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気が付いた時、俺は草原に座りこんでいた。
当然さっきの制服姿で、帰宅時に上着とマフラーだけ脱いでネクタイはしている状態だった。
下は黒の長ズボンである。
その俺が何故こんな所にーー。
此処はゲームの中の世界なのか?
見れば蒼色のバッファローのようなモンスターの群れが前方にいた。
草食獣だろうから襲っては来ないだろうけど中々圧巻だ。
その数、およそ三十頭。
草を食べているものから、側にある池で水浴びをしているものもいる。
そしてその後方。
見事な山々が景色を彩っていた。
それにしても風が気持ちいい。
そして空気も綺麗だ。
何処か中学の修学旅行で行った北海道を連想させる。
草原の奥には森みたいな場所もあるし、此処は異世界と見て間違いないだろう。
なんてこった、さっきまで平和な日本だったのに!
なんとかして帰る方法を見つけないと最悪死ぬ事になりそうだ。
先ず食べ物が心配だ。
そして気温。
二十五度は下回らないだろう。
アフリカと北海道のハーフか?
異世界だからそう単純にはいかないだろう。
俺は白い長袖のシャツを腕まくりし、靴が無いことを懸念していた。
まあでも大自然を満喫しない気にならなくもない。
蒼色のバッファロー達はクネクネした二本の角と首筋の紅い模様が特徴的だった。
体長は四メートルほどで、巨体である。
せっかくだから近づいてみるか……。
俺は二十メートルほどあった彼らとの距離を詰めていった。
ファンタジーゲームの世界だから剣と魔法の世界なのか?
いつかこういったモンスター達と戦う日も来るのだろうか。
(絵になるな……この世界での経験も作詞に役立つ可能性がある)
俺が呑気にバッファロー似のモンスターまであと五メートルまで近づいたその時だった。
モォ゙ォ゙ーーー!!!
一頭、また一頭と此方に近づいて来たのだ。
何だよ草食獣だから大人しいんじゃねぇのかよ!
三十頭の群れ全部がゆっくりだが確実に、此方に接近してきたのだ。
相手は巨体故にノロい。
でも凄い迫力だ、逃げろーー!
俺は靴もないまま、全力で森の方へと駆けていった。
足が速くて助かった。
あの鼻息荒いバッファローの顔見たか?
一瞬死すら覚悟したよなー。
流石に森まで辿り着けば奴らは追いかけるのを辞めるだろう。
俺とモンスターの群れの間隔は徐々に広がっていき、ラグビー時代につけたスタミナが役に立ったと言える。
俺は若干息を切らしながら森へとたどり着いた。
草食獣たちとの間にはかなりの距離がある。
一先ずこれで安心だろう。
それにしても木の上に、水色の綺麗な鳥。
それも綺麗な声で鳴く。
クチバシは黄色で、鳴き声は喩えるなら「ヒョロロピーヒョロロ」って感じだ。
此処は素晴らしく自然豊かな場所だ。
ファンタジー世界。
ならば人やエルフといった種族も存在するのだろうか。
早く靴を手に入れたいもんだな。
武器や装備といったものにも当然関心はあるし、この世界での冒険を楽しむ余裕はまだないけど、一度きりの旅だエンジョイしないと。
ん?あの鳥着いてきてって言ってるみたいだな。
鳴き声を上げながら木から木へ移動して此方を見てる。
もしかしたら人間のいる所へ案内してくれるのかもしんない。
俺は元気よく水色の鳥の示す方向へ歩を進めた。
バッファロー達もとっくに俺を追うのを辞めている。
この先肉食動物に会う可能性もあるわけだけど、取り敢えず人間との接触を先に完了させないと。
俺はやや足の裏が痛くなるのを感じつつも、森の奥へと進んでいった。
冬と夏なら断然夏派なのでこの気温は最高の気分だが、不安だらけの冒険になりそうなのは間違いない。
所々真っ白のキノコが生えていたが、毒の可能性も無視できないのだ。
進んでいくと木でできた一軒家が目に止まった。
デカした綺麗な鳥!
そこまで大きな家ではなかったが明らかに人が住んでいそうだ。
何よりあの鳥が紹介する人だ、凶悪な人柄じゃないだろう。
俺は好奇心の赴くまま、ドアの前へと足を運んだ。
「おじゃましまーす……」
日本語が通じる保証は完全ではなかったが言ってみる。
あのファンタジーゲームは日本製だ。
大丈夫、きっと大丈夫……。
返事がないので一応ドアを開けてみる。
それにしてもドアの周りは綺麗にガーデニングされており、女の子のお家って感じだった。
パンジーって言うのかな、よく分かんないけどピンク、紫、黄色の花が咲いてる。
俺晩飯まだだったんだ、林檎でも貰えるかもしれない入るぜ。
ドアを開けた俺は木の家の中に入っていった。
中には銀の食器の積み上げられた食器棚にテーブル、椅子などが配置されていた。
十二畳ほどの大きさで、奥にはベッドらしき物も見受けられた。
決して大きな家とは言えないがよく整理されている。
ドレッサーもある事から女の人の家である事は間違いなさそうだ。
それにしても女性の家に勝手に上がって悪かったかな〜。
しょうがねぇよだって腹減ってるんだもん。
後できちんと説明すれば分かってくれる!
残念ながら目当ての食べ物は見当たらなかったため、ため息をついた俺の隣に金の粉が浮かび上がっていた。
(何だ、コレ!?)
俺が驚いているのも束の間、金の粉は人間へと姿を変えた。
褐色肌黒髪。
エジプトのクレオパトラを連想させる美貌に、俺は一瞬息を呑んだ。
顔立ちと言うより、そのオーラに俺は言葉を失ったのだ。
服装は踊り子?っていうのかな。
紫をベースに緑色の装飾品で着飾ってある。
思春期の俺には刺激が強いのは確かだ。
化粧もしており、年齢は高校生くらいかな?
「女の子の家に勝手に上がるなんて無神経すぎ」
彼女の言葉に俺はどう返せばいいか分からなかった。




