◆第36話 厩舎の灯り
翌朝。
俺はちゃんと寝た。……はずだ。
寝たはずなのに、腰のあたりに“昨日の呪い”が残っている気がして、つい自分の腰回りを確認してしまう。
腰を何度も確認してもベルトはない。
なのに、羞恥だけがある。なぜだ。
「ミナト様。腰を押さえてどうされましたか」
「!! ……な、何でもない!!」
半歩前を歩くテオの真面目な声に反射で叫ぶと、
アリアがニヤニヤ笑いながら後ろから声をかけてくる。
「腰、痛いの? オネーサンがマッサージしてあげようか?」
「何でもないったら!!」
羞恥を誤魔化すように俺はみんなの前をずんずんと歩いていく。リーンが嬉しそうに宙でくるっと回ると俺に追いついて頭の上に乗る。
「ミナトちゃん! 今日はお馬さん達の心、鷲掴みしないとだね!」
「それ、かなりハードル高くないか?!」
少しだけそわそわしたまま回廊を抜け、途中でホークやセシル、随行騎士達と合流し厩舎へ向かう。
厩舎へ向かう廊下は、朝の冷え方が少し鋭い。
石床がひんやりして、遠くで蹄の音がかすかに響く。
音だけで「生き物の空間」に近づいてるって分かるのが、ちょっと緊張する。
扉の前で、テオが一度だけ振り返った。
「本日は馬の確認です。騒がないでください」
「俺を何だと思ってる」
「昨日の装備室の主役です」
「主役って言うな!」
アッシュが後ろで元気よく頷く。
「昨日の主役、かっこよかったっす!」
次いで、オークが真顔で補足する。
「的確なツッコミは、隊の秩序を保ちます」
「これ褒められてるの?!」
頭を抱えた俺に、ホークが静かに笑った。
「褒められてますよ。……恐らく」
「そこは自信持てよ!」
そんな調子で扉が開く。
中は、匂いが違った。藁と革と、温かい息。
空間そのものが“生き物のリズム”で動いている。
そして視界の端、栗毛の牝馬がこちらを見た。
優しい栗毛。
額には細い白い流星が一本。左後脚に短い白。
たてがみは濃い栗で、毛先だけ金茶に抜けている。
灯りを受けて、その毛先だけが柔らかく光って見えた。
(……綺麗な馬だな)
思わず見惚れていると、その横をホークが通り過ぎる。
ゆっくりと、小さな歩幅でホークが近づき、
「ルーチェ」
短く呼んだ。
ルーチェが鼻を鳴らす。
返事みたいで、返事じゃない。でも確実に「聞いた」と言っているようだった。
「綺麗な馬だな……」
「でしょう」
俺の感嘆の声に ホークがさらっと言う。
さらっと言うくせに、ほんの少しだけ誇らしそうなのが隠しきれていない。
「……ホークの馬って、こっちで用意したやつじゃないんだよな?」
「ええ。ルーメンティアから連れてきました。癖も機嫌も、だいたい把握してます」
「相棒ってやつ?」
「はい。賢い牝馬なので、俺が相棒にしてもらっています」
謙遜しているようで妙に説得力がある。目の前に賢さがいるからだ。
セシルが恐る恐る一歩近づいた。
「ホークは、どこかへ出るとき、いつもこの子と一緒ですもんね」
ルーチェはセシルに慣れているのか、鼻先を寄せる。
セシルは嬉しそうにその横顔を撫でた。
「セシル、慣れてるんだな」
「ミナト殿下も撫でてみますか?」
俺が感心して呟くと、ホークがルーチェを親指で指す。
ホークが言った瞬間、ルーチェの耳がぴくりと動いた。
そして、今度は鼻先を俺の方に寄せる。
「近い……!」
どうしたらいいのかわからない俺は、直立で固まる。
(どこ!? どこ撫でたら怒られないんだ!?)
ルーチェは固まった俺の袖のあたりを、ふわっと嗅いでから、ゆっくり瞬きをした。
……許可っぽい、けど。
「今の、どういう意味?」
俺が聞くと、ホークが平然と言った。
「評価中です」
「俺、面接されてるの!?」
リーンが楽しそうに囁く。
「レディの面接官だ〜!」
「合格できる気がしない!!」
ルーチェが、ホークの外套の裾を歯で軽くつまんだ。
「……こら」
ホークが肩越しに振り返る。
「今のは何の指示ですか。ルーチェさん」
馬に“さん”を付けた。しかも自然に。
まるで年下の彼氏が年上の彼女に話しかけるような雰囲気だ。
何だか目の前で見せつけられた気がして、俺は一人で勝手に照れた。
ルーチェが裾を離し、何事もなかったように鼻を鳴らす。
「……『ちゃんとしろ』ですかね」
ホークが自分で結論を出して、姿勢を整える。
それだけでルーチェの呼吸が落ち着くのが分かった。
馬が賢いのか、ホークが慣れてるのか、両方か。
「すごい……」
間近で馬という存在とこんなに触れ合うことがなかった俺にとっては、どちらも尊敬だ。
ホークは少し照れ臭そうに鼻の頭を掻く。
「すごいのはルーチェです。俺は合わせてるだけ」
「合わせてるだけで、あんなに通じるの……?」
「通じません。たまに裏切ります」
「裏切るの!?」
ホークがにやっと笑って肩をすくめる。
俺はぎょっとルーチェを振り返った。ルーチェはスンとしたままだ。
その横でセシルが「ふふ」と笑っている。
「裏切るのが賢さです」
「賢さの定義が怖い!」
俺のツッコミに、アリアが愉快そうに笑った。
「ミナトちゃんの馬になる子は、忠実じゃないとダメそうね」
「うるせ! っていうか、俺そもそも乗れないや……」
溜息をついた俺はぐるりと視線を回す。
厩舎の奥。
そこには、黒い塊が静かに立っていた。
黒毛の牡馬。ルーチェのような模様や色は一切無い。
蹄もたてがみも尾も、全部が黒。
夜を固めて馬にしたみたいな漆黒で、艶だけが静かに光っている。
その前に、テオがいた。
撫でる指先は静かで、言葉は少ない。
なのに馬の方は、それだけで落ち着いている。
……落ち着きすぎて逆に怖い。昨日の装備みたいに賢そうだ。
俺は驚かさないように静かに近づく。
「……この子が、テオの相棒?」
「ええ。ノクスです」
俺が声をかけると、テオは少しだけこちらに顔を向けて紹介してくれる。
リーンがぱたぱた飛んで俺の頭の上に乗る。
「闇の馬!かっこいいよね!」
「闇の馬って言うな! ……ちょっと、わかるけど」
アリアが腰に手を当ててにやりと笑った。
「ミナトちゃん、黒くて大きくて……荒々しいのは、好き?」
「馬の話だよね!?」
テオが少しだけ不満げに眉を寄せるとチラリと視線を投げてくる。
「ノクスは黒いですが、性格は落ち着いています。色で判断しないでください」
「俺はしてない!!」
ノクスがこちらを見た。
同時に俺もまじまじと見返す。
目も黒い。あ、黒くて一瞬わからなかったけど、まつ毛がすごく長いんだな。
その静かな黒い目に俺の虹色の瞳が映る。落ち着き具合は……テオと少し似てる。
「……ノクス、俺に何か言いたい?」
ノクスは、ゆっくり瞬きをした。テオが俺とノクスを見比べる。
「『落ち着け』だと思います」
「馬に説教されてる……」
ホークが遠くから声を投げた。
「珍しくないですよ。俺もたまにされます」
「ホークもルーチェに説教されるのか」
「されます。格好よく」
「格好よく説教されるって何」
「受け入れる態度です」
セシルが真顔で頷いた。
「勉強になります……!」
「セシル、それは吸収しなくていいよ!」
俺がセシルに向かって腕でバツを作っていると、テオが俺の方へ手を差し出した。
「ミナト様。踏み台へ」
「え、俺、乗っていいの?」
「乗りません。乗る練習をします」
「言い方が怖い!」
俺がテオの手を取り、踏み台に足をかけた瞬間、ノクスが一歩だけ位置を直した。
テオは何も指示していないのに、支える位置に入ったようだ。
「……賢過ぎない?」
俺が小声で言うと、
一拍間があったテオが少しだけ意地悪い笑みを浮かべ、同じくらい小声で返してくる。
「賢い馬は、人を見ます」
「見ないでほしい」
「見ます」
俺が半分泣きながら跨ろうとすると、テオの手が自然に腰へ添えられる。
こちらも支えるための位置。護衛の仕事。分かってる。
分かってるのに、心臓が余計に跳ねる。
(……昨日のベルトのせいだ。絶対)
少し遠巻きに眺めていたアリアが楽しそうに言った。
「ミナトちゃん。 今、顔が“ふにゃ”ってなってる」
「実況しないでくれる!?」
リーンがアリアの肩に乗るとすかさず囁く。
「テオの手、安心感すごいもんね〜」
「実況禁止!」
ホークがこちらを見て、口元だけで笑った。
「……護衛って、職人芸ですね」
「その言い方もやめろ!」
テオが俺を支えたまま、淡々と言う。
「ミナト様。姿勢は真っ直ぐ」
「真っ直ぐにできるなら苦労しない!」
「できます」
「できない!」
ノクスがもう一度瞬きした。
確かに「落ち着け」と言われてる気がする。
俺がなんとか降りると、セシルがそっと言った。
「……ミナトさん、すごいですね!」
「すごくない。恥ずかしいだけだ」
「恥ずかしくても、頑張ってるのがすごいです!」
セシルの素直さに、俺は一瞬だけ言葉を失った。
ド平凡な男子高校生だった俺には、同世代の女の子から手放しで褒められるって経験が無さ過ぎる。
返しに詰まった俺は、照れ隠しで頬を掻いた。
俺たちの様子を微笑ましく見ていたホークがルーチェの首を軽く撫でながら、テオに声をかける。
「テオバルト殿。ルーチェは問題なしです」
ルーチェが鼻を鳴らす。
「当然」と言ってるように聞こえるのがまた生意気で、可愛い。
テオがノクスの手綱を整え、短く言った。
「こちらも問題ありません」
黒い塊は、静かに“了解”を返した気がした。
しばらくして、厩舎の外で馬車の確認をしていた随行騎士たちが帰ってくる。
厩舎入り口で敬礼する二人にテオが視線を向ける。
「そっちは、どうだ?」
「馬車!問題ないっす!」
アッシュが元気に答える。オークが頷いて補足する。
「補強も問題ありませんでした」
リーンが宙でくるりと回った。拳を握った片手を勢いよく挙げる。
「明日はいよいよ出発だぁー!!」
その言葉で、厩舎の空気が少しだけ変わった。
笑ってるのに、胸の奥に「旅」が落ちてくる。
俺はノクスの黒い首筋を見上げて、ぼそっと言った。
「……頼むから、ベルトみたいに勝手に判断しないでくれよ」
俺の言葉を拾ったテオが、片方の眉を上げる。
「ノクスは革ベルトより理性的です」
「比較対象が終わってる!」
ホークがさらっと続けた。
「ルーチェも……革ベルトより賢いです」
「褒めてるのかそれ!」
笑いが落ちる。
その中で、テオの声だけはいつも通り落ち着いていた。
「本日の確認は以上です。ミナト様、明日に備えましょう」
「うん……備える。もう他には無いよな?」
「ミナトちゃーん! ボクの砂糖菓子、持っていくの忘れないでね?」
「そんなもんは自分で備えろ!」
頬にすりすりしてくるリーンを引き剥がしながら、俺は思う。
この皆で行くなら、たぶん大丈夫だ。
今は怖さよりもワクワクが勝ってきている。
それは、きっと皆のおかげなんだろう。
俺は、ぎゅっとネックレスを握りしめた。
◇◇◇
夕飯を終えた廊下は、昼間より静かだった。
城の灯りは落ち着いていて、足音まで柔らかくなる。
「……ミナト様」
少し前を歩くテオが、振り返らずに声だけ落とした。
「疲れていませんか」
「大丈夫。むしろ、ちょっと落ち着かない」
「落ち着かない、ですか」
「うん。明日から旅って思うとさ。……なんか、寝る前にもう一回、ノクスたち見に行きたい」
テオの歩幅がわずかに緩む。
それだけで「許可」が出たのが分かってしまって、俺は内心でにやけそうになった。
「厩舎へ参りましょう。今なら人も少ないです」
「やった」
俺が小さくガッツポーズをすると、テオの声にほんの少しだけ笑いが混ざった。
「……静かに」
「はいはい、騎士団長」
「今は団長ではありません」
「じゃあ何」
「……護衛です」
さらっと言われて、胸の奥が一回だけ跳ねた。
護衛って言葉、便利すぎないか。何でも許される免罪符みたいだ。
厩舎の扉を開けると、昼間の喧騒が嘘みたいに空気が澄んでいた。
藁の匂い。温かい息。ランタンの橙色。
そして、黒い塊がいた。
ノクス。
闇を固めたみたいな漆黒が、灯りの下でだけ静かに艶を返している。
テオが近づくと、ノクスは鳴きもせず、ただ一度だけ瞬きをした。
まるで「遅かったな」と言っているみたいで、俺は思わず口の端が上がる。
「……夜でも真っ黒だな」
「夜だから、より黒いのでは」
「それ言ったらずるいだろ」
テオはノクスの首筋を撫でる。指先の動きが迷いなくて、ノクスの耳がわずかに動いた。
言葉がなくても、互いに通じ合ってる感じがする。
「……テオって、ノクスとはどうやって仲良くなったの?」
俺が聞くと、テオの手が一瞬だけ止まる。
でもすぐに、淡々とした声が返ってきた。
「最初は、距離を取っていました」
「へえ。意外」
「私が、というより……ノクスが。人を見ます」
「見ないでほしいやつだ」
「見ます。賢いので」
テオがそう言ってから、ノクスの額に額を寄せるみたいに近づいた。
それを見て、俺はうっかり息を飲む。
そして咄嗟に俺は、俺に言い訳する。
(……これは嫉妬じゃないからな!)
これは、あれだ。男が憧れる、静かな男の色気ってやつだ。
しかも相手は馬なのに、なんで俺の心臓が変な拍子で鳴るんだよ。
「ミナト様」
耳に落ちた声に思考が全てぶっ飛ぶ。テオがこちらを向いていた。
灯りのせいで、目の色がいつもより優しく見える。気のせいだ。たぶん。
「本日は、乗馬に興味がある様子でしたが」
「ある。めちゃくちゃある」
俺は誤魔化さずに言った。
だって、今日の昼にちょっと跨っただけで、身体が覚えてる。怖いのに、楽しかった。
「俺もさ、乗馬できるようになりたい。……今後、馬車に乗れない状況だってあるだろうし」
「ええ」
「それに」
言いかけて、俺は一瞬だけ言葉を選ぶ。
顔が熱くなる予感がしたからだ。
「……テオと一緒に遠くに出掛けるとか、できるかもしれないだろ」
言ってしまった。
言ってしまったぞ、俺。
テオは、すぐには返事をしなかった。
でも、困ったように眉が緩む。
「……遠乗り、ですか」
「いや、ほら。護衛として! 俺が一人で乗れるようになったら、移動も楽だし!」
「護衛として」
「そう、護衛として」
俺が必死に言い訳を重ねると、テオはノクスのたてがみを一度だけ撫でてから、こちらへ歩いてきた。
「可能です」
「え」
「ミナト様が望むなら、教えます」
明確に胸が、ドキッと鳴った。
それが嬉しすぎて、逆に動揺する。俺はツッコミに逃げた。
「……簡単に言うなよ。俺、向いてないかもしれないだろ」
「向き不向きはあります」
「そこは否定してくれよ!」
「ですが」
テオが、俺の前で立ち止まった。
距離が近い。昨日のベルトの呪いが蘇る距離だ。
「ミナト様は、怖いと分かっていても逃げません。
……向いています」
真面目な顔で言うから、余計にずるい。
俺は視線を逸らしながら、ぼそっと言った。
「……それ、褒めてる?」
「褒めています」
「じゃあもうちょっと照れろよ」
「照れていると、馬が不安になります」
「ノクスの前では完璧かよ」
テオの口元が、ほんの少しだけ上がる。
ノクスが、また瞬きをした。
その通じ合っている空気感に、俺は思わずノクスの方へ話しかける。
「なあノクス。テオってさ、俺にも……そういう顔すること、あると思う?」
ノクスは、ゆっくり鼻を鳴らした。
肯定にも否定にも聞こえる、すごく都合のいい返事。
「都合がいいな、お前」
「ノクスは、賢いので」
テオが当たり前のように答える。
その言い方が、やっぱり少し誇らしそうで、俺はつい笑ってしまった。
「……じゃあさ。明日からの旅が落ち着いたら、練習の時間、作れる?」
「作ります」
「断言するの早い」
「私の仕事ですから」
「また護衛の免罪符を使う!」
「便利でしょう」
「便利すぎるんだよ」
俺が口を尖らせると、テオはほんの少しだけ声を落とした。
「……危険がなければ、短い距離から始めましょう。まずは、馬に慣れることです」
そして、俺の背中に手を添える。
厩舎の灯りの中で、その手の温度だけがやけに現実的だった。
「ミナト様。ノクスに、挨拶を」
「……挨拶?」
「ええ。嫌がられない距離で」
俺はそっと、ノクスの首筋に手を伸ばす。
触れた瞬間、黒い毛が思ったより温かくて、少しだけ安心した。
ノクスは動かない。
ただ、また瞬きをした。
「……こいつ、やっぱり説教してる気がする」
「していません。確認です」
「確認って、何を」
「ミナト様が、怖がりすぎていないか」
「馬に距離を試されてる……」
「確認されるのは、悪いことではありません」
テオがノクスを見つめながらぽつりと溢す。
その横顔から感情を読み取ることはできなかったけど、何だか妙に俺の胸に残った。
俺は小さく息を吐いて、ノクスの首筋から手を離す。
「……明日から、頑張る」
「はい」
「旅の途中で、俺が落ち着かなくなったら」
言いかけて、俺は少しだけ声を小さくする。
「……また、こうやってノクス見に来てもいい?」
テオは迷わず頷いた。
「いつでも」
短い返事。なのに、胸が熱い。
ノクスが静かに鼻を鳴らした。
まるで「当然だ」と言っているみたいで、俺は笑った。
「……お前、ほんと賢いな」
「賢い相棒です」
テオがノクスのことを話す時、声が少しだけ優しくなる。
俺は思った。
いつか俺も、そうなりたい。
賢くなくていい。
ただ、テオが安心できる存在に。
その願いが自分でも図々しいって分かって、俺は咳払いで誤魔化した。
「……じゃ、戻ろ。明日早いし」
「ええ。ミナト様」
扉を閉める直前、俺はもう一度だけ振り返る。
ノクスの漆黒が、灯りの端で静かに光っていた。
なんだかそれが、旅の始まりの合図みたいに見えた。




