発見
短編小説七作目です。
今回は前の六作とは違ったジャンルで書きました。
ほんの少し、残酷な描写があるので苦手な方はご遠慮下さい。
×/8 晴れ
今日はとても疲れた一日だった。田舎の村に一つしかない発電機が壊れたという連絡を受け、この村に来た。来るまでに三日も掛かってしまった。村に到着したときには辺りは真っ暗で、僕は急ぎペンションに向かいチェックインを済ませた。
ペンションは老夫婦が営んでおり、気さくで暖かな人柄で笑顔が絶えない二人だった。内装も暖かみのあるデザインで落ち着けるものだった。夕食を済ますと、僕は自分の借りた部屋に案内された。部屋の説明を受けたあと、僕はすぐにベッドへと落ち着いた。
×/9 晴れ
朝食を済ませたあと、村長に挨拶へと向かった。村長も気さくな方で、修理許可証と歓迎の言葉を頂いた。そして、村長自ら発電機のある場所まで案内してくださり、道中にある村の名物や名所も紹介してくださった。村長の言うとおり、この村は本当に素晴らしいところだ。広大な草原には野うさぎがじゃれあい、木々には季節の果実が実っている。草原の奥には壮大な山々がこの村を見守っている。
一時間くらいだろうか、ようやく発電機の設置されている小屋へと到着した。修理には時間がかかると思っていたが三十分程度で終わってしまった。簡単な部品交換と配線修理で済んでしまったからだ。あと三日ほど日程を取っていたのだが空白となってしまった。すぐに帰ろうかと思ったが、なんと明日、村全体でBBQを行うらしいのだ!参加しない馬鹿がどこにいるだろうか? 会社には適当に連絡しておけばいいだろう。
×/10
早朝、妙な叫び声で目が覚めた。恐る恐る外へ出てみると村人達が慌てていた。どうやら、野犬か狼かが出たらしく家畜の動物たちが殺されてしまったらしい…… 爆竹や銃で追い払えたらしいが、怖いことだ。だがそんな恐怖心も夕方に始まったBBQでしだいに薄れていった。
私は初めて鹿の肉を食べたが非常に美味かった。生でも食べられると聞いて試してみたが、これも美味かった。少し酸味があり、マリネを食べているような感じだった。村の特産品の果実で作った酒も美味かった。甘酸っぱくフルーティーな味で飲みやすかった。
まともな新婚旅行にも連れていってあげられなかった妻と、今度この村に来ようと思う。長期休暇を取り、妻にもゆっくりしてもらいたい。
×/11 曇り
同じペンションに泊まっていた中年の夫婦が見当たらない。昨日のBBQでも見かけなかった。ペンションの主人に聞いてみると、昨日の朝早くに急用が出来たといってペンションを後にしたらしい……
正直、この文章を書いている僕は気が気じゃない。主人の話は嘘なのだ! これを書く数分前のことだ。なかなか寝付けず、特産品の酒を飲みながら窓の外に目をやった。そのとき僕は見てしまった。村人達が車を川に沈めているところを! あの車はペンションを後にした中年夫婦のものだ。村人達は確実に何かをしている………
今から一時間後の朝の三時、僕はここを抜け出すつもりだ。
×/12 13? どっちだかしったことではない 雨だ
最悪だ。村人達に見つかってしまった。なんとか、ペンションの地下に隠れている。
だがさいあくだ 人の肉やほねがそこらに ちらばっている はやくここか
いま じぶんのへ屋ににげてきた かぎを閉めベッドやいす とにかく家具をドアの前におき
バリケードを作った BBQのにく 酒のげんりょうは ううう考えたくも無い
どうすればいい 村びとたちの叫びごえがきこえる 右足のほねは おれてしまったようだ
ちがとまらない はやく帰ればよかったんだ だめだ ドアがもたない あいつらがはいってきてしま
俺はそんなことが書かれた血にまみれた手記を、浴室の壁とバスタブの間から発見した。そのとき、後ろから主人の声がした。
「BBQの用意ができましたよ……」
読んでくださってありがとうございます。
ホラー好きの方にはがっかりだったでしょうか……?
えー、次回作に期待してください……
それでは……