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薔薇の騎士団  作者: 桃 春花
第一話 亡き王女のための舞曲
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 メロディ・エイヴォリーは都から遠く離れた東部の田舎で、家族と素朴な村人たちに囲まれ、のびのびと育った娘だった。

 父は伯爵という身分を持ち、オークウッド地方の領主として、また優れた武人として国内外に名を知られた人である。したがってメロディは、伯爵令嬢――れっきとした貴婦人として、いずれは宮廷の社交界に登場し、華やかな活躍をするべき生まれだった。


 ――普通に考えれば。


 当人を含め誰一人、そんな世間一般の常識を意識したことなどなかったが。

 話があるから来るようにと、父からあらたまった呼び出しを受けたのは、メロディがもらったばかりの剣を熱心に磨いていた時のことだった。


 メロディの家では、十五歳になると、自分のために鍛えられた剣を授かるというならわしになっている。かつて戦乱の時代には、それが初陣の歳だったからだ。末っ子のメロディにも、父は兄たちと同じに剣を用意してくれた。その際、女子であるという点については、家族の誰も言及しなかった。

 メロディもそこは一切気にしていなかった。武門の家に生まれ、幼い頃から何でも兄たちと同じようにさせてもらっていた彼女は、この贈り物を心から喜んだ。毎日熱心に磨いて、磨きすぎですり減るぞと兄たちにからかわれたほどだ。そういう彼らだって、己の剣をもらった時には同じことをしていたくせに。


 剣と道具をていねいに片づけて、メロディは父の元へ急いだ。武術の訓練ではなく書斎に呼ばれるのは珍しい。これまで仕事に関わらせてもらうことなどなかったのに、やはり十五歳という節目を迎えて、大人の仲間入りができるのだろうか。そんな期待も胸に扉を叩いたメロディを待っていたのは、予想もしない話だった。

 父は、都へ出てシャノン公爵という人に仕えるよう言ったのだ。


「シャノン公爵様、ですか? あの、お仕えするって、どういう……?」


 はじめは困惑するばかりで、話がうまく飲み込めなかった。

 たとえ、ドレスなど滅多に着ることなく、ダンスや音楽の代わりに馬術や武術を学んでいても、自分が女であるという自覚くらいは持っていた。それも、深窓の令嬢と呼ばれる立場である。深窓どころか深い川でも森でも平気で入って行けるが、それはさておき働きに出るような身ではない。


「昨年、エルシー姫の遺児であられる方が、シュルクより亡命されてきたことは知っているな?」


 父の説明は、まるで関係のなさそうな話から始まった。


「――はい」


 それがどうつながるのかと、性急に先を知りたがる気持ちを抑えて頷く。

 昨年宮廷を大いににぎわせた話題は、オークウッドのような田舎にも伝わっていた。

 大陸南部の国シュルクから、メロディの住むイーズデイルへ、王子が一人亡命してきたのだ。

 イーズデイルからシュルクまで、陸路を行けば優に一年はかかる。文化も言語も異なる遠い国だが、イーズデイルとの交流は盛んだった。

 と、いうのも、大陸はバストロ内海を囲んで大きく湾曲していて、大陸北西端のイーズデイルとシュルクとは、内海を挟んだ対岸同士なのだ。船で海路を行けばひと月ほどの旅程である。イーズデイルにとって、シュルクは重要な国のひとつだった。

 王子の母親は、シュルクへ嫁いだイーズデイルの王女だった。現女王の妹にあたる。この人自身は既に故人となっているが、両王家の血をひく高貴な王子は、シュルクの有力な王位後継者と目されていた。

 しかし、結局彼が王位を継ぐことはなかった。


「かの国は相続に関する決まりもわが国とはいろいろ異なるからな。いかに血筋がよくとも、やはり国内の有力部族を後ろ楯にする兄君の方に軍配が上がったわけだ」

「はい」


 シュルクは一夫多妻制なので、エルシー姫の王子には異母兄弟姉妹が山ほどいるらしい。その中の一人、第四王子ハサリムが、シュルクの王座に納まった。今から二年前の話である。

 その際にどういう経緯があったのかまではわからないものの、穏便に片が付いたわけではないようだ。王子は王位争いに敗れたのみならず、国内にとどまることも許されず、母親の祖国であるイーズデイルへ亡命してきたのだった。

 メロディはそうした話を、直接ではなく両親や長兄の話を傍で漏れ聞いて、断片的に記憶していた。

 その点を承知している父は、あらためて説明して聞かせた。


「王子は今ではシャノン公爵と呼ばれてカムデンに住んでおられる。――さよう、お前にお仕えしてもらいたいと言ったお方だ」


 目を瞠る娘に、父は頷いた。


「議会の承認を得て、今後はイーズデイルの貴族として暮らしていかれることになった。それはよいのだが、実は問題がひとつ残っていてな。シュルクのハサリム王は、弟を追放しただけでは安心できないらしく、今でもお命を狙っておられるのだ」

「兄君が、ご自分の弟君をですか?」


 兄たちから過剰なほどに可愛がられているメロディには、理解しがたい話だった。


「残念だが、そうした例は数え上げればきりがない。特に王家というところは、肉親同士の争いに血が流れるなど当たり前といってもよい。何よりも強さが尊ばれるかの国において、己の障害となる相手を武力でもって排斥するのは、むしろ王として頼もしい資質だと受け入れられる傾向にある」


 不快感に顔が強張るのを感じる。娘の潔癖な反応に、父は首を振って諭した。


「国が違えば事情も異なる。己の常識とは違うからといって、一方的に非難してはならん。その国には、その国の常識があるのだ」

「……はい」

「かの国の事情について、お前が悩む必要はない。それはシュルクの国民に任せればよいことだ。しかし、シャノン公は今ではイーズデイルの国民だ。よって、我らの常識でお守りすればよい」

「わたしは、シャノン公爵様をお守りするために行くのですね?」


 ここでやっと、本題の趣旨が理解できた。ただ、それはそれで不可解な点があった。


「でも、なんでわたしなんでしょう? そういうお役目なら、兄様たちの方が適任だと思いますけど」


 メロディも物心ついた頃から父の手ほどきを受けて、ひととおりの技は身につけてきた。それなりに腕に自信はある。とはいえ、十五歳になったばかりの、まだまだ未熟者だ。経験も技量も、父や兄たちには遠く及ばない。そのことをメロディは、奢ることなくありのままに自覚していた。

 娘の言い分に、もっともだと父も頷いた。


「しかしライナスは我が家の跡取りだ。さすがに公爵に差し上げるわけにはいかん。ティモシーとダニエルも、既に騎士団に所属する身だしな」


 オークウッドは国境沿いにあるため、すぐ近所に騎士団が駐屯していた。次兄と末兄はその団員として働いている。たしかに、職務を離れて個人の護衛に就けるものではない。


「それにな、この役目はお前に頼みたいのだ。お前だからこそ、勤まると思っている。どうだ? 引き受けてはくれんか」


 そこまで言われて、うれしくないはずはなかった。お世辞など言う人ではないから、本当にそう思って言ってくれているのだろう。余りくじを引いたといじけさせないよう適当なことを言っておだてているわけではない。本当に余りくじなら、いっそはっきりそう宣言する人だ。だから父の言葉を疑うものではなかった。

 それでも、メロディには疑問と不安が残る。


 本当に自分に勤まるのだろうか。役に立てるのだろうか。そんな役目を引き受けるには、絶対的に経験が足りない。メロディの経験といえば、賊の討伐に出かける父たちの後ろをついていったことがあるくらいだ。手伝ったといっても、己で剣を交えたわけではない。

 自分にはもっと修行が必要なはずだった。いきなり実務を任されても、責任をまっとうできる自信はない。ましてその仕事には、人の命がかかっているのに。

 シャノン公爵のためには、もっと経験豊富な人材を充てた方がいいのではないだろうか。そう考えたのを読み取ったように、父は言い添えた。


「なに、お前一人で公をお守りせよと言っているのではない。公には既に、有能な者が何人もついている。お前は彼らと協力し、指導を受けつつ、お前なりの働きでお仕えすればよいのだ」


 ――この言葉が、メロディの心を決めた。

 頼もしい先輩たちがいるというなら話は別だ。それならば、騎士団に入団するのと変わりない。働きながら同時に修行もできるのだ。

 一気に気が軽くなった。そうなると、自分が身につけてきた技を役立てる機会、活躍できる場というのは、大いに魅力的だった。本来働きに出るなどありえない深窓の令嬢という立場は、きれいさっぱり忘れていた。


「わかりました。わたしにできる限り、力を尽くして公爵様をお守りいたします」


 力強い光を瞳に宿して、メロディは宣言した。

 満足そうに父は頷く。


「うむ。よろしく頼む。公の御身はまだ安泰には遠い。女王陛下も甥御のことを心配しておられた。あの方に穏やかな暮らしが訪れるよう、お前が支えとなって差し上げよ」

「はい!」


 元気よく返事をしてから、メロディはひとつだけ気になる点について尋ねた。


「ちなみに、公爵様って、どんな方なんですか? 父様がそれだけ肩入れなさるということは、ご立派な方なんですよね?」


 いくら時の人、噂の重要人物だからといって、地方の一領主である父が身辺警護を引き受けるという話にはならない。そんなことは父がでしゃばるまでもなく、女王が手配しているはずだ。それをあえてでしゃばるのは、個人的に公爵を助けたいと思ったからだろう。父は年に何度か女王の元へ伺候しているから、公爵と交流を持つ機会があっても不思議はない。

 この父がそれほど気に入るとは、どんな人なのか。


 遠い南の国の、元王子様。現在は公爵という貴族の最高位だ。女王の甥で、王太子には従兄にあたる人。血筋や身分を思えば、メロディなど気安く近づける相手ではない。

 気難しい人だろうか。気位の高い人だろうか。兄と王位を争うくらいだから、野心にあふれた人物だろうか。

 人間的に問題があるなら、父が気に入るはずがない。そう思っても、十五歳の田舎育ちの少女にとっては不安が大きかった。

 父は意味ありげな微笑を浮かべただけで、まっすぐな答えは返してくれなかった。


「それは、お前が自分の目で確かめ、判断せよ。私は公のお力になってくれと頼んだが、お前がそれを望まぬならば無理強いする気はない。公のお人柄を直接確かめ、忠義を捧げるに値するか否か、お前自身の気持ちで判断すればよい」


 ――この言葉を胸に刻み、メロディは生まれて初めて王都へやってきた。

 腰には真新しい自分の剣。その重みを、大人として仕事を任される責任だと己に言い聞かせる。

 まず、いかにして公爵に受け入れてもらうかが課題だった。父から話が通っているとはいえ、メロディを見ればきっと首をかしげられるだろう。普通の人が、こんな小娘に身辺警護を任せようなどと思うはずがない。

 これまでどれだけ訓練を重ねてきたのか、どれだけ本気で役目に臨もうとしているのか、それをわかってもらえるかどうかは、メロディの頑張り次第だ。

 公爵に会ったらこう言おう、ああ言おうと、旅の途中何度も場面を想像しながら台詞の練習をしてきた。


 ――それなのに。


 初の顔合わせは水の中。

 よりにもよって、その公爵を道連れにして、池に落っこちてしまった。

 先行きは、限りなく、不安だった。





「あっ、あのっ、わたしはご覧の通り女の身で、まだ歳も足りない未熟者ではありますが、父から武術はひととおり仕込まれて育ちました! じ、実戦経験はほとんどないのですが、精一杯勤める所存ですので、どうかお傍に――」

「はいはい、わかったから。ちゃんと肩までつかりなさい」


 身を乗り出して必死に訴えようとするメロディの頭に、大きな手が乗せられる。浴槽に押し戻そうとする力に、メロディは抗った。


「いえあの、公爵様こそ、早く温まってくださいませんと」

「ああ、入るよ……君ね、女の子なんだから、前を隠すくらいしなさい。まあ見て楽しいほど育ってないけど」


 言われてようやくメロディは胸元を隠した。広い浴槽に張られた湯に、顎下までつかる。それを確認して、シャノン公爵セシルは自分のシャツに手をかけた。

 公爵邸浴室でのやり取りである。

 一度に十人くらい入れそうな立派な浴室には、二人の他に女中が一人とセシルの従者もいた。


「旦那様……お嬢様と一緒に入られるおつもりですか?」


 メロディの世話を焼いてくれていた、まだ若い女中がためらいがちに聞く。ボタンを外す手を止めて、セシルは首をかしげた。


「ふむ。やはりまずいかな」

「いえっ、お気になさらず! あ、でもむしろ失礼でしょうか。公爵様と一緒にお風呂だなんて」

「……君がいいなら、構わないけど」


 メロディはこくこくと首を縦に振った。

 男性と一緒に入浴だなんて、はしたなく非常識だと(そし)られるふるまいである。兄たちに混じって常識とも女らしさとも無縁な生活をしていたメロディにも、そのくらいの認識はあった。だが常識も時と場合によりけりだ。この場合は仕方ないと割り切るべきだろう。守るべき人に風邪などひかせてはいけない。

 服を脱ぐセシルから、メロディは礼儀正しく視線をそらした。セシルの方でも気を遣ってくれているようで、メロディから離れた反対側で湯に入る音がする。二人は背中を向け合い、視線を合わせないまま話をした。


「あの……ご迷惑をおかけして、本当に申し訳ありませんでした」

「もういいよ、そんなに謝らなくても。こっちから巻き込まれに行ったんだし」


 鷹揚な答えと一緒に水音がする。


「アラディン卿からは十五歳だと聞いていたが……そうなのかね?」

「はい。先月誕生日を迎えたばかりです」

「ふむ。それにしてはずいぶん小さいな」

「…………」


 気にしていることを指摘されて、メロディは少し落ち込んだ。

 女性の中でもメロディは小柄な方だ。それを活かして身軽に動く戦い方を父には教えられたが、どうしても不利は否めない。できればもっと背がほしい。

 またセシルが、標準をはるかに超える長身ときている。彼と並ぶとメロディは肩にも届かず、完全に大人と子供だった。

 背は高くても細身なので、セシルにいかつい印象はない。端正で優雅な、見るからに貴公子然とした人物だ。とはいえ、小柄な少女に守られたいとは思わないだろう。


「あの、たしかに小さいですけど、小さいなりの利点があると父も言っていて……そ、それに、持久力と脚力には自信がありますが」

「ああ、それは今日じっさいに見て知っている。大した駿足だった」


 感心したようにセシルは言う。


「間違えて襲いかかった騎士たちも、見事にあしらってたね。彼らもまさか、女の子に投げ飛ばされたとは思ってないだろう」

「……はあ」


 そういえば彼らはなぜ集団で取っ組み合っていたのだろう。試合というにはずいぶん荒っぽく品がなかったように思うが、騎士団同士の闘いとなるとあんなものなのだろうか。

 自身が及ぼした影響など知りもせず、無邪気に首をかしげるメロディである。


「で、君は私に仕えたいと?」


 この言葉に、急いで答えた。


「はい! さぞ頼りないとお思いでしょうが、頑張ってお役に立ってみせますから!」

「あー……うん……まあ、いいけどね」


 水音にまぎれて、息を吐くのが聞こえた。


「わかっていたけど……本当に子供だな」


 独り言のつもりだろうが、しっかり聞こえてしまった。浴室は音が響くのだ。


「公爵様は、おいくつなんですか?」

「セシルでいいよ。二十五だ」

「じゃあ、うちのいちばん上の兄と同じです。親子ほどには離れていませんよね」


 あまり子供扱いしないでほしいと、言外に意味を込める。

 セシルは小さく笑った。


「私は成熟した大人の女性が好みなんだ。最低でも三十歳以上でないと、恋を語る気にはなれないな」

「別に恋は語っていただかなくて結構ですからっていうか、それって年上好み!?」

「言葉を選んでくれてありがとう。口の悪い部下など、年増好みと言うがね」

「年増……い、いえ」


 メロディは急いで驚きを押さえ込んだ。


「そうですか。まあ、好みは人それぞれですから、よろしいのではないでしょうか」

「いいの?」


 意外そうに聞かれる。相手に見えていないと知りつつ、メロディは頷いた。


「はい。個人の嗜好にどうこう言うつもりはありません。ですが、わたしのお役目に好みは関係ありませんよね? 必要なのは能力とやる気だと思いますが」


 どうせなら好みの女性を侍らせたいかもしれないが、それは別の場面でかなえてもらうとして、メロディにそういう条件は求めないでほしい。


「やる気は誰にも負けないつもりですし、能力も……それなりにあるはずです。なのでどうか――」


 先程よりも大きな水音が響いた。セシルが浴槽から立ち上がったのだとわかる。今振り向いてしまったらたいへん気まずい事態になる。メロディはじっと前だけを見つめた。

 身支度の音がして、やがてセシルが歩いてくる。素肌の上に一枚着ただけの公爵は、仕方なさそうな気配とともに笑っていた。


「ずいぶん物好きだと思うが、まあ好きにしたらいいよ。後でうちの連中に紹介しよう。しっかり温まってから出るんだよ」

「そういう公爵様は、早すぎですよ。まだ温まってらっしゃらないでしょう」

「私はそれほどやわじゃない。濡れて気持ち悪かったから入っただけだ」

「わ、わたしだって……」

「せっかく沸かしたんだ、ゆっくり入るといい。その間に着替えを用意させるから。しかし、どうしようかね。女の子の服なんて、うちにはないしな」

「いえ、男物で結構ですから」


 メロディの言葉を無視して、セシルはさっさと浴室を出ていってしまう。若い従者も彼の後に続き、メロディは女中と二人で残された。


「お嬢様、お寒くないようでしたらお身体を洗いましょう。一旦出ていただけますか?」


 女中が声をかけてくる。まるきり普通のお嬢様扱いだ。メロディを武人としてなど見ていない。

 仕方ないと思いつつ、気持ちは沈んだ。

 セシルもメロディに何かを期待しているようすではなかった。好きにしろとは言われたものの、本当に受け入れてもらえたとは思えず、ため息が出てくる。


 仕方ない。自分がまだ十五歳の、女の子なのは事実だし、となると戦力としてあてにされないのも当然だ。認めてほしければ、しっかり働き実力を示すしかない。

 メロディは弱る気持ちに言い聞かせた。

 少なくとも、話も聞かれず追い払われたりはしなかった。それだけでも上出来だ。

 働く機会は与えられたのだ。

 セシルは思っていたよりもずっと親しみやすい人物だった。

 口調は優しいし、気さくと言ってもいいだろう。池に落ちそうになったメロディを助けようとして、その結果自分も落ちてしまうような人だ。

 好感を持って付き合えると思った。彼を守るため剣を取ることに異存はない。


 ――ただ、どうにもつかみどころのない印象ではあった。

 自分の目で確かめ判断しろと言った、父の言葉を反芻する。

 メロディは頭をひとつ振って、湯から上がった。


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