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ARTEMA SAGA  作者: ロゼオ
序章
2/6

ようこそ異世界へ

気が付いた時、俺は草原に座りこんでいた。

当然さっきの制服姿で、帰宅時に上着とマフラーだけ脱いでネクタイはしている状態だった。

下は黒の長ズボンである。

その俺が何故こんな所にーー。

此処はゲームの中の世界なのか?


見れば蒼色のバッファローのようなモンスターの群れが前方にいた。

草食獣だろうから襲っては来ないだろうけど中々圧巻だ。

その数、およそ三十頭。

草を食べているものから、側にある池で水浴びをしているものもいる。


そしてその後方。

見事な山々が景色を彩っていた。

それにしても風が気持ちいい。

そして空気も綺麗だ。

何処か中学の修学旅行で行った北海道を連想させる。

草原の奥には森みたいな場所もあるし、此処は異世界と見て間違いないだろう。


なんてこった、さっきまで平和な日本だったのに!

なんとかして帰る方法を見つけないと最悪死ぬ事になりそうだ。

先ず食べ物が心配だ。

そして気温。

二十五度は下回らないだろう。

アフリカと北海道のハーフか?

異世界だからそう単純にはいかないだろう。

俺は白い長袖のシャツを腕まくりし、靴が無いことを懸念していた。


まあでも大自然を満喫しない気にならなくもない。

蒼色のバッファロー達はクネクネした二本の角と首筋の紅い模様が特徴的だった。

体長は四メートルほどで、巨体である。

せっかくだから近づいてみるか……。

俺は二十メートルほどあった彼らとの距離を詰めていった。


ファンタジーゲームの世界だから剣と魔法の世界なのか?

いつかこういったモンスター達と戦う日も来るのだろうか。


(絵になるな……この世界での経験も作詞に役立つ可能性がある)


俺が呑気にバッファロー似のモンスターまであと五メートルまで近づいたその時だった。


モォ゙ォ゙ーーー!!!


一頭、また一頭と此方に近づいて来たのだ。

何だよ草食獣だから大人しいんじゃねぇのかよ!

三十頭の群れ全部がゆっくりだが確実に、此方に接近してきたのだ。

相手は巨体故にノロい。

でも凄い迫力だ、逃げろーー!


俺は靴もないまま、全力で森の方へと駆けていった。

足が速くて助かった。

あの鼻息荒いバッファローの顔見たか?

一瞬死すら覚悟したよなー。

流石に森まで辿り着けば奴らは追いかけるのを辞めるだろう。

俺とモンスターの群れの間隔は徐々に広がっていき、ラグビー時代につけたスタミナが役に立ったと言える。


俺は若干息を切らしながら森へとたどり着いた。

草食獣たちとの間にはかなりの距離がある。

一先ずこれで安心だろう。

それにしても木の上に、水色の綺麗な鳥。

それも綺麗な声で鳴く。

クチバシは黄色で、鳴き声は喩えるなら「ヒョロロピーヒョロロ」って感じだ。

此処は素晴らしく自然豊かな場所だ。


ファンタジー世界。

ならば人やエルフといった種族も存在するのだろうか。

早く靴を手に入れたいもんだな。

武器や装備といったものにも当然関心はあるし、この世界での冒険を楽しむ余裕はまだないけど、一度きりの旅だエンジョイしないと。


ん?あの鳥着いてきてって言ってるみたいだな。

鳴き声を上げながら木から木へ移動して此方を見てる。

もしかしたら人間のいる所へ案内してくれるのかもしんない。

俺は元気よく水色の鳥の示す方向へ歩を進めた。

バッファロー達もとっくに俺を追うのを辞めている。

この先肉食動物に会う可能性もあるわけだけど、取り敢えず人間との接触を先に完了させないと。


俺はやや足の裏が痛くなるのを感じつつも、森の奥へと進んでいった。

冬と夏なら断然夏派なのでこの気温は最高の気分だが、不安だらけの冒険になりそうなのは間違いない。

所々真っ白のキノコが生えていたが、毒の可能性も無視できないのだ。


進んでいくと木でできた一軒家が目に止まった。

デカした綺麗な鳥!

そこまで大きな家ではなかったが明らかに人が住んでいそうだ。

何よりあの鳥が紹介する人だ、凶悪な人柄じゃないだろう。

俺は好奇心の赴くまま、ドアの前へと足を運んだ。


「おじゃましまーす……」


日本語が通じる保証は完全ではなかったが言ってみる。

あのファンタジーゲームは日本製だ。

大丈夫、きっと大丈夫……。


返事がないので一応ドアを開けてみる。

それにしてもドアの周りは綺麗にガーデニングされており、女の子のお家って感じだった。

パンジーって言うのかな、よく分かんないけどピンク、紫、黄色の花が咲いてる。

俺晩飯まだだったんだ、林檎でも貰えるかもしれない入るぜ。


ドアを開けた俺は木の家の中に入っていった。

中には銀の食器の積み上げられた食器棚にテーブル、椅子などが配置されていた。

十二畳ほどの大きさで、奥にはベッドらしき物も見受けられた。

決して大きな家とは言えないがよく整理されている。

ドレッサーもある事から女の人の家である事は間違いなさそうだ。


それにしても女性の家に勝手に上がって悪かったかな〜。

しょうがねぇよだって腹減ってるんだもん。

後できちんと説明すれば分かってくれる!


残念ながら目当ての食べ物は見当たらなかったため、ため息をついた俺の隣に金の粉が浮かび上がっていた。


(何だ、コレ!?)


俺が驚いているのも束の間、金の粉は人間へと姿を変えた。

褐色肌黒髪。

エジプトのクレオパトラを連想させる美貌に、俺は一瞬息を呑んだ。

顔立ちと言うより、そのオーラに俺は言葉を失ったのだ。

服装は踊り子?っていうのかな。

紫をベースに緑色の装飾品で着飾ってある。

思春期の俺には刺激が強いのは確かだ。

化粧もしており、年齢は高校生くらいかな?


「女の子の家に勝手に上がるなんて無神経すぎ」


彼女の言葉に俺はどう返せばいいか分からなかった。

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