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薔薇の騎士団  作者: 桃 春花
第一話 亡き王女のための舞曲
9/60

 執務室での事務仕事を終えて、ファラーは宮殿内を巡回していた。

 随所で警備に立つ近衛騎士たちが、彼の姿を見かけると姿勢を正して敬礼する。それに頷きを返しながら、ファラーは議会室のある方へ歩いていった。

 式典もない王宮は静かなものだ。中へ入れるのはごく一部の者のみ。一般の貴族が用もないのにやって来れる場所ではない。それより下の身分となると、何をか言わんやだ。

 窓から庭を見下ろせば、植え込みの手入れをする園丁の姿が見える。

 平和な眺めだった。騎士たちは厳しい訓練によって鍛えられているが、その技をじっさいに使うことなどほとんどない。

 王都騎士団の連中が、お飾り人形などと悪口を叩くのも、無理のないことだった。

 赤い絨毯の敷かれた廊下を、奥から歩いてくる人がいた。威厳と貫祿をただよわせた初老の男性に、ファラーは道を譲って一礼する。

「やあ。ご苦労さま」

 従者を連れた高位の貴族は、鷹揚な笑顔をファラーに向けた。

「今お帰りですか、モンクトン侯爵」

「うむ。キルステンとの関税問題でいささかこじれてね。今日の会議は長引いたよ」

「お疲れさまです」

 モンクトン侯爵は議会に席を持つ。数ある貴族の中でも、特に権威ある人だ。

 現在の議員は十一名。これに、議題によって各担当の大臣や役人が出席し、議会が運営されている。

 近衛騎士団長として女王の信を受け、高位の貴族たちからも一目置かれているファラーではあるが、貴族としての位は低く、議会に席を持てるほどでない。部屋の中でどんな話が交わされているのか、直接知ることはできない。こうして外で議員をつかまえて、話を聞くしかなかった。

「シュルクへの対応は、いかがなりましたか」

 さりげなく、今いちばん知りたいことを尋ねれば、モンクトン侯爵は白い髭をしごいた。

「うむ……あちらの返答は、反逆を企てた王子を追放しただけだと、その一点張りでな。これに口を挟むは内政干渉だと、とりつく島もない」

「白々しいにもほどがある言い分ですな。反逆の事実などなかったことは明白ですのに。ハサリムの手の者によって王子の宮殿が襲撃に遭い、虐殺が行われたことも、かの国では公然の秘密です」

 セシルの一件で両国の関係は微妙になったとはいえ、国交断絶までにはいたっていない。

 シュルク国内の情勢は、逐次イーズデイルに知らされていた。

 モンクトン侯爵は頷いた。

「まったく。しかし、そう言われてしまえば、こちらとしてもこれ以上強く出ることはできん。いくら陛下の甥御にあたられるとはえ、シャノン公は当時あの国の国民だったのだ。いかなる出来事があったとしても、それはあくまでもシュルク国内の問題でしかない。エルシー姫が殺されたというならばともかく、王子が襲われようとどうしようと、我々に抗議できる問題ではない」

 日和見な意見に、ファラーは内心で歯噛みした。

 シュルクに対する見解は、モンクトン侯爵と同じ意見が多数派を占めている。

 セシルがシュルク王になってくれれば、イーズデイルとしては都合がよかった。政治面でも経済面でも、恩恵をこうむれるはずだと期待されていた。

 その目論見が外れて人々が落胆したのは事実だが、さりとてごり押しをすれば戦争になりかねない。イーズデイルが不当に内政干渉したという口実を、シュルクに与えた上でだ。

 それはまずい。

 セシル自身が報復を宣言し、己の権利を取り戻すべくイーズデイルの力を借りるという図式にでもしない限り、シュルクと事を構えるわけにはいかなかった。

 女王は甥の身の上にいたく同情し、できる限りの好待遇で迎え入れてやったが、戦争は望んでいない。

 それに遠慮してかセシルも、シュルクへ返り咲きたいという意志を見せることは、一切ない。

 このままイーズデイルの一貴族として平穏に暮らしていくのだろうと、大半の者が現状を受け入れ始めている。

 ファラーには歯がゆい限りだった。

 立ち去るモンクトン侯爵に深く頭を下げ、瞳の奥の憤りを隠したファラーは、方向を変えて王族の居住区域へ向かった。

 いくつも扉が並ぶ中、普段使われることのないひっそりとした空間へ踏み入る。

 家具も何もない部屋だった。窓には昼でも厚いカーテンが引かれている。

 この部屋の用途は、壁に並んだ数々の肖像画にあった。

 歴代の王族たちが、額の中からこちらを見ている。

 一枚の絵の前で、ファラーは足を止めた。

 まださほど年数を経ていない、比較的新しい絵だった。若い女性が描かれている。

 淡い金髪と海のように深い青色の瞳をした少女だ。艶めいた美貌に気品のある表情を浮かべている。

 女性らしく、印象はずっと華やかだったが、顔だちは息子とよく似ていた。

 妹姫を可愛がっていた女王は、彼女に生き写しな息子が現れた時、涙を流したと聞く。ファラーも初めて会った時には驚いた。三十年近くの時を超えて、エルシー姫が戻ってきたような錯覚を覚えたものだ。

 まだ若かった頃――今のような地位もなく一介の騎士でしかなかった頃、美しい王女に遠くから憧れていたことを思い出す。

 華やかな人だった。才気にあふれ、いつも人々の注目を集めていた。

 高らかな笑い声が、今も耳の奥に残っている。

 記憶の中の声に、現実の物音が混じった。

 ぱたぱたと軽い足音が走ってくる。甲高い笑い声は、子供のものだ。

 一度は閉めた扉が勢いよく開かれ、少女が二人飛び込んできた。

「あら、ロナルド」

 中にいた彼に気づき、驚いたような声が上がった。

 女王の娘、クララ王女とプリシラ王女だった。

「これは殿下方。お元気がよろしいですな。たしか今は、お作法の時間ではありませんでしたかな」

 穏やかな笑顔をつくろって向き直ると、幼い王女たちはいたずらっぽく笑った。

「いいえ、今はかくれんぼの時間でしてよ」

「なるほど、教師から逃げていらしたか。困った姫君たちですな」

 指摘されても悪びれもせず、王女たちはきゃっきゃと笑った。

 母方の血を濃く受け継いだ王太子と違って、この二人は父親に似ている。髪も瞳も落ち着いた鳶色だ。性格は、姉の方はおとなしいが、妹は気が強くませていた。

「わたくしたちより、お兄様の方がもっといけないんですのよ。近頃は意中の方を追いかけて、お外へ出かけてばかりなの」

 十二歳のプリシラ王女が、そんなことを言う。

「お勉強もご公務もそっちのけよ。お兄様は女の人と遊ぶ方がお好きみたい」

「およしなさい、プリシラ。そんなことを言うものではなくてよ」

 二つ年上のクララ王女がたしなめた。

「あら、だって本当のことだわ」

「はしたないと言っているの」

 姉にめっと叱られて、プリシラ王女は口をとがらせる。

 ファラーは息をついた。

 お忍び好きな王太子のことは、彼も承知している。近衛騎士団長として、憂慮すべき問題である。

「やれやれ、わが国の殿下方は、どなたも近習の者を困らせてばかりですな。女王陛下に進言して、叱っていただかねばなりませんな」

 王女たちはあわてて言い訳をした。

「あら、わたくしたちは、ちょっと休憩してるだけよ」

「この後ちゃんと戻って、授業を受けますわ」

「さようですか。それは何よりです」

 笑顔で頷くファラーに、プリシラ王女が隠れて舌を出す。

 彼女はちょこちょこと走り出て、エルシー姫の肖像画を見上げた。

「エルシー叔母様の肖像画って、これよね。ねえロナルド、知っていて? 近頃叔母様の幽霊が出るそうよ」

「……そのような話を、どこで聞かれましたかな」

 あやうく舌打ちしそうになったのを、どうにかこらえた。

 近頃社交界を騒がせている噂話は、ファラーにとって不愉快きわまるものだ。

「どこでもいいじゃない。ロナルドは見た? 叔母様の幽霊」

「そのようなものは、根拠のないただの噂話です。くだらぬ流言を真に受けるなど、王女のふるまいではありませんぞ」

「まあ、頭が固いのね。夢がなくてよ」

 叱られても懲りずに、プリシラ王女はつんと言い返した。

「わたくし、叔母様の幽霊に会ってみたいわ。シュルクってどんなお国なのか、聞いてみたい。物語に出てくるような魔神や妖精は本当にいるのかしら。あちらの女性がどんな暮らしをしているのかも、とても興味あるの。セシルお兄様にもお聞きしたいのに、あまり王宮へは来てくださらないのだもの。たまにいらしても、ご用が済めばすぐに帰ってしまわれるの。つまらないわ」

「お忙しいの。無理を言ってはだめよ」

 クララ王女が言った。好奇心旺盛な妹と違って、彼女は噂にいい印象はないようだ。

 気味が悪そうに肖像画を見て、すぐに目をそらしてしまった。

「もう行きましょう。あまり遊んでいると、本当にお母様に叱られてしまうわ」

 妹の袖を引いて廊下へ向かう。ファラーも二人と一緒に部屋を出た。

 そこでちょうど二人を追いかけてきた教師と出くわし、たちまち王女たちは連行されていった。

 見送ったファラーは、一人になってようやく上辺の表情を投げ捨てる。

 彼は端正な顔一杯に、苦々しい思いを浮かべた。

「なにが幽霊だ……あの方を冒涜するなど、いまいましい」

 低くこぼれた声は、誰の耳にも届かなかった。



 貴族の楽しみといえば華やかな宴や観劇、狩猟といったところが有名だが、あまり大きな声では語られないひそかな楽しみもある。

 最近流行っているというその遊びを、メロディは都にやってきて初めて知ることとなった。

「降霊会って……なんで、わざわざ幽霊を呼ぶの……」

 泣きそうな顔をしながら、相変わらずナサニエルにくっついてはエチエンヌをむくれさせている。

 場所は夜中の公園だった。セシルと出会い池に落ちた、あの因縁の場所である。

 親善試合が行われていた場所とは別の、植え込みの間の小さな空間に、薔薇屋敷の一同は身を寄せ合っていた。

「怖いからこそ楽しい、という心理もあるんだよ」

 フェビアンの説明は、メロディにはちっとも理解できない。

「楽しくなんかないよ。怖いのやだ」

 今夜は雲が多い。半分ほどに欠けた月は隠れがちで、ランタンの明かりだけが頼りだった。

 暗さは平気だ。堂々の田舎育ちだ。自然の風景を模した木立や茂みも、メロディにはむしろ居心地のよいものだ。

 だがそこに怪談が加わると、風の音にもおびえてしまう。

 夜の公園に彼ら以外のひと気はなかった。それも当然の話で、浮浪者などが入り込まないよう夜間は入り口が封鎖されるのだ。本来は入れない時刻に、管理人に特別に頼み込んで(賄賂と公爵の権威を利用して)こっそり入れてもらっているのだった。

「大丈夫、本当に降霊会やるわけじゃないから。霊媒師も呼んでないでしょ。ただの口実、お芝居だよ」

 あまりにメロディがおびえるからか、フェビアンは安心させるように言った。

「ま、勝手に出てくる分はどうしようもないけど」

「やめてえええぇ」

「だー、うるせえ! 脳味噌筋肉のくせにかよわい乙女ぶってんじゃねえ!」

 切れたエチエンヌが、メロディの頭をはたいた。

 ナサニエルを独占していることが、よほど気に入らないらしい。

 メロディは涙目になりながらも、少しだけナサニエルから離れた。

 あてつけがましく抱きつくエチエンヌに、ナサニエルは諦め顔でため息をつく。

 セシルはというと、屋敷にいるのと何ら変わりない優雅なたたずまいで、ジンに世話を焼かれていた。

 長い髪を一つに結い、動きやすい服装をしているのがちょっとだけいつもと違うけれど、セシルはどこにいてもやっぱり王子様だ。

 幽霊騒動の犯人をおびき出そうという作戦なはずなのに、彼の前には夜食の用意がされていた。水筒ではなくちゃんとポットからお茶を注がれて(それもたき火で沸かした湯を使った、熱いお茶だ!)のんびりくつろいでいる。

 どこにあっても調子を崩すことのない主従を見ていると、メロディも気が抜けて、なんだか少し落ち着いてきた。

「犯人、来るかなあ」

 メロディは立てた膝に顎を乗せた。

「来なかったらただの夜間ピクニックになっちゃうよ」

「そうだねー。まあそれも楽しいけど、多分来るよ。ね、団長?」

 訊かれたセシルは、優雅にカップを傾けながら頷いた。

「ん……来るだろうね」

「なんか、ふたりとも自信たっぷりだよね」

 メロディは胡乱な目つきで二人を見比べる。どうも彼らは、幽霊の正体に心当たりがあるのではないかと思えてならない。

「それとなーく情報まいといたからね。もともとこっちの動向に注目してる相手が、食いついてこないはずはないさ」

「いい加減教えてくれてもいいんじゃない? フェン、犯人が誰だか知ってるでしょ」

「いえいえ、わかりませーん。だってまだ確認してないもんね。もしかしたらっていう予想くらいしかできないよ」

「予想はしてるんじゃない」

「当たってるかどうかわからないから。ま、じっさいにつかまえてからの、お楽しみ」

「もう……」

 メロディは肩を落とした。セシルはともかく、フェビアンは絶対に面白がっている。いくら追求したところで教えてはくれないだろう。

「どうぞ」

 ジンがメロディにもお茶を差し出してくれた。

「あ、ありがとう」

 受け取って口をつける。こんな場所で淹れたというのに、美味しいお茶だった。

 屋敷の料理人が用意してくれた夜食もすばらしい。

 思わずほっこりなごんでしまった。

「なんか……こういうことしてると、オークウッドを思い出すなあ」

「ここと似てるの?」

「ううん、山も谷もないし、似てるわけじゃないけど、カムデンに来てからこういう森みたいな場所は見てなかったから」

 故郷の森に比べれば公園の木立なんておもちゃも同然だが、それでも都会の中では貴重な風景だ。

「よく家族と森や山に出かけたの。いつだったかなあ、父様と二人で山に行った時、急な大雨で立ち往生しちゃったことがあったんだよね」

 その時は日暮れまでに帰る予定だったのだが、とても身動きが取れなくて山中で一泊することになった。

 万一に備えて食料も携帯していたが、今夜のように豪勢なものをたっぷり持っていたわけではない。翌日、天候が回復して下山する頃には、ふたりは腹の虫を盛大に鳴かせていた。

「そうしたらね、大きな熊とばったり出くわしちゃったんだ」

 季節は春浅い頃。冬眠明けに加えて雨の後で、熊も相当に飢えていた。

 目の前に現れた人間を、猛る目で見据えてきた。

 メロディは思わず、父に尋ねた。

「父様……熊って、食べられますか?」

 父は頷いた。

「食える! が、臭い。冬眠明けだから、あまり美味くもないだろうな」

 この暴言に腹を立てたのか、熊は後脚で立ち上がり、猛然と襲いかかってきた。

「しかしメロディよ、贅沢を言ってはならん! 自然の恵みには常に感謝の心を捧げ、残さずありがたくいただくのだ!」

「はい、父様!」

 ――メロディ八歳、父三十九歳の時の思い出である。

「とはいっても、さすがにその場で全部食べることはできなかったから、残りはお土産に持って帰ったんだけど、これが重くて大変で」

「や、ちょっと待ってハニーちゃん。今途中経過がごっそり抜けた。その熊、どうやって狩ったのさ」

「どう、って……普通に?」

「――うん、ごめん、愚問だった」

 なぜかフェビアンはがっくりとうなだれた。

「そうだよね……あのおじさんだもん、熊くらい剣一本で狩っちゃうよね」

「その熊も不運だったな。せっかく冬眠から目覚めたばかりだったのに、可哀相によ」

 エチエンヌの言葉に、メロディは少し眉を下げた。

「だって……お腹空いてたし、食べなきゃこっちが食べられそうだったし」

「まさに、食うか食われるかだな」

 ナサニエルがうなる。

「ていうかよ、あんだけ幽霊にびびりまくっといて、なんで熊は平気なんだよ」

「熊は食べられるけど幽霊は食べられないじゃない!」

「――だあっ! 一瞬納得した自分が許せねえ!」

 セシルはこらえきれずに口元を押さえ、肩を震わせた。

「ジン……どうしよう、面白い」

 物静かで控えめな従者も、無表情ながら感銘を受けたように頷いた。

「こちらに(さそり)料理がありましたら、ぜひメロディ様にもご賞味いただきたかったですね」

「蠍……料理!?」

 フェビアンが真っ先に反応した。常の余裕がない声に、全員がおやと彼を見た。

「蠍って、毒虫じゃありませんでした?」

 メロディはセシルに尋ねた。

「種類があるんだ。食べられるのもいるんだよ。東方では薬として使われているらしい」

「へえ……」

「や、僕そういう、虫系はちょっと……」

 本気でたじろいでいるらしいフェビアンに、メロディは意外の念を覚える。彼のこんな姿は初めて見た。

「どうしたの? フェンだって(いなご)くらいは食べたことあるでしょ」

「ないよ! 虫なんて食べません!」

「ええ? うちじゃ普通に保存食なんだけどな……蠍ってどんな味だろう」

「興味持たないで! うっかり出てきたらどうするのさ!」

「やわくせーこと言ってんじゃねえよ、ボンボン育ちが。人間飢えりゃ、何でも食うっつの」

「いやいちばんのボンボンこの人だから! 元王子様だから!」

 では蛇はどうだ蛙も美味いぞと次々話が飛びだす。食べ物談義ですっかり盛り上がってしまった一同の中で、真っ先に本来の目的を思い出したのはナサニエルだった。

「こんなに騒々しくしていたのでは、幽霊など出てこないのでは」

 言われて、はたとメロディは思い出す。そういえばそのためにここへ来ているのだった。

 口をつぐんでセシルをうかがうと、彼はおっとり答えた。

「大丈夫、もう来てるよ」

「えっ」

 身をすくめるメロディの横で、エチエンヌが空いた皿に手を伸ばした。

 振り向きざま、手首を返して投げつける。すぐ近くで「わぁっ」と悲鳴が上がった。

 かそけき月明かりの中、木立の陰にドレスが見えた。一斉に腰を上げた一同にあわてて、くるりと背を向ける。がさがさと不器用な物音を立てて逃げていく姿に、メロディから恐怖が吹き飛んだ。

 幽霊なんかじゃない。あんなに騒がしくてどんくさい幽霊がいるものか。

「この――待てっ!」

 誰よりも早く飛び出して、メロディは偽幽霊に襲いかかった。


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