夜が、完全に戻るまで
掲載日:2026/01/03
―― 開演 ――
休戦の夜、戦場は静まり返っていた。
瓦礫に腰を下ろしたニアは、
言葉を挟まず、ただその光景を見ていた。
ジンは、ノアと向かい合ったまま動かない。
ノアだけが、席を立とうとしていた。
話は、終わっていた。
「行くのか」
答えは、なかった。
それ以上、引き止めることも。
「相手は、手段を選んでこない」
「……それも承知だ」
壁に身を預け、エリスは腕を組んだ。
指先が、無意識に二の腕を擦る。
小さく、息を吐く。
「本っ当に、面倒くさい人たちなんだから…」
ジンが黙ったままなのを見て、
エリスは肩をすくめた。
雲が切れ、月明かりが差した。
ノアは肩越しに振り返り、
かすかに笑みを浮かべて言った。
「勝算のない戦はしない」
彼は、そのまま、夜の向こうへ去っていった。
足音は、もう聞こえない。
ジンは、その場から動かなかった。
夜が、完全に戻ってくるまで。
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