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夜。
俺達は噴水広場を通り過ぎアーディスの宿屋に到着した。
レインは「また明日」と自身の家に帰っていき、フォックスはクロウという名の者の家へと消えた。
宿屋のエントランス。
そこでクレラによって引き合わされたのは、アスカとそのお姉さんだった。
低いテーブルを挟んで向かい合うソファ。
アスカちゃんはストレートの長い黒髪で、お姉さんはウェーブの白髮だった。
まだ若いのに白髪なのは何処か魔法使いらしさを感じさせる。
先にアスカが口を開いた。
「私アスカ。どういう事なの?私とお姉ちゃんがこんな男に引き合わされるなんて」
アスカちゃんは白のカーディガンに黒のミニスカを履いていた。
それにニーハイっていうのかな。
タイツみたいな長いソックスを履いている。
そしてクレラの情報通りツンツンしていそうだった。
「私は本名を隠してるの。『ホワイトロック』って呼んで。あと私が白髮なのは……その……魔力の使いすぎで」
お姉さんの方がとっつきやすそうだな。
動きやすそうな藍色の鎧を着ている。
言わずもがな戦闘力は高いだろう。
アスカちゃんは同い年くらい、ホワイトロックさんは二十歳くらいに見えた。
俺の隣にはクレラが座っており、のんびりコーヒーを飲んでいる。
宿屋の使用者とその連れは飲み物をサービスして貰えるようで、俺は今晩この宿屋に泊まる事になっていた。
因みにクレラは彼女ら姉妹の家に一泊する事になっている。
「俺の名前はソラ。あ……よ……よろしく!」
美女三人に囲まれるような経験も十七年生きてきて無かったのでテンパらざるを得なかった。
アスカちゃんがゴミを見るような目で見てくる。
クレラの幼馴染って言ってたけど、あまりクレラと似てないな……。
まあでも関わっていくうちに良い所見つかるかもしんねーし。
「俺今日から大剣使いになったんだ。君達はどういった戦い方をするの?」
正直美女三人に囲まれて眠気は若干引いてきていた。
でも、俺はコーヒーは辞めとこう。
眠れなくなったら明日しんどいし。
「私は普段は弓使いをしているの。ごめんこれ以上は控えさせてくれる?」
「私はモンクよ。何か文句でもあるの?」
これはアスカちゃんが言うから面白い。
他のやつが言ったらクソつまんねーけど。
俺は笑みを浮かべながらアスカちゃんが素手でバッファローと戦っている所を想像した。
うーむ是非とも仲間に加えてお目にかかりたい。
「実は魔王復活の時が近づいてるとの噂なの。それでクレラを呼んだんだけど、その大剣『ソーイアロ』だよね?一緒に魔王復活を阻止しに行かない?」
ホワイトロックは真剣な表情だった。
何処か男気があって尚且つ真面目そうだ。
アルテマでのゲームクリアは俺の日本への帰還に直結する。
断る理由は無かった。
それにホワイトロックさんかなり頼もしそうだ。
クレラもあのモリガンって男の娘で将来有望だった。
もしかしたらアスカもあの細い腕で怪力なのかもしれない。
フォックスやレインといった者たちもいるし、魔王復活阻止の為の仲間達は皆どこか頼もしかった。
でもアレだろ?結局復活しちゃうんでしょ?
ゲームのシナリオとしてはそれがセオリーだが一応真剣に頷いてみる。
そもそもこの世界をゲームの世界と認識しているのは俺だけだった。
死と隣り合わせだけど別にそこまで帰りたくねーな。
あれ、俺ニヤけてない?
現実の世界ではマジで巡り会えないような美女三人と対面して、若干顔が赤くなっているかもしれなかった。
(あーもう!高校生なんてこんなもんですよ)
俺を見るクレラの目は微笑んでいた。
取り敢えず今日は宿屋で寝る!
凄まじい一日だったけど、魔王復活阻止の流れで身を任せよう。
俺達が解散しようとした時、宿屋の戸が開きフォックスが入ってきた。
「クロウは留守だった。俺も今夜は宿屋に泊まろう」
女子達は家に帰っていき、俺は二階のベッドに横になるのだった。
部屋数の関係でなんとフォックスと相部屋だ。
「俺も魔王復活の阻止に向けて旅に同行してやる。だが俺の目的は悪魔でその大剣だ。それを忘れるな」
フォックスのような亜人達に差別とまではいかないにしろ、種族間の問題がありそうなのは宿屋の店主の反応で分かった。
クロウって人ももしかして鳥人……?
真実は定かではないが、俺は若干フォックスに同情した。
大剣ソーイアロ……。
英雄の剣が異世界人である俺を選んだのは確かだ。
でもフォックスのそのサーベル、似合ってるけどなぁ。
何にせよこのフォックスにしろ、あのレインにしろ、対魔王復活に向けて動いてくれそうなのは確実だった。
俺が日本に帰るが最優先事項だが、このアルテマの平和を望んでいる自分もいた。
それはクレラを始めとするキャラクター達が人間味溢れるからに他ならない。
聞けばフォックスは予想通り二十歳だった。
何処か孤独を匂わせる彼にクロウという名の仲間がいたのは幸いと言うべきか。
(ふわぁ……今日はもう寝よう)
こうして俺のアルテマでの一日目は幕を閉じた。
明日からここアーディスを拠点とした冒険が始まる。
情報収集、モンスター討伐、時には金儲けでさえ行われる事が予想される。
アルテマサーガは始まったばっかりなのだ。




