し。


「ごめんごめん。言い忘れてたよぉ。まぁけどそうならないように僕が気をつけていたから大丈夫さ!」


ネルの馬鹿さ加減に呆れる事しか出来ず勇里は。


「とりあえずもう帰りたい………」


「わかったよ。じゃあ戻すね。」


「あぁ。………色々教えてくれてありがとうな。」


少なからず色々教えてもらったのは事実なのでお礼を言った。


「 い、今ありがとうって言ったかい!?」


「なにを驚いてんだ?」


「いやぁー僕の仕事柄生きている人にお礼なんて言われた事ないんだよぉ!///」


また、可哀想な物を見る目で勇里がネルの事を見た。

ここに勇里が来た時と同じ図になっていた。


「おっと、いけないいけない。じゃあ戻すね。それとこれ君にあげよう!友情の証だ!」


そういうとネルは赤い結晶のついたネックレスを渡してきた。


「これに魔力を込めれば一度だけここに来れる。是非また来てくれ!」


「ありがと。」


勇里がそういうとまた目を爛々とさせ、ネルが肩に触れた。「じゃあまたね」という言葉が耳に届くと同時に意識が遠退くのを感じた。




◼︎◼︎◼︎



見知らぬ天井。見た感じ山小屋に似ていて窓の外を見ると森があった。勇里はあの後見知らぬ誰かに助けられこの山小屋に運ばれていた。きちんと治療もされている。

勇里が身体を見ていると自分の寝ているベットのすぐ横で寝息を立てている少女に気がついた。

顔を覗き込むと綺麗な顔立ちをしていた。そして日本人のような顔だった。

見た目は14〜16ぐらいに見える。真っ黒な髪色をしており、前髪をヘアピンみたいなので上に止めていた。

勇里が少女の顔を観察していると


「ん、起きたんですね。」








最後までありがとうございました。


Twitterをやっております。詳細は活動報告にて。


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