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流星の魔女〜魔女見習いは魔都を飛ぶ〜  作者: ごこち 一
番外編「アイヴィ、ギルドに加入する」

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4.5-3 アイヴィ、討伐隊に参加する~まずは自己紹介を~


 心配そうなトルシオン卿や別れを惜しむ使用人の皆に見送られ、アイヴィは特区内の仮住まいを後にした。


 せっせと引っ越しを済ませ、その日の内にギルド員達へ顔を合わせたアイヴィ。

 新人にとって顔見せは、とてもとても大事なことである。


 その中でも魔物狩りを行う面々と語らい、夕食を共にしたアイヴィ。その時に出たシチューに顔を綻ばせていたことは、語るまでもないだろう。

 そのまま酒飲みの宴会に巻き込まれそうになり、ヨハンナに助けられたこともまた、語るまでもないだろう。


 そして次の日。


 ララの忠告通りに早起きしたアイヴィは、早速仕事を探そうと一階掲示板を確認しに来ていた。


 次々と魔物狩りとは関係のない依頼票が()がされていく中、アイヴィは自分が受けられる依頼を探す。

 想像より多くの魔物狩りの依頼票が張られており、アイヴィと掲示板との睨めっこが始まってしまう。


 アイヴィが『どれが良いかな?』と贅沢な悩みを抱いていると、ふと、同じギルド員である年齢三十後半の渋い男性マイトに声を掛けられ、あれよあれよという間に、とある魔物討伐作戦に参加する事になった。


 作戦会議の為に大会議室へ――行かず、朝食がてら食堂の端に(つど)う魔物討伐作戦に参加するメンバー達。


 玉子サンドとカップスープを前に顔を(ほころ)ばせる、アイヴィ。

 ()(どり)(しょく)す、四角い顔をした筋骨隆々な男、ダグ。

 頬に傷持つ(いか)つい顔に反し、所作正しくトーストとシチューを味わう男、ビルザー。


 開いているか分からぬ糸目でサラダを見ているであろう男、モノス。

 サッパリとした容姿と違い、朝っぱらからガツガツと牛ステーキに噛みつく双子の男、ロックとサンド。

 アイヴィと同じ物を食べる、引き締まった筋肉の美しい茶の髪を編んだ女性、ミィミン。


 そして、渋い顔のまま特製ポークサンドを(かじ)る男、マイト。

 計八人が卓を挟み、顔を合わせていた。


 十七のアイヴィと三十後半のマイト以外の六人は、皆二十前半に見える若者であり、当然マイトがリーダー的存在である事が分かる。

 この中でアイヴィが昨日会っていないのは、同じ女性であるミィミンだけだ。


 隣に座るミィミンへ視線を向けたアイヴィは、既にアイヴィを見ていたミィミンの勝気な笑みに待ち伏せされていた。

 玉子サンドを咀嚼(そしゃく)しながら会釈(えしゃく)することしか出来ないアイヴィの肩を、笑うミィミンが優しく叩く。


 アイヴィが気恥ずかしさを感じる中、双子の兄ロックがフォークを揺らしながらマイトへ口を開いた。


「おやっさん。俺らアイヴィちゃんが心配で来てみたけどさ……こんだけいるし、もしかして、俺ら要らなくね?」

「ハハハ。そんな訳あるかよロック。俺達はいつだって引っ張りだこ――」

「要らんな」


 口を開けたまま固まったサンドに対し、ロックは『だよなぁ』と言わんばかりに付け合わせの野菜を突っつき始めている。

 固まったサンドへ説明する(よう)に、マイトが渋みの効いた低い声で話を続けた。


「サンド。アイヴィは王都でも活動していた立派な狩人だ。王都の狩人ギルドに居るカノッサからも『魔法の銃を使いこなす有望な狩人だ』と聞いている。新たに入った仲間とはいえ、俺達が世話をする必要はない」


 マイトの言葉に、ミィミンらから「へぇ」と関心の声が上がる。

 こういう時は卑下(ひげ)するべきではないと、毅然(きぜん)と食事を続けるアイヴィ……だがその内心は、視線の矢に突き刺され狼狽(うろた)えてしまっていた。


 アイヴィが『何か言った方がいいのだろうか?』と悩む中、復活したサンドの(つぶや)きが、先んじて卓の上に広がった。


「魔法の銃か……あれ、使うの難しいんだよなぁ」

「あー。サンドも昔使おうとしてた時あったよな……目の前のゴブリンにすら当たんなかったけどな。アハハハハ」

「おいロック。お前も同じだっただろ」

「……そういやそうだった……」


 双子は不毛な話を同時に吐いた溜息で終わらせ、同時に肉に喰らい付いた。

 周りの者達は、いつもの事と言わんばかりにスルーし、食事を続けている。双子のじゃれ合いが終わったのを見計らい、マイトが話を戻す。


「遠距離攻撃に()けている者の参加は非常に有難(ありがた)い。今回参加を打診したのも、君を一人の狩人として誘ったまでだ。期待しているぞ」

「はい。任せて下さい」


 自信(あふ)れる言葉と違い、アイヴィの声は緊張からか少々かすれ気味であった。

 だが、その声を(あざけ)る者はおらず、穏やかな微笑(びしょう)と共に彼らは(うなず)く。


 それは、自分自身が今より若かった頃を思い出しての事か?

 もしくは、演技や処世術か? はたまた性根からの優しさか?

 それは本人達にしかわからない。


 少なくともアイヴィは、彼らから不快さを感じる事はなかった。


「さてと、アイヴィの得意も分かったんだ。今度は俺達の番だな。昨日は名前を言ったぐらいだったからな。もう一度紹介のやり直しだ」


 そう言ってビルザーは、隣に座る巨漢をフォークで指し示した。


「そこにいるデカい筋肉がダグ。まぁ見たままだが、こいつ身体強化魔法だけは不思議と得意でな。主に前衛を務める頼れる男だぜ」

「うむ。この広背筋が(みな)(ほこ)となり、この腹直筋が皆の盾となろう」


 ダグは椅子に座ったままポージングを取り、服の下に隠した己の筋肉を見せつけ始めた。

 ビルザーは迷惑そうにしながらも苦情は言わず、哀愁(あいしゅう)漂う顔でわざとらしく肩を(すく)めている。


「まっ、こういう奴だ。気にするな」

「は、はい」

「で、俺はビルザー。一応剣も弓も魔法も使えるが、どれも中途半端でな。立ち位置はその時その時だな。まっ、あんま当てにするなよ」

「いえ。よろしくお願いします」


 座ったままペコリと頭を下げるアイヴィに、ビルザーは気怠(けだる)そうに溜息をつき、軽く左手を振り半端な返事をした。


「俺とダグは荒事なら何でもござれだから、これからも(たま)に一緒に仕事するかもしれないな。次は、一人だけおっさんのマイトさん。武芸百般。武器なら特大剣から針まで使いこなす怖いおっさんだ。このギルドはランク制じゃないから上も下もないが、このギルドでは一目置かれてる実働部隊のリーダー的存在だ。肩揉んどいて損はないぞ」


 ビルザーの冗談を、マイトは鼻で笑う。


「必要ない。ただ歳の所為(せい)でリーダーを押し付けられる事が多いだけだ。だが、戦闘中は可能な限り指示に従って欲しい」

「はい」


 アイヴィの小気味よい返事に合わせ、ビルザーがアイヴィの隣をフォークで指し示した。

 当然、そこに座っているのは引き締まった筋肉の美しい女性ミィミンだ。


「で、そこのマッチョな御令嬢がミィミン。大斧ぶんぶん振り回すから戦う時は近づくなよ」

「一応火の魔法も使えるよ。まっ、オマケみたいなもんだけどさ」


「オマケでも(うらや)ましいです」

「あぁ、あんた……まっ気にする事ないさ」


 優しく肩を叩くミィミンであるが、アイヴィからすれば慣れっこなものである。

 特に気にするようでもないアイヴィへ、糸目の男モノスが落ち着いた声で話しかけた。


「ええ、ええ、それでよい。魔法が使えぬからと悲しむ必要はないのです。多くの者に魔法の才が有ろうとも、それを卓越まで辿り着かせることの出来る者は数少ない。この場八人の中でも、魔法使いと言えるのは私ぐらいなものですよ」


「てな訳で、そこのどこ見てるか分からない糸目男がモノス。貴重な魔法使いだ。その分、体は強くないから、アイヴィも守ってやってくれ」

「分かりました」

「助かります。風の魔法を得意としておりますので、援護はお任せ下さい」


 (うやうや)しく頭を下げるモノスへ、釣られて頭を下げるアイヴィ。

 そんなアイヴィを、興味深そうに四つ二組の瞳が見つめていた。


「色んな人がギルドに来るけど、アイヴィちゃんって、ちょっと変わってるよな」

「おいロック。変わってるは失礼だろ。特別感があるって言え、特別感」


「で、今回参加しない、ただただ肉を食ってるだけのこいつらがロックとサンド。偵察から情報収集、物資調達までやる、どっちかと言えば裏方だな。大人数で動くときは役に立つ奴らだ。戦いの腕はそれなりだな」


 紹介されたロックとサンドは、白い歯をキラリと輝かせ、そのサッパリした顔を(さわ)やかに(きら)めかせた。

 そして双子は、ハキハキと声を重ねる。


「「消えたペットから()(もの)()(もの)。果ては難事件の犯人まで。探し物なら我らフューリー兄弟まで、どうぞご用命を」」

「ちなみに女癖悪いから、気を付けろよアイヴィ」

「大丈夫です。趣味じゃないので」


 ビルザーの忠告に、アイヴィはつい本音を口にしてしまう。

 しまったと思った時には既に、双子の爽やかな顔はピシっと凍り付いてしまっていた。

 アイヴィの肩を叩きながら、ミィミンがゲラゲラと笑っている。

 

「い、意外とバッサリ言うタイプか……嫌いじゃないな」

「まぁ、そういうの抜きに仲良くしよって事で」

「は、はい、ロックさん。サンドさん」


 こういう時は謝るべきか? 笑って流すべきか?

 それ程、人付き合いの上手(うま)くないアイヴィは、苦笑いを浮かべて流す選択肢しか選べなかった。

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