表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ARTEMA SAGA  作者: ロゼオ
第2章 レインボーガーデン
21/21

21

翌朝、俺達は終末の谷に来ていた。

此処を抜ければいよいよジン王国最東端の港町「ハーディーズ」である。

山々の間の細い道を、八人で闊歩していく。

それにしてもレダスが居るのは心強い。

何せこのゲーム「アルテマサーガ」のクリエイターだからな。

何処にどんな敵が居るかは知り尽くしているはずだ。

喩え生態系に多少の変化はあっても、終末の谷を越える事は、彼と一緒なら容易なはず、だったーー。


「また顔色曇ってる。ソラは笑顔が足りないよ。もっと笑お?」


確かにクレラの笑顔はこの上なく魅力的だが……。

それに笑っていれば結構人生なんとかなるって言うしな。

俺は意図的に口角を上げた。


「んー、ちょっと不自然?」


と首を傾げるクレラ。

彼女は大人びた十六歳だ。

だが俺の笑えない事実の背景を存じ上げていないのか。

この話はいずれする事になるのだろうか。

まあいい……笑顔の練習をするのも悪い気はしない。


「この先ではハーピーが出没します。幻術にご注意を」


ターバンを着けた黒人レダスが注意を促す。

ハーピーって一般的には翼の生えた女性で眠らせてくるヤツだよな?

幻術ってなんだ?

俺達が身構えながら進んでいくと対象は現れた。


小柄な女性に黒い羽。

早速飛びながら子守唄を歌ってくる。

駄目だ……この効果には抗えない。

幻術……っ……?


気づけば俺は真っ暗闇の世界にいた。

手首を鎖で繋がれ、不気味な祭壇の上だった。


「笑おうよ」


何処からか少女クレラの声がした。

その声は確かに俺の不安を打ち消したと言える。

笑顔ーー。

いつからか忘れ去られていた。

運命の人だと感じさせるクレラは、それを思い出させてくれるのか。


その時アレサンドロの鎧が鈍く光った。

銀色のトゲトゲしい鎧は此処に来て俺を励まそうとでも言うのか。


(クレラちゃんはアスカだけでなくホワイトロックにも声をかけるつもりだよ。それだけじゃない草原の一軒家のマリナにも、ソーイアロの娘エリザベスにも、隙あらば声がけするつもりだった)


「そんな……何で……!?」


(本人も自由を望むんじゃないかな。あのタイプは型にはまらないよ。まあ運命の人だと思うんならクレラちゃんを信じてみな。きっと笑顔も取り戻せるだろう)


「ありがとう……アレサンドロ」


俺はこの幻術を打ち砕く!

祭壇の上で前方を睨みつけた。

不器用な俺にクレラちゃんが齎したかった事。

本人も多少は傷つく覚悟でその道を選んだはずだ。

その覚悟に比べればこんな幻術大したことねーよ!


俺が目を覚ました時、俺はクレラとアスカに見守られていた。

どうやら誰一人欠ける事なく、ハーピーとの戦闘は終わっていたようだ。

アスカちゃん……結構優しいよな?


それにクレラはホワイトロックさんにも俺を紹介するつもりなのか……。

もしかして彼女、俺の傷ついた過去を知ってる?

バカ言え此処はゲームの世界だぞ?

運命の人とは見えない糸で引き合うとでも言うのか。

俺は上体を起こした。

幻術の後なので気分が悪い。


ホワイトロックさんの弓矢がハーピー戦では重宝したそうだ。

彼女はまだ肝心の裏魔法を披露していないが、いずれ目の当たりにする事になるだろう。

恋愛面から見てもスペックは高い。

真っ白な髪も似合ってるし、いつかクレラのサポート関係無しでも振り向かせたい。

あれ?俺も彼女複数にいつの間にか同意してる?


クレラに失礼なんじゃないか。

そんな気持ちも無いわけではない。

複数の彼女を持たせようとする彼女の真意とは。

だがそれならクレラの我儘も多少は聞いてあげないとな。

彼女は賢い子だ。

自分で他の男との関係にも線引きはするだろう。


女の子に執着しない強い男性。

その為にも自然な笑顔は必須だった。

見ててくれアレサンドロ、そしてソーイアロ。

アンタらの人間性を俺は超えてみせる。

優劣なんかそう易々と付けるべきじゃないかもしんねーが俺はクレラの彼氏候補としてこの道を乗り越えてやる。


時にはカチンと来ることもあるだろう。

理不尽にもぶつかるだろう。

それでも引き返したくはなかった。

他人だった俺に大剣を手に入れる手助けをしてくれ、アスカ達にも引き合わせてくれた。

そして辛いのはクレラ達ヒロインズだって同じだ。

いや寧ろ俺が居るのは天国だ。


立ち上がった俺はクレラ、アスカ、そしてホワイトロックを見つめた。

ヒロインズはこれから増える事はあるのか。

まだハッキリと決まった事ではない。

いや、俺の良心がクレラ一人を選ぶと言い張る可能性も無きにしもあらずだ。

俺まだ十七だしな。

取り敢えずは複数の彼女候補を持つ存在として、自分を高めようという所存だ。


「ソラも歌上手かったっけ?」


ハープの音を操るレインが言った。

ハーピーのような特殊効果は、俺は発揮できそうにないが……。


「まあ多少はな」


バンドのボーカルとして一年半以上練習してきた。

中学のラグビー時代に磨いた根性で一人カラオケなどで練習していた。

肝っ玉が座ってくれば歌も変わるかもしれない。

そういった意味ではアルテマでの冒険は俺への試練と言えた。

いつかクレラ達とも別れる事になるのかー。

それまでには想いを伝えないと。

俺達は再び終末の谷を歩き出した。


(ん?上空に人影が!アレ、アニキじゃないか?)


金色の空飛ぶライオンに跨るアニキ、ナギサ、そしてゴブリン。

ナギサも良い笑顔してそうだよなーってアニキ、アーディスを旅立ったんだ。

弟子にしてもらえて良かったなナギサ。

レダスらも上空のアニキ達に気づいたようで、方角は同じ東だった。


港町ハーディーズ。

そこでアニキは船に乗るはずだ。

一緒の船に乗りたいけど彼らの方が一足早く着きそうだ。

それにしてもアニキ、ハーピーの歌声もシャットアウトしちゃうんだろうなー。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ