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ー獣妖人と僕ー  作者: ひとみ
第1章・北闇の国編・手がかり
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001・柚姫視点

今までにない激痛を味わい意識を手放したかと思いきや、突然聞こえてきた獣語(ジュウゴ)

会話はよく聞こえずとも、「虎雨(コウ) 」という名に「帰ってきてもらうぞ」という言葉、そしてそれを話したのは名前の最後に「月」とつく者だということだけはわかった。

その瞬間自宅からまったく身に覚えのない場所へと来てしまった柚姫(ユズキ)は、年齢や容姿まで変わってしまい困り果てていた矢先、言葉をあまり知らない嫌われ者の鷸亀(イツキ)という名の少年と出会う。

とりあえず、この世界の仕組みだけでも知ってから動こうと思っていた柚姫(ユズキ)だったが…。

『まったく眠れなかった…』


湿気を吸い少し重く感じる毛布に包まれている鷸亀(イツキ)は、話をしながら眠ってしまいまだ寝息をたてている。


僕はというと、朝になったことにすら気づかないほどにこの世界の仕組みについてずっと考えていた。


鷸亀(イツキ)から聞いた話をまとめるとこうなる。


この世界には、東西南北に四つの大国があり、それぞれを「東昇(トウショウ)の国」・「西猛(シモウ)の国」・「南光(ナンコウ)の国」・「北闇(キタヤミ)の国」といい、ここは北闇(キタヤミ)であることがわかった。


他にも中国と小国がいくつかあるらしいが、国名はわからない。


南光(ナンコウ)には王家(オウケ)があり、大国にはそれぞれ国帝(コクテイ)と当主が存在する。


国帝(コクテイ)は国のトップで主に隊をまとめる者であり、当主は民をまとめる者なのだそうだ。


決定権は国帝(コクテイ)にあり、当主は何事も報告する義務がある。


当主とは、家の主人をさす言葉だと思っていたのだがこの世界では違うらしい。


ちなみに、中国と小国には当主しかいない。


まぁ、簡単にまとめてしまえば、その王家とやらは世界のトップであり、その下に4人の国帝をおき、その下に当主をおいたってことだろう。


だが、これだけならまだ悩まずにすんだ。


問題なのは、この世界に住んでいるのが人間や動物だけじゃないということ。


半獣人(ハンジュウジン)半妖人(ハンヨウジン)、獣と妖、それと伝説の化け物が8匹…』


別の種がいると言われてしまえば、頭も抱えたくなる。


半獣人(ハンジュウジン)とは人間と獣の混血で、半妖人(ハンヨウジン)とは人間と妖の混血。


伝説の化け物とは、陸を支配する巨大な獣と海を支配する巨大な蛇。


獣という言葉を使うのは、害のない動物、つまり食べるための動物と区別をつけるためであるらしい。


半獣人(ハンジュウジン)半妖人(ハンヨウジン)は、軽度と重度に分けられるそうだ。


重度である半獣人(ハンジュウジン)半妖人(ハンヨウジン)、獣や妖を絶やし滅ぼすために置かれた組織がメガネの子が話していた「隊」のこと。


闇影殺滅(ヤミカゲサツメツ)特殊部隊、通称「闇影隊」。


戦争や護衛を任務とすることもある。


しかし、闇影隊の中には半獣人(ハンジュウジン)半妖人(ハンヨウジン)の血筋の者もいると言う。


その者達は見た目は人間であるが姿を変えることができるらしく、それを「半獣人化(ハンジュウジンカ)」・「半妖人化(ハンヨウジンカ)」と呼んでいる。


前までは差別されていたらしいが、「人間」だと国が認めた証拠に右肩に焼き印が押されるようになってからは差別はなくなった。


つまり、軽度と重度、このどちらかでしかない半獣人(ハンジュウジン)半妖人(ハンヨウジン)は軽度である証として焼き印を押す。


重度はすべて死刑となるため、人間でいたいのならこれを避ける道はない。


ちなみに、重度の場合、姿そのものが半獣人(ハンジュウジン)半妖人(ハンヨウジン)であり、姿を変えると「(ケモノ)化」・「(アヤカシ)化」してしまい、その者達は「人間」ではないとされている。


第三者や身内が存在を隠せば皆殺し、差し出すなら対象者だけ死刑、自ら名乗り出れば死刑は免れるが一生奴隷となり自由は望めない。


僕が来た世界はこんなにもややこしく厄介なところ。


この先、生きていけるのかさえわからなくなってしまった。


なぜなら僕が「何者でもない」からだ。


そんな僕はどうなってしまうのだろうか。


なんて考えていたら、いつの間にか朝になっていた。


鷸亀(イツキ)はまだ眠っているが、緑色の髪の毛は指を通すことを許さず途中で絡まってしまう。


そんな鷸亀(イツキ)を叩き起こしたはいいが。


「ゆっ、柚姫(ユズキ)!!??」


起きて早々叫ばれてしまい、心底驚いた。


『なっ、なんだ!?どうした!?』


「あっ…よかった…。夢じゃなかった…」


どうやら、僕が夢の中の者だと思ったようだ。


『……おはよう。今すぐ風呂に入ってこい。あまりにも汚すぎるぞ』


「おは…よう…?」


あぁ、そうだった。


こいつは言葉をほとんど知らない。


『朝起きたら、まず「おはよう」と言うんだ。挨拶の言葉だから覚えておけ。いいな?』


「おは…よぉ…、おはよぉ!!」


何度か繰り返しバタバタと風呂場へ走っていくが、なぜか立ち止まりこちらに振り返った。


「一緒に入ろう…」


『…………は?』


そう言ったきり、そこから動かなくなってしまったのは、来るまで入らないという無言の訴えだろうか。


『1人で入れるだろう?』


「イヤだ…」


意地でも動くまいとする鷸亀(イツキ)はジッと僕を見ている。


『わかった、入るよ…』


これではいつまでたっても風呂に入らないだろう、そう判断した僕は渋々風呂場へと向かった。

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