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ARTEMA SAGA  作者: ロゼオ
第3章 旅立ちの時
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15

翌朝俺達はアーディスを跡にした。

短い滞在期間だったが沢山の出会いがあった。

アニキ、レダス、セレナ。

もっと言えばジンやエリザベスとも巡り会えて良かったと言える。

後ろを振り返ると誰かが我々の跡をつけているのが分かった。

まだ若い眼鏡をかけた少女だ。

眼鏡を外せば美人に化けそうだが、まだ十四歳くらいだろう。


「闘技場で貴方達の戦いぶり見ました。私も連れて行って下さい。こう見えても『時魔法』使えるんですよ」


若い。

俺も偉そうな事は言えないが、戦闘の一つも経験していないだろう。


「時魔法って例えばどんな?」


時劣化(スロウ)、とか……」


「他は?」


時劣化(スロウ)は相手の動きを鈍らせるといったものだろう。


「だけかな」


少女は俯いた。

可愛い子には旅をさせよとは言ってもだなあ。

人質に取られたりしたらこの上なく厄介なんだよ。

才能があるのは分かる。

なんせまだ中学生くらいの年齢だ。

この場合は誰かに預けて修行してもらった方がいい。


「スラム街に『アニキ』って呼ばれてる強者がいる。彼の下で修行を積んでからだな」


アニキがこの娘の面倒を見てくれる保証は無かった。

だがもしアニキが承諾すれば彼女は本当の意味で化ける可能性がある。


「君、名前は?闘技場を勝ち抜いた異世界人の頼みだって言ってみて」


「ナギサです……分かりました」


ちょっと最初言い方キツかったかなぁ。

でもハッキリ言うしかない。

クレラ達もナギサの同行へは反対だろう。


俺は今アレサンドロの鎧を着ており、サイズに違和感は無かった。

背中には大剣ソーイアロを背負っており、装備だけで言えば俺は紛れもなく強者だった。

だがいつか装備のおかげでなく、自分の力で。

ナギサの為を思って断ったわけだが、それに恥じない男にならないと。


ナギサはトボトボアーディスの方向へと引き返して行った。

スラム街は都市の中の話で言えば危険地帯だが、アニキは信用出来る男だった。

さて、旅の幕開けだ。


目の前に広がる草原。

風がこの上なく心地良い。

鎧の上からでも分かる。

気温は日本で言う初夏くらいで、何時ぞやの砂漠ほど暑くない。

見れば蒼色のバッファローの群れが前方にいた。

クレラの家の近くか?

いや、ちょっと違うらしい。

何れにせよガゼドへはこの道が最短ルートだそうだ。


「あんな所に家がある。行ってみようぜ」


クレラの家と然程変わらない造りの木の家が草原にポツンと建っていた。

せっかくだから挨拶しとこう、みたいな具合だ。

残念ながら(?)アスカちゃん対バッファローの闘いを観るのは見送る事となったが、モンクの力もこの先々で必要になってくるだろう。


「ごめんくださーい」


「!!」


中にいたのはこれまた中学生くらいの少女だった。

茶髪の三つ編みで、眼鏡は掛けていなかった。


「私マリナって言うの。お兄さん達何しに来たの?」


「いやこんな所にポツンと一軒家があったもんで」


「マリ、ドラゴンと心を通わせられるの。シルバーって名前のその名の通り銀竜よ」


「まさかアレサンドロの乗ってた……」


クレラが会話に参加した。

竜騎士アレサンドロは十五年前に魔王ラグナロクとの闘いで死んだそうだが、巨竜は生きていたという事か。


「今ではマリの友達。呼んでみよっか?」


何処か口調がカタコトで可愛いらしい子だなー。

この世界の女子冗談抜きでレベル高ぇーぞ。

なんか日本に帰りたくなくなってきた。

あーでもジン王との約束はなるべく守らなきゃな。


マリナが外に出て指笛を吹くと、本当に体長十メートルはあるかという巨竜が弧を描きながら着陸した。

凄い迫力だ。

着陸時の翼のはためきだけで、装備が軽いクレラなど吹き飛ばされそうなくらいだ。


アレサンドロの乗っていた銀竜。

彼の鎧を着ている俺を見て若干戸惑ったようだが、直ぐに俺ソラはアレサンドロと違うと認識するに至っていた。

マリちゃんが巨竜の頬を撫でる。


俺は時折アスカちゃんだのマリちゃんだの女の子にちゃんを付ける。

別に女慣れしているわけじゃないが「親しみを込めたい」みたいな感じか。

それにしてもマリちゃんとシルバーの仲の良い事。

きっとクレラと同じで彼女も心が綺麗なんだよ。

そして昨日王宮で見た竜の模型とそっくりだ。


俺が感心しているのも束の間、紫色の渦と共に邪悪な人影が現れた。

東洋を彷彿とさせる着物を身に纏った、紫色の長髪の男は銀竜を見るなりこう言った。


「見つけた。竜騎士アレサンドロの遺産。俺ハウルの相棒にこの上なく相応しい」


ハウルと名乗る男は二十代後半くらいに見えた。

そんな事よりも巨竜の様子がおかしい。

あんだけ懐いていたシルバーがハウルの元へ行こうとしている。


ハウルの放つカリスマ性とでも言うのか。

だがこれじゃあマリちゃんが余りにも可哀想だ。


「このハウルって人、只者じゃない!」


と身構えるクレラ。

ハウルはシルバーに跨り飛び立とうとしている。


「ガゼドの組織の一員って何処かで聞いたことあるよ。彼らは昔から巨竜を狙ってた」


ホワイトロックが弓を引きながら言ったその時、ハウルの周りに青紫色のオーラのようなバリアが生まれ、それは瞬く間に巨竜を覆った。 

コレでは矢が通じそうにない。 

そしてハウルを乗せた巨竜は遥か上空へと飛び立って行ったのだった。


泣きじゃくるマリナ。

どうやら両親と一緒に住んでいることは家の内装で分かったが、今親は仕事中らしい。


「俺がシルバーを取り戻すよ」


思わずマリナの肩に手を置き言っていた。

何せガゼドに行きゃーいいんだろ?

仲間の方を見るとレインやアスカちゃんが大きく頷いている。

ハウルは明らか強者だったが、道中で強くなりゃーいいさ。

俺達はマリナに別れを告げ、再び草原を歩き出した。

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