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最弱の賢者  作者: 心響 紲
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第2話ー子ドラゴンと殺気

相変わらずの読みにくい文章ですが、最後まで読んでいただけると幸いでございます。

 

 勇里は木に背中を預け日陰で涼しんでいた。

 洞窟を出て3時間歩いてみたが全く森を抜けられる様子がない。


「あぁクッソ。腹減ったし、どうやったら抜けられるんだよ〜」


 地球にいる時も合わせて昨日から勇里は何も食べていなかった。

『こんな事になるとは思ってないんだから仕方ないじゃん』ーーーと言えばそうだが今更後悔したところで遅い。後悔先に立たずってやつだ。

 この森にはキノコや木の実のなる木など存在したが食べれるかわからなかった。

 それにここはファンタジーの世界。

 すぐその辺に毒を持った植物が自生している可能性だってある。

 麻痺毒ならまだいいが死に至る毒だったら……異世界に転移してすぐ拾い食いして毒で死にましたなんてかっこ悪すぎる。


「ここで座ってても状況が変わるわけでもないし食べ物でも探しながら森を抜ける方法を考えなきゃな……」


 ーーーボトッ

 勇里が立ち上がり歩き出そうとした時後ろで何か落ちる音がした。

 後ろを振り向いてみるとそこには黄色のりんごみたいなものが落ちていた。


「黄色い……りんご?」


 近くに寄ってみると確かに黄色のりんごだった。

 そのりんごを手にとってみると勇里は目を丸くした。

 黄色のりんごは少し珍しかったが地球でも品種改良によりなかったわけではなく、勇里も一度だけだが見たことがある。

 目を丸くしたのは色ではなくそのりんごが光ってるからだった。


(見た目がりんごだし平気だよな……)


 何より見覚えのある形を見た途端ここぞと言わんばかりにお腹がなりだした。

 食べれそうなものを見つけるはこの先当分ないだろうと思いりんごをかじろうとした時勇里の頭上で風を切るような音がした。


 パァァン


 かぶりつこうとしていた勇里の頭に見えない何かが直撃した。


「いっつっ!」


 何かが当たった場所を抑えながら周りを見回すとーーー子供のドラゴンが浮いてた。

 初めてドラゴンを見た勇里はまた目を丸くした。


「ピィ!」


 子ドラゴンは怒り気味に鳴くと勇里の手からリンゴを奪い自分のものだと主張するように大事そうに抱えた。

 落ちてきたリンゴはどうやら子ドラゴンのものだったらしい。

 諦めるしかない。いくら相手が人間ではないとしても子供からものを取るのはいい気持ちはしない。

 がっくりと肩を落とす勇里をよそ目に子ドラゴンがリンゴにかじり付いていた。


「はぁぁぁぁっ」


 勇里から大きなため息が出た。

 仕方ない仕方ないと思っていてもやはり切ない。

 もう限界だと言わんばかりになるお腹をさすりながら元は子ドラゴンのものなのだからと自分に言い聞かせ、また座ってた場所せしゃがみこむ。

 隣でシャリシャリとリンゴを(かじ)る音。

 聞いていても仕方ないからと立ち上がり自分の食べるものを探すために歩き出す。

 ーーーすると子ドラゴンが勇里の目の前に周り食べかけのリンゴを手元に持ってきた。


「もらっていいのか?」


「ピィ!」


 子ドラゴンは当然だと言うように胸を張る。

 それを見た勇里は不覚にも泣きそうになってしまった。

 子ドラゴンの好意をありがたく受け取り周りを見渡して今度こそ邪魔されないように確認。

 一口かじる。


(これは美味い!)


 一瞬にして舌の上で甘さが広がり、りんごとは思えないほどの芳醇な香りが鼻を抜けた。

 だが甘さを堪能しているのもつかの間もう一口と思いりんごを口に運ぼうとしたら手がジビレて動かない事に気づく。


「ま……ひ?」


 気付いた時にはもう遅い。

 足や手、口の中が既に麻痺し始め、歩くことはおろか立ってるのもやっとだった。


 ーーーー………


 10分もしないうちに勇里の体全身が麻痺してしまいついに地面に倒れてしまった。

 仰向けの状態で倒れた勇里は“ある事”に気が付いた。

 ーーー何かがこちらに向かってきていることに。

『それ』が人間ではないって事はすぐわかった。

 地面に響くほどの体格と体重を持っているという事も。

 そしてかなり近くにいるという事も。


(止まった……?)


 勇里が体に感じていた振動が伝わらなくなった。それと同時に初めて殺気を体験した。


 額には冷や汗で髪の毛が張り付き。

 麻痺しているはずの体が震え始めていた。自分のすぐ近くに"死"そのものが迫ってくるそんな感覚。日本という世界でもかなり平和な国の中では多分一生味わう事のなかった恐怖。

 その恐怖を放つ『それ』に自然と勇里の目が向いた。


 ーーー巨大な熊が勇里の方を睨んでいた。自分の獲物を逃さぬが如く。

 そして勇里も巨大な熊から目を離さなかった。いや、目を一瞬でも逸らせば殺される。そう勇里の直感が警告していると感じたら目を逸らせなかった。


 熊は殺気の乗った視線を離す事なくゆっくりと勇里の方へ歩いてきた。

 今だ体の麻痺が抜けず動けぬまま迫り来る死の元凶を見つめた。

 こんなとこに来てすぐ死ぬなら地球に居て誰とも関わらない生活をしていた方がましそう思った時。


「ピィ!!」


 子ドラゴンの鳴き声で勇里は我に返った。

 巨大な熊の目の前に立ちはだかる小さな背が見えた。勇里を守るようにしている小さな背が………

「なぜ?」と思った。勇里は子ドラゴンに特別な事をした覚えがない。助けるような事も一切。ましてや命を助けてもらえるような事も。


(考えていても仕方ない!)


 目の前では既に子ドラゴンへと鋭く巨大な爪が襲いかかっている。

 麻痺で痺れてる場合ではない、ましてや恐怖に震えている場合でもない。そう思うと勇里の体が動いた。

 そのまま子ドラゴンを脇に抱えて反対方向へ全力疾走した。

 背中に受ける殺気がどんどん近づいてくるのを感じつつも振り返らず走り続けた。

最後までありがとうございます。


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