001
ーー僕は、無知で愚かな大馬鹿者だーー
誰も知らぬとある世界の昔話。
獣がいて、妖がいて、人間がいる。
そんな世界があった。
この世界では、これらすべてをまとめて「獣妖人」と呼んだ。
不思議なのは誰がこの名をつけたのか。
鬼だ。
この世界には、鬼も存在した。
そしてその呼び方は弱肉強食を示していた。
人間や妖よりも強いのは獣と呼ばれた種族達。
それは間違いではなかった。
獣は言った。
《[リーダーの素質とは強さではない、寛大さだ]》
妖は言った。
「強さがすべてだ。小さい者すらも従える強さがあってこそリーダーと呼べる」
人は言った。
「平等であるべきだ」
鬼は言った。
「興味がない」
それぞれの生き方があり、その分だけの物語を生んだ種族達は後に争い始めた。
そして、獣は言った。
《[裏切り者め]》
妖は言った。
「人間の長は化け物だ」
人は言った。
「協定を組むべきだ」
鬼は言った。
「興味がない」
この戦に参戦しなかったのは鬼だけだった。
妖と人は言った。
「この世に平和を」
いつしか獣と鬼は戦の対象となり多くが死に絶えたが、この戦で涙を流したのは1人の人間だけである。
そして、その人間は英雄となった。
この時獣は知らなかった。
彼等が話す「獣語」という言葉は、鬼以外誰にも理解できない言葉であることを。
遥か昔の話。