10
魔法図書館に着いた。
外観はトンガリ屋根の煉瓦造りで、魔法の杖でも売ってそうだった。
アスカと共に中へ。
古くしっかりした重い扉はこのゲームの世界の歴史を彷彿とさせるのだった。
いつ、この世界そのものがテレビゲームだとアスカ達に切り出そうか。
なんか彼女らの存在そのものを否定するみたいで嫌だな〜。
まあ取り敢えず魔法図書館とやらを拝見しよう。
おおっ!紙で覆われた蝋燭が所々に浮いている!
本も千冊以上はありそうで、本棚へと続く階段が読者の意思によって左右に動くようだった。
クレラは何処だろう?
千冊以上が貯蔵されているとはいえ、この図書館はそれほど巨大な建物ではない。
直ぐに見つけられるはずが、クレオパトラ似のオーラの持ち主が見当たらない。
アスカちゃんの顔色が曇った。
「コレ……もしかしてクレラの残した金の粉じゃないか?これを辿っていけば彼女に会えるかも」
俺はクレラが最初現れた時に発した金の粉と同じ物を、図書館の床に発見した。
粉はずっと外の方に点々と続いている。
「間違いない。行こ、ソラ君」
出来ればフォックス達を連れていきたかったが、時は一刻を争う。
この広いアーディスで仲間と鉢合わせする可能性の方が少ないのだ。
俺達は図書館を出た。
いつか其処で魔法を勉強しても良いだろう。
だが今はクレラがピンチだ。
絶対に助け出す!
若干額に汗を浮かべながら俺は歩道を辿った。
クレラはもはやゲームのキャラなんかじゃねー!
俺の運命の人だ。
早足で行くに連れてアスカちゃんの顔色が益々悪くなった。
「コレって……貴族の館に続いてる……」
「一般人は行けねーのか!?」
「ほら、左右に騎士が並んでるでしょ?あそこから先は貴族や王しか行けないの」
「理由を話して入れてもらおう!」
「無理だよ。我々一般人の事情なんて聞いてくれっこない」
「だけどよ……!」
これは誘拐事件だった。
それにしてもクレラほどの魔女が捕まるなんて!
よっぽど油断していたに違いない。
そこへあの騎士団幹部のセレナが現れた。
一か八か彼女に聞けば……!
「セレナさん、騎士団の行進感激しました。あの……俺の連れが誘拐されちゃって……セレナさんの力で貴族の館に入れてもらえませんか?」
もはやカッコ悪いなんて言ってられねぇー。
多少媚びてでも貴族の館に入れてもらわねーと。
「そうか。騎士団である私の力を借りたいのだな?良かろう、このセレナ直々に貴族の館に押し入ってみせよう。来い!」
これは予想外の展開だった。
運良くセレナさんが通りかかって助かった!
それにあの騎士団のパフォーマンス拝見しててホントに良かったよ……!
「通せ」
とセレナの一言で門番の二人は道を開けた。
さあ、貴族の住宅街だ。
粉が続いているのはあの白い館で間違いねぇ。
俺はセレナがどう押し入るか気になっていたのだが、何とノックもせずに館に突入する形となった。
正義感が強くかなり好印象だ。
騎士団だから一緒に旅をとはいかねーだろうけど。
図書館の二、三倍はある立派な館だ。
洋風な外観だったが、中も絵画が掛けてあったりと中世ヨーロッパを彷彿とさせる。
「粉は隣の部屋へと続いている……ん?霊的なモノの気配が」
流石歴戦の猛者。
霊の気配すら直ぐさま察知か。
「居合……斬り!」
セレナは一度低く構えてみせて、剣を抜くと同時に斬り掛かってみせた。
その刃、霊すら斬り裂く。
それにしても此処は幽霊屋敷なのか?
昼間なのにカーテンは閉まったままだし、セレナの言う通り確かに幽霊の微かな気配はした。
とにかく隣の部屋に急がないと。
「クレラ!」
リビングらしき隣の部屋のソファの上に、クレラは居た。
彼女が無事で良かった……いやコレはまだ恋人って意味の「彼女」じゃなく……何にせよ本当に怪我もなくて一安心だ。
「図書館で会った幽霊さんに誘われて貴族の館に飛んでいったの。皆とっても優しいよ」
先程隣の部屋でセレナさんが霊の一人をぶった斬った、アレは無しだ。
「セレナさん。今日はご迷惑をおかけしました。今直ぐ貴族の館から立ち去ろうと思います」
「せっかくだから名前を聞いておこうか」
「ソラとアスカです。こっちはクレラ」
「君達がこの館に押し入った事は内密にしておく。行け!」
俺達はセレナさんに礼を言い、貴族の館を跡にした。
それにしても彼女、若干男っぽいけど良い人だったな〜。
所持していた剣も大剣ソーイアロよりは小さいにしても中々のスペックを誇っていそうだった。
「おいクレラ、心配したんだぞ!」
「うー、だって幽霊さん達優しかったから」
「そういう問題じゃなくて!」
俺達は貴族ゾーンから一般ゾーンへと舞い戻り、この世界の秩序がセレナら良き騎士団によって保たれている事を思い知ったのだった。
「朝飯にしよーぜ。時間的にはもう昼か?」
「うん!」
クレラはマイペースで我道を貫くみたいな所がありそうだ。
完璧な人間なんていないって事か。
アスカちゃんのお金が大好きってのも言ってしまえば悪い所だし、俺だって欠点はある。
頑固に危険を顧みず自分の信じた道を行く。
いつか彼女のこの特徴すら、愛おしいと思う日は来るのだろうか。
「異世界人だからこの世界でのお金ないんじゃないの?もう信じらんない」
「ハハッ、出世払いな」
アスカちゃんともこれから打ち解けていけそうだ。
俺は王が住むとされる丘の上の城へと振り返った。
セレナの上司のエリザベスを部下に持つ人物。
いつか拝見する日も来るのだろうか。
俺達の身分の低さを恨むことないさ。
レストランで爆食だー。
俺は出世払いの名目のもとら美女二人と昼食を堪能した。




