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レインが出場して敵を眠らせてしまっては、闘技場は盛り上がらない。
俺、フォックス、クロウのメンツでの登録で間違いなかった。
何より、この試合は王も観るのだ。
中途半端な戦いは絶対に許されない。
あっという間に夕方になり、俺達は金網の中へと通された。
観客は五百人ほど。
中央の若い王らしき者の近くには、エリザベスもいた。
賞金を手にすれば鎧が買える。
今後クレラ達を護るためにも絶対手に入れねーと。
観客の中でクレラやアスカちゃんを直ぐに見つける事は出来なかった。
だがそれよりも試合に集中しないと。
死ぬ事すら容易にあり得る闘技場で、フォックス達と連携を試みないと。
つーか何でこの二人なの?
クロウはさっき会ったばかりだし、フォックスは言動にトゲがある。
息の揃った連携とまではいきそうになかった。
だが生き残るには三人の力を最大限に引き出す戦い方をしねーと。
「フォックス、何か作戦は?」
「無い。強いて言うなら俺とクロウは長年の誼で連携技、隕石落下が撃てる。それの発動に期待するんだな」
それって凄そうだけど詠唱時間掛かりそうだな。
「つまり時間稼ぎがお前の役だ。まあ防御系の補助魔法は最初に掛けといてやる。死んだらそこまでだ」
最後の一言余計だよ!
ったくこの狐はこの期に及んでも毒舌を貫くかね。
「一人で生き延びる練習だ。ま、死んだら大剣ソーイアロは俺が拾っておいてやる」
観客のボルテージが上がってきた。
亜人であるフォックス達を快く思っていない市民も多少は居そうだったが、基本的に拍手で俺達は紹介された。
あ、いたいた!
クレラ達あんな所に座っていたのか。
ようし男として女子達に良い所見せないとね。
アニキは観てないだろうけど、彼の助言通り亜人二人との三人で勝ってみせる。
紹介で大剣ソーイアロを所持し者として一応は注目されたが、亜人とつるむ変わり者という見られ方をしていそうだった。
この学生服逆に目立つしな。
まあ、この戦いを乗り切れば鎧を得ると同時に漢になれる。
足が若干震えてきそうだ……いや大丈夫!
角笛と共に敵が入場してきた。
亜人達は基本的にこの世界ではそれほど好かれていないようなので、敵次第では此方がヒール(悪役)となり得たが、敵はトロール一体とオーク二匹だった。
トロールの身長は二点五メートルはあり、白い皮膚に黒いボクサーパンツのような物を履いていた。
両手首はまだ鎖で繋がれており、試合開始と共に解放されるようだ。
一般的な闘技場での対戦相手という事になった。
だがここで良い所みせれば亜人への認識もほんの少しかわるんじゃねぇか?
差別の根強さなど理解できる年頃じゃないかもしれねーが、フォックスもクロウも優しい部分があるのは知っている。
クロウがどのような闘い方をするのかは存じ上げないが、飛べるのは大きな利点だった。
そして隕石落下。
連携技など初めて耳にしたが、巨体であるトロールを一撃で仕留められる可能性も充分ありそうだった。
「ワイは隕石落下の発動に反対する。昨日この世界に来たばかりの若者に一対三はキツい」
普段黙ってるクロウが此処に来て声を上げた。
闘技場への参加を表明した「っしゃ、行こ」の一言以外ずっと黙っていたのである。
何だよやっぱり優しいじゃんかよ。
「先にオークだけ倒してしまおう」
「チィ……好きにしろ」
クロウとフォックスの会話は一旦そこで途切れ、試合開始のゴングが鳴らされた。
四方には橙色に燃え盛る篝火が灯されてあり、ドーム状の金網で覆われたフィールドだった。
コンクリートみたいな硬い石の地面。
オークは軽装備の槍持ちで、トロールに比べ知能はありそうだった。
だがやはり気をつけるべきなのは真ん中のデカいトロール。
咆哮は見る者全てを緊張させる。
『さあ、始まりました本日の闘技場の戦い。亜人二人をメンバーとしました。チームソラ!英雄の大剣を所持した彼にも注目です』
チームソラって呼ばれ方フォックスは気に入ってねーかな。
まあどうでもいいけど。
それより大きな棍棒を持つ事になるトロールの攻撃をかわしつつオークを倒さなければならない。
トロールの鎖は解放され、彼は傍にわざと置かれていた棍棒を拾った。
一見あのゴーレムより弱そうに見えるが、油断は厳禁だ。
ほら怒った顔で近づいてくる!
俺はトロールの縦への攻撃を前転で避ける事に成功した。
その隙を鳥人クロウは逃さない。
シューッと闘技場の中を飛んでいき、自身の剣でオークの胸を貫いた。
オォーーッ。
観客の間にどよめきが上がった。
幾らゴブリンよりは手強いと言っても、相手は所詮ただのオーク。
一瞬で左側にいた一匹のあの世行きが決まった。
そしてフォックスの補助魔法、硬質化。
何と彼自身でなく俺に掛けてくれた。
何だよやっぱり新参者の俺に優しいんじゃんかよ!
オレンジ色の光が俺を包む。
これでトロールの攻撃を一発は耐える事が出来そうだ。
再び歓声。
此方から見て右側にいたオークも、クロウが刺し殺したのである。
アニキはフォックス、そしてクロウとこの戦いに参加しろと言ってた。
やはり信じて正解だったようだな!
俺はトロールに向かって大剣ソーイアロで斬り掛かっていった。
フォックスの補助魔法の効果はお墨付き。
棍棒と大剣がぶつかる。
「クロウ、隕石落下だ」
フォックスたちの足元に紫色の魔法陣が浮かび上がっていた。
時間稼ぎーーか。
だがそれだと何のために出場したか分からねー!
その時、大剣ソーイアロが鈍く光った。
剣が、力の限り振れと言っている気がした。
(斜めに斬りかかる!)
ザンッザンッ!とクロスするように攻撃した俺は、何とトロールを倒していた。
「さっきのクロス斬りか?」
「いやただのクロス斬りじゃ無かった気が……」
と観客から声が上がる。
王も立ち上がって拍手をくれていた。
俺は隕石落下の発動を待つまでもなく、闘技場の戦いに勝利していた。




