2話 突然の放置。そして遭遇。
洞窟の出口に差し掛かると太陽の強い日差しに目が眩んだ。燭台しかない薄暗い洞窟から外に出るのだから当然といえる。視界は勿論白く包まれ、肌には太陽の暖かさを感じる。洞窟の中に居るよりも何倍も気分が晴れていくような気がした。うん、やっぱり外に出るという提案は間違っていなかった。
手で太陽を遮りながら一歩ずつ確かに歩んでいくと地面の感触がふかふかしたものに変わった。岩や砂利だらけの道から草や土の地面に変わったのだろう。つまり完全に外に出れたという訳だ。
少しずつ眼を光に慣れさせてゆっくりと周囲を確認していくと・・・
・・・単刀直入に言おう。目の前には『密林』が広がっていた。樹海とも言えるんだろうか、視界に入ってくるのは見たこともない植物に樹木ばかりでそれ以外のものは一切ない。立ち入ろうものなら間違いなく死が待ち受けているであろう立派な密林が広がっている。
さて、そんな俺だが普段ならここで叫んでいるだろう。発狂していてもおかしくないレベルだ。だがしかし!!人間は日々進化するものである!頼りになる相棒がいる俺にもはや死角はない!(結局、他人任せなんだけどね)さぁ、アマナよ。俺はこれからどうすればいい!?
「・・・う~んと。・・・ここ、どこなのかな?」
・・・・・・今、何て言った?
「いや、だからここはどこなのかなぁ~と・・・」
・・・え、うそだろ。
「ここで嘘なんてつかないよ・・・結構、本格的にピンチかも・・・」
え、いや。だってお前、色々知ってるだろこの世界のこと。だったらどの程度の場所か見当ぐらい・・・
「知ってるって・・・さっきまでボクが話してたのは基本の基本!子供にパンを見せて『これはなぁに?』って聞いて『ぱん!』って答えるぐらい当たり前なことなの!!。何もなしで場所を把握できるぐらいだったら冒険家なんて廃業だよ!!」
それじゃぁ・・・ホントに
「・・・ボクたち遭難したみたいだね。」
ちょ、転生していきなり遭難&餓死エンドとか洒落になってないぞ!?しかもそれが魔王なんていい笑いものじゃないか!?
「そんなこと言われても・・・。」
ここで、待ってたら誰か来るとかそんなことないか!?
「洞窟の中も誰かが綺麗に管理してたみたいだからもしかしたら来るかもしれないけど・・・来ないかもしれないよ?。整備してから大分経ってるみたいだし、なによりこんな密林の中じゃ・・・」
っく!それなら一か八かこの密林を駆け抜けるしかないのか!?
「そうだね・・・ってちょっとまって。誰か来るみたいだよ。」
おぉ!なんというタイミング!!。
「でも油断しないで。この魔力量・・・確実に上位存在だね。しかもかなり高位の。」
つまり・・・敵なのか?
「分かんない・・・でも相手はこっちに殺意があるみたいだけど。」
そうアマナが言ったとたん、背筋をゾクリと悪寒が走る。この感じ・・・生前の仕事の現場で味わったことがある。人が他人に殺意を抱いたときにでる殺気そのものだ。魔力というものがいまいちよく分からないが、プレッシャーがひしひしと伝わってくる。
それを放っている存在が着実に此方に近づいてきている。そんなことが分かるほどに強大なプレッシャーだ。
「いきなりの戦闘になりそうだけど準備はいい?。ここは一旦引く?」
アマナは心配そうに問いかける。ここで逃げたいのは山々なんだが、相手は此方に殺気を放ちながら着実に近づいてきている。ここまでの殺気を放つくらいだ。余程、逃がさない自信があるんだろう。ましてや周りは密林。気配か何かは知らないが、それだけで俺たちのいる場所を把握して一直線に俺たちの方に向かっているんだ。地の利やその他諸々、相手の方が何かと有利な状態ではどのみち殺られてしまうだろう。
よって、逃げるという選択肢はない。
「意外と冷静なんだね?こういう時こそ騒ぎ出すかと思ったのに。」
まぁ場慣れしてるしな。なにより、戦闘だけなら多少は何とかなりそうな自信が若干ある。それに
「それに?」
相手は強いって言っても上位存在なんだろ?だったら最上位存在、『魔王』である俺の方がもっと強いってことだろ?
「・・・ぷ、あははは。最初はあんなに嫌がってたのに結構ノリノリだね。うん。その通り!君はこの世界の中で誰よりも強いはずだよ!」
いまさら文句ばかり言ってもいられないだろ?それより、今は目先のことに集中しよう。
「うん!。」
するとアマナは俺の若干斜め後ろに移動する。どうやらサポートし易い位置に移動したみたいだ。さて、俺も集中しないと・・・。
殺気がする方向を正面に構える。構えるといっても武道の型をとる訳じゃない。ただ踏み出しやすい態勢にしただけだ。そうすることで最初の一撃を避けるなり受けるなりすることができる。場合によっては攻撃に転じることだって可能だ。そしてその構えのまま深呼吸。吸って、止めて、一気に吐く。これが俺流の集中法だ。
集中していくにつれて周りの不要な情報は切り捨てていく。あるのは自分と相手だけ。相手がその姿を現すまで限界まで集中力を高めていった。
そのまま数十秒が経過。すると不意に相手から放たれていた殺気やらプレッシャーやらがフッと消えてしまった。・・・なんだ?
さらに数十秒、先ほどまで殺気が放たれていた方角からガサゴソと草木をかき分けて中から一人の青年が現れた。
長身のスーツ姿で髪の色は白・・・いや、銀髪なのか?耳が若干とがっており眼の色は濃い蒼。俗にいうイケメン青年だ。そんな青年が信じられないといった表情で此方を見ている。
・・・こいつが殺気を放っていた張本人なのか?とてもそうは見えないが。そんなことを思っていると青年が歩み寄ってきた。俺をつま先から頭のてっぺんまでじっくりと見ながらだ。・・・やだ、何この子。怖い。
そして俺の目の前に立つ。俺より少し大きいのか、見下ろされる形になっている。
「な、何してくるか分からないから気を付けてね!!」
そういってアマナは俺の背中に隠れてしまった。おい、サポートはどうした!?俺だってこんな意味も分からない相手と見つめ合いたくないんだが!
じんわりと脂汗をかきはじめた・・・誰か何とかしてください!!。すると青年に変化があった。急に涙を流し始めたのだ。号泣だ。そしてそのままひざまずく。
・・・え、えぇぇぇぇぇぇぇぇ!?
突然と奇行に驚いている俺をよそに青年は言葉を並べる。
「貴方が・・・貴方様こそが魔王様だったのですね!?」
主人公のシリアスのときとのギャップには私も驚いております。まだまだ、未熟者で申し訳ありません。
さて、ようやく妖精≪ピクシー≫以外に登場者が現れました。イケメンです。イケメン。本来、ヒロインとか出した方がいいのかと思いますがそこは置いておいて、何故かイケメンを出してしまいました。じゃぁいつヒロインが出てくるの?っという訳なんですが、残念ながら当分でません。すいません。完全に私の頭の中が狂っております。後々にはしっかり出てきますので少々お待ちください。もし、読んでくれている方がいらっしゃればの話ですが・・・今後ともよろしくお願いします。
では!






