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◆冬休み編⑤ 宝物庫の安全点検


異世界にも四季があるんだろうか。


遠くの山並みは雪化粧に染まり、窓を開けて外を眺める俺の吐く息はずっと白い。

冬も本番だ。

城の冬は、とても静かで……


「おはよー、ミナトちゃん!潜入しよ!!」


静か……

静かになるのは廊下だけで、俺の周りは年末ほど騒がしくなるらしい。


雪より軽いテンションでリーンが窓の外から、

ひゅうっと飛んでくる。

言葉は軽いのに、内容が物騒だ。


「おはよ、リーンちゃん。

 ……潜入って、どこに?」


窓から入ってくるリーンを迎え入れながら俺は自室を見渡す。

すっかり見慣れてしまった魔帝城で潜入しなきゃいけない場所なんて、もう思い当たらない。


「ふふー。城の宝物庫!!

 今年の贈り箱で危険判定を受けたプレゼントがいっぱい入ってるはず! 見に行こ!?」


「どうあがいても事件になる予感しかしない!」


肩に乗ったリーンが、ぺちぺちと俺の頬を叩く。


「やだなぁ!事件になんてならないよ~、大掃除するだけ!棚卸し!年末点検!全部まじめ!」


リーンがにこにこする。

俺は眉をギュッと寄せた。

この顔の“まじめ”は信用ならない。


「じゃあ、なんでそんな悪い顔してるんだよ?」


「ボクの顔はいつも善良だよ?」


「善良って言うやつほど善良じゃない!」


「でもミナトちゃん、付き合ってくれるんでしょ?」


「……う、ぐ」


リーンが満足そうに、俺の頬に頬擦りしてくる。

魔帝城は常々この小さな妖精に甘いのだが、俺もすっかりその一人になっているようだった。



◇◇◇



宝物庫は普段いかない地下の奥にあった。

重厚な扉が、侵入者を阻む空気を出している。


パタパタと先行して飛んでいたリーンが扉の前で鍵を振って見せた。


「じゃーん。皇女権限!!」


「それ、大丈夫なやつ?」


「見るだけだから大丈夫だって!!」


不安そうな俺を他所に、楽しそうなリーンはブツブツと小さく呟き魔力を通すと扉の鍵を回す。


ギギっと鈍い音がして宝物庫の扉が開いた。


瞬間、辺りを漂う重い空気に思わず息を呑む。

冷気、金属、香木、魔力。

どれも高級なのに、全部“やばい”匂いがする。


そして見渡す限りの

棚、棚、棚。

箱、箱、箱。

眩しいくらいに詰まっていた。


リーンが俺の肩に乗って腕を振り上げる。


「ミナト隊長!本日の第一目標! 面白そうな宝物の安全確認!」


「ほんとに見るだけだからな!?」


「安全確認は、笑って泣いて学ぶもの」


「安全じゃないだろ、それ!!」


それでもファンタジーな世界の宝物とか、気にならないわけじゃない。

俺はそろそろと足を進めると、箱のラベルを確認していく。

最初に目に留まったのは、銀のベルだった。

そのラベルには……


『鳴らした者は、語尾が「ですぅ」になる』


(……)


俺は思った。この語尾。どっかで聞いたことあるやつ。


「……これ、危険か?いや、ある意味危険か」


チリリン


「危険ですぅ」


リーンが即鳴らしていた。


「ちょっ…自分で食らうなよ!?」


「面白さ最優先ですぅ」


「その語尾、ちゃんと戻るの!?」


リーンが焦る俺の手を取ると、スッと何か指にはめる。

ぎょっとした俺が慌てて確認したラベル札には……


『装着者は“優雅な所作”が固定される指輪』


「やめろって!」


「でもミナトちゃん、優雅似合うよ。ほら」


その瞬間、俺の背筋が勝手に伸び、顎が上がり、手首がふわりと持ち上がった。


「うふふ……」


「ミナトちゃん、声まで勝手に上品になった!!」


リーンは床を叩いて笑う。


「皇女って感じ!かわい!」


「かわいくねぇ!外せ!!」


笑い疲れたリーンが俺の指をぽんっと叩くと指輪は外れた。

俺は手をさすりながらじろっと睨む。


「見るだけって言っただろ!?」


「でも使ってみないと、面白くないでしょ?」


悪魔か。


……と油断した、その時。


扉の向こうから落ち着いた声がする。


「ミナト様。宝物庫にいらっしゃいますか?」


声だけで背筋が勝手に真っ直ぐになる。

心臓は、真っ直ぐどころか思い切り飛び跳ねた。


「……テ、テオ?」


いつもの鎧姿じゃなく、軽装の騎士服だ。冬仕様の黒い上着。手袋まで黒い。

テオは入ってくると、目線がまず周囲を確認し、次に俺を見て一瞬だけ柔らかくなる。


「良かった。こちらでしたか。」


リーンが俺の肩で足を組んでニヤニヤと頬杖をつく。


「テオ、いいタイミング」


「リーン。ミナト様を連れ出したのは、お前か……」


「正解。ボクは親友だからね!

 退屈そうなミナトちゃんを放っておけなかったの!」


「俺のせいなの!?」


唐突な濡れ衣に俺がワタワタする横で、テオの視線が棚を一瞥した。


「ここは危険物も多いので触れない方がいいかと……」


「やだなぁ、ボクたちは安全確認してるだけだって!」


得意げな顔のリーンが肩から飛び上がってくるっと回ったと思ったら、近くの箱に飛びつく。


「なんて……さっきまでは、だけどね!!」


「リーン!!」

「リーンちゃん!?」


俺たちが止める間もなく、リーンが“黒い箱”を開ける。

金具の付いた黒い箱。ラベルの札には短く。


『誓約の手枷(呪具)』


箱の中から黒い手枷がふわっと浮き、獲物を見つけたみたいに揺れた。


「ミナト様!!」


ひゅっと音がすると何かがこちらに飛んでくる。

テオが動く気配して、俺は瞬間的に目を瞑った。


「……っ!!」


俺が叫ぶより早く。


がしゃん。


吸い付くみたいに、黒い手枷が俺を庇ったテオの両手首を捕まえた。


「……っ」


テオの呼吸が一度だけ詰まる。

でも姿勢は崩れない。声も落ち着いている。


「ミナト様。下がってください。呪具です」


「テオ!!ご、ごめん……俺!」


慌てる俺の横でリーンが腹を抱えて笑った。


「テオが捕まったーー!」


リーンが笑いながら呪具に魔力を通す。

すると空中に淡い文字が浮かんだ。


『拘束開始:180秒以内に解除せよ』

『未解除の場合、誓約が肉体に固定され、行動制限が増大する』


「ひゃ、百八十秒!?」


続けてリーンがラベル札を覗き込む。


「ほんとだ!三分で解除が必要だって!」


テオが短く息を吐く。喉の奥で“覚悟”が鳴る音がした気がした。


「今のところ私の心身には問題ないようです。

 ……解除を、お願いできますでしょうか。」


リーンが俺の頬をむにっとつまむ。


「ミナトちゃんが解除するしかないね?ミナトちゃんのせいだもんね?」


「う……!」


(いや、これ俺のせい!? でも、庇ってもらったのは事実か!?)


瞬間、手枷がきし、と鳴ったと思うとテオの腕に淡い光の線が走った。

手首、前腕、上腕……そして黒いインナーの下へ。


「ほら早く!テオに誓約紋でてるよ!!早く魔力通しながらなぞって!」


「え!?」


解除って、誓約紋をなぞる必要があるの!?


空中表示が追記される。


『解除紋:上腕、体幹部に展開』


リーンがニヤァっと笑う。


「ミナトちゃん、体幹部ってどこからどこまでだと思う?」


問われた俺は、空中に視線を彷徨わせる。


体幹って体の真ん中だろ?

……首筋、胸筋、腹筋……


「うああああ……マジで?!」


テオの耳がほんのり赤い。

それでも礼節は崩さず、俺の前で静かに膝をついた。

茶色の瞳が、俺を見上げる。


「ミナト様。すみません、解除をお願いできますか。」


「……う、うん」


『残り:160秒』


テオは拘束されたままの手で上衣の留め具を外す。

脱ぐ、じゃない。必要最小限で“開く”。


動作が丁寧すぎて逆にいやらしく見える気がするんだが?!


俺は何となく見ちゃいけない気がして顔を手で覆う。

指の隙間から見えるのはノーカンだ……!


そして現れたのが、


割れてる腹筋。

がっつり割れてる。

腹だけじゃない。脇腹のラインまで締まって、鍛えられた体の説得力がすごい。


俺の喉が鳴った。咳払いで誤魔化す。誤魔化せてない。


リーンが嬉しそうに言う。


「はい、腹筋点検ですぅ」


「語尾戻すな!!」


テオが視線を自分の身体に落とす。


「……ミナト様。解除紋は、へそ付近から下腹部へ続いているようです」


「言うな!!」


「言わねば進みません」


正論が強い。


俺は指を腹に伸ばしかけて止めた。

テオが見てる。めっちゃ視線を感じる。

見られてると無理。


よし。


「テオ」


「はい」


「俺、見られてると解除できない」


テオが固まる。


「……理解しました。視線を遮断します」


「目を閉じるだけじゃ不安!」


リーンが棚から、妙に高級な黒布を引っ張ってきた。


「目隠し布。宝物庫仕様。いいやつ」


「準備が良すぎる!!」


テオの耳が赤いまま、静かに頷く。


「……必要なら」


「必要!!」


俺の即答が速すぎて、自分で恥ずかしくなる。

でも時間がない。


『残り:140秒』


俺は布を持って、テオの前に立つ。

目を閉じたテオの目元にそっと当てた。

指先がこめかみに触れないように、ギリギリ避ける。避けたいのに近い。距離が近い。


テオが息を止めた気配がする。


「……テオ、息して」


「……はい」


短い呼吸。

それだけで俺の心臓が余計にうるさい。やめろ心臓。


結び目を作るために背後へ回る。

後頭部の髪、首筋のライン、体温。

俺は必死で唱えた。


(解除、解除、解除。これから腹筋を…じゃない、誓約紋を触るのは仕事。俺は点検官。点検官)


結び終えると、テオは目隠しのまま、まっすぐ前を向いた。


「視界は塞がりました。見えていません」


リーンが拍手。


「倒錯的な芸術が出来上がった!!」


「ちがう!」


テオが落ち着いた声で付け足す。


「……ただし音は聞こえます。指示があればそのように。」


「わ、わかった…!」


『残り:120秒』


俺はテオの腹に浮かんだ淡い線を見つけた。

へそから少し下、腹筋の段差を横切るように走っている。


指先で、そっとなぞる。


触れた瞬間、硬い。熱い。

筋肉が“生きてる”のが分かる。押し返されるみたいに、皮膚の下の形が変わる。


テオの喉が一度だけ動き、短く息が漏れた。


「……っ」


「い、今……」


「問題ありません」


いーや!問題ある呼吸だった!


リーンが耳元で囁く。


「テオ、我慢強いね。ミナトちゃん、指先だと時間かかるよ。手のひらの方が早い。あと、面白い」


「面白さ混ぜるな!!」


でも、時間がない。

俺は覚悟を決めて、手のひらをそっと当てた。


ぺた。


熱い。硬い。

腹筋の溝が掌にくっきり伝わる。情報量が多すぎる。

“割れてる”って、触るとほんとに段差なんだな……

そのままススっと手を誓約紋に沿って滑らせる。


テオが抑えた吐息を吐いた。


「…っ…は……」


その音が宝物庫の冷気に溶ける。


(ーーーっ!)


ダメだ俺!色っぽいとか思うな。思うな俺。

これは緊急解除作業だ!点検だ。点検。点検官。


リーンが俺の肩越しに乗ったまま実況する。


「おおーっと、ミナトちゃんの手がテオの腹を撫で回しております!順調に解除進行中!」


「実況するな!!」


俺は光の線に沿って、手のひらでゆっくりなぞる。

なぞるほど、光が薄くなる。けれど、紋が“逃げる”みたいに脇腹へ伸びた。


『解除進行:30%』

『残り:95秒』


「は?線が逃げた……!?」


テオが目隠しのまま、低い声で言う。


「……ミナト様。右側、脇腹へ続いているはずです」


「見えてないのに分かるのかよ」


「感覚です」


感覚で言うな、怖い。


俺は脇腹へ手を移す。

腹筋の横、くびれのあたり。そこは段差が細かくて、触る側の手のひらが迷子になる。


「……っ」


俺が触れた瞬間、テオの腹に一瞬だけ力が入った。

筋肉がきゅっと硬くなる。俺の手が跳ねそうになる。


テオが短く息を吸い、抑えるみたいに吐く。


「……っ、失礼……」


「謝るな!俺の心拍が上がる!」


空中表示が煽ってくる。


『心拍:上昇傾向』


「関係ねぇだろ?!表示すんな!!」


リーンが楽しそうに言った。


「ミナトちゃん、解除に集中して。テオは見えてないから」


「見えてないのも、逆に恥ずかしいんだよ!」


「倒錯って素敵」


「そこで言うな!!」


『残り:75秒』


紋は脇腹から、腹の上部へ。

肋骨の下、体幹の中心へ伸びていく。そこに手を伸ばすには、距離がさらに近い。


俺は外套の襟を握りしめてから、手を伸ばした。


手のひらが、腹の上部に触れる。

硬い。熱い。

さっきより“面積”が広いせいで、掌が吸い付くみたいに感じる。感触が逃げない。


テオの喉が鳴った。

息が、短く漏れた。


「……くっ……」


「……っ」


俺の耳が熱い。たぶん顔も熱い。

でも手は止められない。

止めたらそのまま違うとこまで触っちゃいそう。


リーンが囁く。


「ミナトちゃん、今“堪能”してる?」


「堪能してない!解除してる!」


「解除しながら堪能。二刀流」


「やめろ、効率化してない!俺はまじめなの!」


決して邪なことは考えてない!

……目が見えないまま拘束されて跪くテオに

“ちょっとだけ支配欲でちゃうなー”とか感じてない!

そう、俺は全然感じてなんかいないんだからな!?


忙しい思考を読み取ったかのように

突然、空中に新しい文字が出た。


『乱暴な接触を確認。解除効率低下』


「乱暴な接触って何!?」


リーンが空中の文字を見ながら顎に手を当てる。


「雑に触るとダメってことかな。つまり、丁寧に撫でろってことだと思うよ!」


「言い方が完全にアウト!!」


テオが目隠しのまま、真面目に言う。


「……丁寧に、お願いします」


「本人が言うな!!」


だが、条件が出た以上、丁寧にやるしかない。

俺は掌の圧を弱め、線の上を“なぞる”というより優しく撫でるみたいに動かす。


すると光が、すうっと薄くなった。


『解除進行:60%』

『残り:52秒』


「……進んだ」


リーンが満足げに頷く。


「ね。丁寧は正義」


「正義の方向が間違ってる!」


紋は最後、腹の中心から“下”へ逃げようとした。

下腹部。そこは距離が危険。精神的に危険。


俺は必死に言い聞かせる。


(これは解除。解除。点検。点検官。俺は点検官)


そして、掌を移す。


ぺた。


下腹部の筋肉は、上より少し柔らかい。

柔らかいというより、“動く余地”がある。呼吸で微妙に上下する。


テオが息を止める。

そのあと、ゆっくり吐いた。


「……」


声にならない吐息。

俺の心臓がまた跳ねる。


空中表示がまた余計なことを言う。


『心拍:上昇傾向』


「だから表示すんな!!」


リーンが言う。


「ミナトちゃん、落ち着いて。テオは目隠ししてる。見てない。見てない」


「見てないのに近い!!」


テオが低い声で言った。


「……ミナト様。無理はなさらず」


「無理じゃない。……間に合わせる」


『残り:28秒』


最後の線を、丁寧に、すうっとなぞる。

すると光が、ひと息に薄くなった。


『解除進行:90%』


手枷がきし、と音を立てる。

テオの腕がわずかに震える。痛みではなく、呪いがほどける圧のせいだろう。


テオが抑えた息を吐いた。


「……っ、はぁ……」


リーンが俺の耳元に顔を寄せると小声で喜ぶ。


「いい音だね?」


「俺に同意を求めるな!」


『残り:12秒』


俺は最後の“結び目”みたいな部分を見つけた。

へそ脇の小さな光の核。そこをなぞれば終わる。


「……行くぞ」


「はい」


目隠しのテオが返事をする。

返事だけで心拍が跳ねるの、ほんとやめたい。


俺は指先を使って、その核をすうっと撫でた。


かちん。


手枷が静かに緩み、床に落ちた。


『解除完了』


俺は反射的に手を引っ込めた。

掌がまだ熱い。指先がまだ硬さを覚えている。

やめろ、記憶に残るな。


テオは目隠しのまま、頭を下げる。


「……ミナト様。お手数をおかけしました」


「い、いや……間に合ってよかった……」


リーンが両手を叩いた。


「ミナトちゃん!

 (テオのこと弄くり回せて)良かったね!!」


「“カッコ”の中、聞こえてるからな?!」


喚く俺を見上げたままのテオが落ち着いた声で言う。


「……ミナト様。もう外してもよろしいでしょうか」


「外す……」


俺は布の結び目に指をかけた。

ほどく指先が、なぜか震える。自分でびっくりする。


ほどけた瞬間、布がすとんと落ちる。

テオの視線が、ゆっくり俺に戻る。


目が合った瞬間。

俺は息を忘れた。


さっき触ってしまったせいで、距離の測り方が壊れてる。


テオが咳払いを一つ。

視線を逸らして、低い声で言った。


「……見ていない方が、かえって難しいですね」


「なにが!!」


「……失言です」


失言で終わるな!!

俺の心の整理が追いつかない!!


リーンが俺の頬をつんつんしてくる。


「ミナトちゃん、顔、真っ赤」


「赤くない!」


「赤いよ。腹筋点検の成果だね!」


「成果って言うな!」


テオが手枷を箱へ戻し、金具をきっちり閉める。

仕事が丁寧すぎて腹立つ。

腹…。いや腹筋には腹立たない。マジですごかった。

ほう、と目を瞑る。


そんな俺に気づかないテオが上衣を直しながら

リーンを鋭い目つきで睨む。


「リーン。宝物庫で呪具を開けるのはやめてください」


「えー見間違いじゃないかなー?」


リーンが満足げに頷いて、俺の肩に戻った。


「ね、ミナトちゃん。次はどこ点検する?」


「次の点検の予定はない!!」


「でもミナトちゃん、テオって肩甲骨もすごいんだよー?」


「……そ、そうなの?」


「……ミナト様」


思わずジッと見てしまった俺にテオが呆れた視線を返す。

俺は慌ててブンブンと首を横に振って否定する。

これじゃ本当に変態だ!


リーンがくすくす笑う。


宝物庫の扉を閉めると、冷気が少しだけ遠のいた。

なのに、俺の掌の熱だけが、しつこく残っている。


冬の冷たさが心地いいくらいだった。






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