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魔王城には入れません!?

 突然跪いて泣いている青年を前に、俺は驚きを隠せないでいた。だってそうだろう?いきなり人が・・・しかもいい年した青年が泣いて跪くんだ。驚かない奴なんていないだろ。むしろそんな奴がいたら見てみたいぐらいだ。

 とりあえず、青年をこのままにしておく訳にはいかない。まずはこの状態・・・俺に跪いているこの状況を何とかしないと。とにかく、青年にその態勢を止めるよう促してみる。


「顔を上げろ。」


 ・・・え、今俺なんていった?顔をあげ・・・いやいや、そんなはずはない。俺は「そんなに畏まらず、立ってください」って言おうとしたはずだ。決して顔をあげろなんて傍若無人な・・・しかも根本的な解決になっていないようなこと言う訳がない。・・・そうだ、きっと周りの音が反響したとか重なったとかでそう聞こえてしまったんだ。そうに違いない。

 青年は俺の言った言葉を正しく聞き取ってくれなかったみたいで、その態勢は変わらず顔だけあげた。やはりまだ涙が止まっていないようだ。・・・仕方がない。このまま話を続けよう。次は名前でも聞いて行こうかな?


「貴様、名は?」


 だから何でそんなに上から目線なんだよ!聞き間違えじゃなかった!?


「っは、私の真名マナは『ガラベル』と申します!」


 普通に答えなくていいよ!?しかもなんでそんなに嬉しそうなの!?

 というか一体どうなっているんだ!?俺の言うこと全部上から目線な言葉に変換されるんですが!?


「う~ん、なんか特殊な力が働いてるね。」


 っと背後からアマナがポツリと言った。特殊な力?何のことだ。


「君自信の能力スキルとかとは関係なしで特殊な力が発動してるみたい。・・・何て言うんだろう。規制?が掛かってるみたいな。」

 

 へ?規制?


「うん。今見た感じ、自分よりも下の存在クラスには威圧的な態度。つまり上から目線な態度になっちゃう力みたい。」


 なっ、それって解除とかできないのか!?


「まぁ無理だろうねぇ~。やけに強い力みたいだし。言うなれば本当はそんな能力スキルはないんだけど、存在能力クラススキル【魔王の威光】とでも名付けておこうかな。」


 そんな能力いらねぇよ!何とかしてくれ!


「ムリ。」


 だから早すぎるだろ!?


「魔王様!」


 そんなやり取りをしていると青年・・・ガラベルが割って入ってきた。いや、今俺は重大な話を・・・ってそうか。俺以外にはアマナの姿は見えないんだっけ?

 ガラベルは構わず続ける。


「本来なら今すぐにでも魔王城にいっていただきたいのですが、私たちの力が及ばず現在城には立ち入ることができなくなってしまいました。本当に申し訳ございません・・・。」


「魔王城に立ち入れないってどういうこと!?」


 ガラベルの言葉を聞いて今度はアマナが驚いている。何をそんなに驚いているんだ?まぁ、確かに魔王が魔王城に行けないなんてどうかと思うが今までその王たる魔王がいなかったんだろう?じゃあどこかの国とかが攻め落としたりとかあってもおかしくないんじゃないか?


「魔王城はその名の通り魔王の城なの。魔族の王が居座る城がたかだかどこかの国が攻め込んできたくらいで落とせるはずもないんだよ。魔王城は鉄壁にして最強の城。城の周りに暮らす魔族たちだってかなりの強者揃いだし、城自体の作りからして頑丈で大砲くらいじゃ傷一つ着かないんだよ!?。」


 え、それじゃあ何で前の魔王は死んだんだ?前の魔王が死んだから俺が魔王として転生したんだろ?でもそんな頑丈な城に居てどうして死んだんだ?


「前の魔王を倒したのも奇跡に近いらしいよ。全世界の国々が力と技術を結集して魔王とその軍隊が城の外から出たのを袋叩きにしたらしいんだ。その攻撃で魔王軍はほぼ壊滅。しかし、その攻撃で魔王が死ぬことはなくその時代の勇者が魔王と一対一の決闘を申し込んで丸二日間の死闘を繰り広げ辛くも勝利を手にしたって話だよ。」


 袋叩きって・・・じゃあ今回も世界各国が力を合わせて


「それはないね。その後その魔王城をどの国が手に入れるかで国は戦争を起こしたらしいんだよ。その戦争の間、魔族たちは城の守りを強化して戦争が終わるころには誰にも手が出せない、鉄壁の魔王城をつくりあげたんだって。つまりはそういうこと。国は一つの力では魔王城は攻め落とせない。仮に色んな国と力を合わせても戦争になってしまうから絶対に協力しない。」


 なるほどねぇ・・・。


「だからこそ魔王城に立ち入れない理由が分からないんだよ!?」


 アマナの話を聞いてガラベルに視線を移す。ガラベルはそれだけで察してくれたのか本当に申し訳なさそうに訳を話した。


「私たち魔族・・・特に私のような魔人は魔王様の部下として生きていくことに価値を見出すのです。魔王様に命令されればその命令に従う。死ねと言われれば即その場で自分の首を刎ねることも厭いません。勿論、魔王様がこの世に居ようが居なかろうが魔王様のあるべき場所、魔王城を守ることで忠義を示すのです。」


 おいおい随分と極端な忠義の示し方だな。


「私はそんな日々が充実しておりました。全ては魔王様のためだと、生きがいすら感じておりました。しかし、私と同じ上位存在である私の友は違った。誰もいない城を守ることに何の価値があると常に不満を漏らしておりました。」


 ガラベルは苦虫で噛み潰したようなそんな面持ちで更に続ける。


「そしてある日、その友は自分こそが魔王だと突然言い出したのです。勿論私たちはどうかしていると一蹴しました。しかし、その友と関係の薄かった者たちは何故かその言葉を信じ、彼について行きました。そして彼らは勢力を集め魔王城に立てこもってしまったのです。」


「そんな!?たかだか上位存在が魔王と名乗っただけで信じるなんて・・・」


「・・・本当に申し訳ありません」


 ガラベルはまた頭を垂れる。本当に後悔の念でいっぱいなのだろう。僅かに震えていた・・・。


「ねぇ、どうするの?これから」


 アマナは本当に困ったような顔をしている。どうするって言ってもなぁ、俺は魔王城に行かなきゃダメなんだろ?


「そうだけど・・・これは一筋縄じゃいかないよ?」


 まあ生きてれば簡単にいかないことぐらいあるさ。それと、どうも気に入らないことがあってね。


「え、何をそんなに怒ってるの?」


 ん?いやなに。単純に友人だと思ってくれている人間を裏切った訳だろそいつ。


「まあ人間じゃなくて魔族だけど・・・その通りだね?」


 ここは一つ、お灸を添えてやる必要があるだろうなぁ。


「そ、そうだね。」


 さて、さしあたって一つガラベルに聞きたいことがある。


「・・・ガラベルよ」


「・・・っは!」


 何か決意を決めたような目で顔をあげる。自分に処罰が下されると思っているんだろう。


「貴様は・・・まだそいつの事を友だと思っているのか?」


「・・・え?」


 想像していた言葉とは違う・・・そう顔に出ていた。しばらくしてその意味を理解し言葉を紡ぐ。


「私は・・・私はまだ彼のことを友であると信じております。」


 しっかりと俺の眼をみてそう言った。綺麗な眼をしている。決して嘘偽りはないだろう。


「・・・そうか。」

 

 その言葉で、その瞳で十分信用できると確信した。


「ならば貴様とその仲間がいるところに連れて行け。そいつと関係が深かった者は付いて行ってないんだろう?」


「は、っは!お任せください!!」


 そう言うとガラベルはスッと立ち茂みの方に向かって歩く。


「君も結構やさしいんだね」


 いつの間にか頭に座っているアマナが言う。・・・別に優しくなんかないさ。彼には魔王城奪還にか~な~り協力してもらうからな。


「ふ~ん。」


 にやにやとするアマナ。・・・っく、察したような顔がなんとも腹が立つ!


「さあ魔王様、こちらです。」


 ガラベルが自分が出てきた茂みの前で俺を呼んだ。ほら!いくぞ。


「はーい。」


 俺たちは、ガラベルを先頭に密林の中に入っていった。


結構主人公が喋ってくれました。しかも上から目線で。・・・なんでこうなったかは後々書いて行こうかなっと思います。


さて青年の名前ガラベルですが、勿論花の名前「ガーベラ」からとりました。・・・原型残ってないですね。ま、まぁさておいて花言葉は『辛抱強さ』『希望』『常に前進』です。ガラベルには強く生きてもらいたいものです。

では!

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